いまひとつ釈然としないカイン。
しかし、伝説の勇者を探すため、
母マーサを救うため、
カインの旅は続く。
ラインハットの悪政は、一応回復したわけで、
ビスタ港より、連絡船が出航されることとなったので、
その船に乗り、西へと旅立つカイン。
と、ブラウンとピエールとスラりんとパトリシア。
「ヨイショヨイショ。」
「うりゃそりゃ。」
「ピキー。」
「ヒヒーン。」
「・・・・」
今、カイン一行は会話が乏しかった。
思えば、こんな寂しい旅をしたことがなかったカイン。
過去の旅は、
ビアンカが、ベラが、パパスが、ヘンリーが、
何かと助言をくれたり、
話し相手になってくれたりしたものだった。
だから、今になって、
急に寂しい思いをしてしまうカインであった。
さて、カインが寂しいことを考えているうちに、
船は港町ポートセルミに到着した。
町の酒場で、隣の田舎村カボチから助けを求めに来た、
農夫と出会う。
なんでも、魔物が畑を荒らすもので、
作物がとれずに、村民は飢え死に寸前だというではないか。
カインは、人助けの精神から、
カボチ村を救うことを決意する。
そう、これは人助けの精神からそう決意したのであって、
決して報酬金目当てではなかった。
結果的に報酬金はきちんと頂いたけど。
ゲレゲレは飢えていた。
だから、近くの農村の畑の作物を食べることで、
飢えを凌いでいた。
カインと生き別れてから10年。
ゲレゲレも成長し、立派なキラーパンサーになっていた。
なぜか草食になってしまっていたが。
あの日、カインと生き別れた日から、
ゲレゲレは行くあてもなく、
あちらこちらと移り住み、
やがて、カボチ村の西の洞窟へとたどり着いた。
ゲレゲレは、来る日も来る日も、
主がやってくるのを待ち続けた。
ゲレゲレは、日々、
パパスが残した一振りの剣を守りながら、
主カインと再会できる日をひたすらに待った。
そんなゲレゲレのもとに、カインがやって来たのは、
もはや神の導きと言うほかなかった。
ゲレゲレが飢えを凌ぐために、作物を食べるのを
カボチ村の村民が、被害を訴えてポートセルミまで出向して、
そのタイミングでカインが、
海を越えてこの地に降り立ったのだから。
この奇跡とも言えるタイミングのおかげで、
ゲレゲレは、再び主と見えることができた。
ただし、それは、
魔物退治をするという名目でやって来たカインであったが。
ゲレゲレは、はじめ、カインのことがわからなかった。
カインが成長しすぎていたので。
カインも、ゲレゲレのことがわからなかった。
大きくなっていたので。
しかし、ゲレゲレは、
幼かった主の面影をカインに見出そうとする。
カインは戸惑った。
退治しようとやってきた魔物が、
自分に危害を加えるでもなく、
ただ、何かをずっと思い出そうとしている様子だったので。
その様子で、カインも気づく。
このキラーパンサーはゲレゲレかもしれないと。
カインとゲレゲレ、
互いに互いを探り合う中で、
カインもゲレゲレも、妙案を思いついた。
カインは、ビアンカのリボンをゲレゲレに見せた。
ゲレゲレは、パパスの剣をカインに見せた。
そしてカインもゲレゲレも、互いを確信して認識し、
再び手を取り合うのだった。
10年という年月を経て、
カインは、もうゲレゲレとは再会できないだろうと思っていた。
だから、この再会があまりに嬉しくて、
カインは泣いていた。
ゲレゲレも鳴いていた。
カインは、パパスの剣を手にする。
初めて握ったその剣は、
カインの手にすっとなじんだ。
父さんの剣。
あの日、あのとき、
ゲレゲレはこの剣をしっかりと掴んで、
遺跡から運び出してくれていたのか。
カインは、なんとも感慨深い気持ちになった。
そして、ゲレゲレの頭を撫でた。
ゲレゲレも嬉しそうにカインの顔を舐めた。
こうして、ゲレゲレを連れたカインは、
カボチ村へと戻った。
カインは、
カボチ村の住民に謝らなければならないと思っていた。
畑を荒らしていたキラーパンサーは、
実は僕の仲間だったんです、と。
しかし、カボチの村民は、
そんな謝罪を受け付けなかった。
「はっ!傑作だべ!おめえさ、魔物とグルだったんだべな!」
「残りの報酬は渡すで、とっとと帰ってけろ!」
村民は吐き捨てるように言い、
カインは後味の悪い形で、村を後にするのだった。
ただ、カインはカボチ村に感謝していた。
こうして再びゲレゲレと巡り会えたのは、
紛れもなくカボチ村の人たちのおかげ。
そんなカボチの村民たちに、
感謝の気持ちが伝えられなかったことだけが、
カインには心残りだった。
こうして、少し苦い経験とともに、
ポートセルミに戻ってきたカイン。
こんな気分の時には、酒を飲むのもいいだろう。
そう思って酒場に行くと、
思いも寄らず、
伝説の勇者に会ったことがあるという、
老人の話を聞くことができた。
「10年くらい前のことじゃ。その男は天空の剣を持ち、その他の天空の武具を探しておった。あの男こそ伝説の勇者じゃ。名前も思い出したぞ。パパスじゃ。パパス!」
どーーん!
話の途中から、もしかしたらと思っていたけど、
こんなことだろうと思っていたよ。
いいよいいよ。
別にご老人に落ち度はない。
カインは、酔いもそこそこに、
酒場を後にするのだった。
カイン:レベル16、プレイ時間6時間40分
パーティー:カイン、ブラウン、スラりん、ピエール、ゲレゲレ
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