この導かれし者たちをどうするかというと、
やはり、神父さんに寄付金を払って蘇生させてもらうしかない。
しかし、それには、
カインにとって大きなハードルがあった。
手持ちのお金では寄付金を払えないため、
銀行の預金を下ろさないといけない。
この世界唯一の銀行は、
大国エンドールにあった。
そして、その銀行を経営しているのはネネである。
カインは、夫の棺桶を見てネネが取り乱すといけないので、
気づかせまいと気を使い、
7つの棺桶を馬車にしまい、
一人で銀行に行った。
ネネは、カインの顔を覚えていないらしく、
「夫が魔物に狙われているので、誰か強い人と一緒にいてくれればいいんだけど・・・」
という話をしている。
魔物に狙われるどころか、
よもや棺桶になっているという話をできるはずもないカインは、
預金を下ろして、早々に銀行を立ち去り、
さらに、ネネに悟られないように、
念を入れて、
エンドールではなく、サランに戻って仲間の蘇生を行った。
ここで、
しばらくぶりに話をするカインとマーニャとミネア。
お互いの、情報を交換しながら、
バルザックは、進化の秘法でデスピサロと繋がっていて、
無関係と思っていたカインもライアンも、
それなりに因縁があることがわかった。
しかし、返り討ちにされたといっても、
いろいろと得ることはあった。
バルザックの居場所を突き止めることができたこと。
魔物の巣窟となってはいるものの、
サントハイム城の状況が掴めたこと。
バルザックは進化の秘法でデスピサロと繋がっていて、
しかも、バルザックは、
自分の方がデスピサロよりも強いと思っていること。
カインは、少し考えてみた。
バルザックは一介の錬金術師だったと聞く。
それが進化の秘法で、
ここまでの力を手に入れたのだから、
もしも、デスピサロが、
進化の秘法を使うようなことがあったら、
それは、恐ろしいことになる。
そう、カインは直感的に思った。
そして、早くそれを食い止めたいという思いと同時に、
まずは、バルザックを倒して、
デスピサロに近づく必要がある、と思うに至っていた。
とはいうものの、
まだ興奮状態にある、
アリーナ、マーニャ、ミネア、クリフト。
体勢を立て直す意味でも、
この国の統治状況を知るためにも、
カインは、
アリーナにサントハイム領の案内を頼むのだった。
さて、サントハイムの案内となると、
クリフトとブライが俄然やる気を出した。
まず、案内すべきは、サランの町。
アリーナは、サラン武器防具連盟の立て看板を見て、
当初の気持ちを思い出していた。
「ちょっと待て! そんな装備じゃ 危ないぞ!」
そんな看板を見て、
「懐かしいわね。」
と呟くアリーナ。
クリフトも懐かしく思っていたが、
それは、立て札自体のことではなく、
川柳心だった。
そして、こう口にした。
「バルザック サントハイムの 憎き敵」
それを聞いたブライは、
ここぞとばかりに不満をぶちまけた。
「憎き敵 戦うときに 馬車の中」
そう言いながら、カインをちらりと見た。
どうやらブライは、
アリーナやクリフトと一緒に戦えなかったことが、
心残りであるようだった。
そんなアリーナは、サントハイムは魔の手に落ちたのに、
サランは無事であることを不思議に思っていた。
「サランには 魔物の気配 ないみたい」
こんなやりとりについていけないカイン。
口を出せないでいるカインに、
クリフトが声をかける。
「カイン殿 一句お願い いたします」
「『はい』『いいえ』 それしか僕は 言えないの」
「カイン殿 見事な一句で ございます」
「話すって 意外と気分 良いんだね」
「これからは 何か話して くださいよ」
「設定上 そんなに話 できないよ」
やはり、ぶつぶつと呟き続ける一行が、
よもや勇者様ご一行、サントハイム姫ご一行とは、
サランの住民は、誰も気がつかなかった。
さてさて、サランをちょっと案内しただけなのに、
クリフトとブライは、一満足したらしく、
馬車で休憩しようとした。
また、アリーナが望んだこともあって、
パーティーを入れ替えた。
出てきたのは、モンバーバラの姉妹。
アリーナは、同世代で、同じ女性の2人と、
一緒に旅をするのを好んでいた。
このサントハイム領は、
私が、カインとマーニャとミネアを案内するんだから。
そんな気持ちのアリーナだった。
サランの町の次はテンペの村。
以前、サントハイム王が裏で手を回して、
アリーナにとって簡単な試練を準備したのではないかと、
クリフトが勘ぐった、山間の村である。
クリフトの考えが正しかったのかどうか。
それは、
ミネアの占いによって、否定されることとなった。
この村の亡くなった人たちは成仏している、
それが占い師ミネアの直感だった。
この村は、今や平和になっていた。
そして、その平和を取り戻してくれたアリーナに、
村人は、みな、感謝するのだった。
ちなみに、
当初、魔物の生け贄になりつつあった、
ニーナという若い女性は、
今や、結婚して妊娠していた。
それを見たマーニャが、いつものようにこう発言した。
「結婚するなら、最低限、お金と顔は外せないわ。」と。
お金だけで、
ヒルタン老人との結婚を考えていたことなど、
マーニャの記憶の中には、もはや片隅にも残っていなかった。
次の町はフレノール。
ここはかつて、アリーナが誘拐事件を解決した場所。
そして、大切な黄金の腕輪を失った場所でもある。
事情を知ってしまったカインに、
アリーナは弁明する。
あのときは、人命優先で、しょうがなかった、と。
この際、
贋作を手配し損ねたり、
取引の瞬間に捕らえるつもりがそうできなかったことは、
カインには黙っておくアリーナだった。
この町には、マーニャとミネアにゆかりのある者が、
大けがをして流れ着いていた。
オーリンである。
オーリンは、命を懸けて姉妹の逃走を手伝った後、
大義を果たした、と、安心して倒れ込んだ。
そこに、キングレオ城から逃げ出してきた進化の秘法実験台の娘。
彼女もまた、
キングレオ兵士に取り押さえられるところであった。
オーリンは、最後の力を振り絞り、
彼女を助け、キングレオ城から堕ち延びた。
そんな彼女は、恩人オーリンを慕い、
今や、怪我で動けないオーリンを
フレノールでずっと看病する日々を送っていた。
マーニャもミネアも、
オーリンが死んでしまったとばかり思っていた。
だから、オーリンが生きているだけで、
涙がこぼれるほど嬉しかった。
オーリンは重要な情報をくれた。
バルザックは、デスピサロの保護を受けている。
そして、臣下の者を進化の秘法で強化している、
というのである。
カインは、バルザックからこの話を聞いていたので、
すでに知っている話であったし、
「臣下の進化」っていうくだりで、
笑いそうになってしまったのだが、
神妙な雰囲気だったので、
その笑いは自分だけの中で押し込めるのだった。
一瞬意味の分からなかった、パノンの「おはなし!」よりも、
カインの中ではおもしろかった、瞬間的には。
一行が次に行ったのはカインズホーム。
カインの名前が冠されているが、
カインがこの町に来たのは初めてである。
この町は、すれ違いによって大きくなる町、
であるらしい。
ニーチェという哲学者らしい神父が、すれ違い大使を務めていた。
彼は、一応大使であるものの、
どうやら、仕事をするつもりがあまりないようで、
アリーナが初めて訪れたときから、
町はちっとも発展していなかった。
そして、
今後もニーチェが働くことはなさそうに思うカインとアリーナ。
このカインズホームを大きくするのは、
自分で、町の紹介をするしかないと思うカインであった。
と、一通りサントハイム領を案内し終えたアリーナ。
カインは、
アリーナが、すでに冷静さを取り戻し、
この国の王を名乗っている、不届きなバルザックと、
再戦する覚悟ができていることを悟った。
マーニャとミネアについても、同様であることが見て取れた。
それを確認したカインは、自ら馬車に引っ込み、
クリフトと交代し、
バルザック討伐を因縁のある4人に託すのだった。
カイン:レベル18、プレイ時間:15時間36分
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