少し前になるが、僕の敬愛するハードボイルドミステリーの名手
原 尞が5月に76歳で亡くなったことを知った。
原 尞は、1988年に私立探偵・沢崎が登場するハードボイルド
長編 『そして夜は甦る』 でミステリー界に颯爽とデビュー。
89年の第2作 『私が殺した少女』 で直木賞。 長編第3作
『さらば長き眠り』 が95年、第4作 『愚か者死すべし』
が04年、 そして長編第5作 『それまでの明日』 を読むには、
実に14年待たねばならなかった。
90年に連作集 『天使たちの探偵』 が上梓されているが、
長編に限っていえば、30年間に5作品という超寡作。
原 尞を偲んで、という訳でもないが、
読み返してみたくなった(何回目だろう?)。
長編第5作 『それまでの明日』
私立探偵・沢崎は、原 尞が大好きなレイモンド・チャンドラー
が生み出したフィリップ・マーロウに対するオマージュ!
たばこは両切のピース、車はポンコツの日産ブルーバード、
西新宿のはずれのうらぶれた通りにある老朽化ビル2階の
探偵事務所、看板は嘗ての相棒の名前のままの<渡辺探偵
事務所>、 美術や映画、ジャズが好きで、大竹秀雄の囲碁の
本を愛読する・・・・・ずっと変わらない。
そして、チャンドラーを彷彿とさせる比喩表現が楽しい。
『ハヤカワミステリマガジン9月号』 によると、6作目の
長編 『それからの昨日』 の冒頭3章が19年末までに書き
上げられていたが、そこで筆が止まったらしい。
書き継いで完成させてくれる作家はいないのかなぁ? |