一秒前の予知能力
最近まで忘れていたけど、昔から自分にも予知能力らしいものがあるんじゃないか、
そう、思っていた。
何が起きるのかははっきり判らないんだけど、「あ、何か起きる」・・・というか
「・・・・!」と、言葉にならないけど、事故が起きる!とか、あの窓割れる!、とか。
そんな危機を予知する感じである。
ただ。
余りにも「すぐこの後」の予知なのだ。
何せ、頭の中で言葉にまとまる前にそれは起きてしまう。
自分の方に飛んできたら かろうじて避けられる位の時間しか、ない。
全く、何の役にも立ちそうにない。
何でこんなこと思い出したんだろ?

初恋
子供の小学校に用事があって行った。
校庭にこだまが返る位校庭に木霊(こだま)が返る位の怖い声で
男の子が熱血先生に叱られていた。
割と若い男の先生で子供たちにも人気の先生。
でも、その声は本当に怖いと感じた。
ここが小学校だから、なんだろうか。
大人の私が自分よりずっと年下の先生に
怖いと感じるなんて。
何をしでかすか判らない、怖い人、というんじゃなくて。
子供の頃、きつくきつく叱られて、身がすくんだ記憶。
そういう怖さ。子供が大人に感じる、あの絶対的な怖さ。
それが引き金になって、思い出した感情がある。
思い出した、記憶ではなくて、感情-。
-あの子が、見ている。
きつく叱られて、すくみあがっている、惨めな自分を、
あの子が見ている。
どうしようもないみすぼらしい自分を
みんなが見ている。
先生が何か怒鳴ったり、
一瞬何が起きたか判らないうちに頬が熱くなり、
ビンタされたことのショックよりも
さらし者にされている、という「痺れ」に
私は支配されていた。
いつ頃から、沢山の同級生の中から
あの子だけをすぐ見分けられるようになったのか
よく覚えていない。
でも、多分、目があった時に、あの子が
ニコリと笑った、多分そんなことだったと思う。
あの子がこちらを見て、友達と笑った。
見た、と思ったのは私の一人合点かも知れない。
でも、あの子がこちらを向いて笑うたびに
空気が読めない、今の時代ならそう言われるだろう私の
嗤われているのではないかという疑惑と、
それでもその笑顔を可愛いと感じる自分。
笑顔が時に残酷であることを、幼い自分は
こわばって耐える以外に何の術も持っては
いなかった。
もしあの子と話をする機会があったなら
私はあの子の笑いが残酷なものなのか
それとも全く私の思い違いだったのか
推し量ろうとしただろう。
愛らしいチェシャ猫のように、
私の遠い記憶の中で、あの子の顔は
ぼんやりとして消えかかり、
あの子の笑みだけが忘れることが出来ずに
今も心の底に眠る。
他の多くの人と同様に、私の恋も
その多くは痛みとともに記憶の棚に
収められている。
初恋はカルピスの味がする、という
フレーズを昔々よく聞いた。
私には、未だに、多分、あの痛みが
初恋、といえば そうだったのでは
ないだろうか、としか言えない。
ああ、そうだ、少し思い出した。
友達と楽しそうに談笑する
あの子のうなじが放つ不思議な
感じ・・・
あの子とすれ違ったときに
かすかに肘に触れた かすかな衣擦れ
確かにどこかで嗅いだ記憶がある
甘い匂い・・・
なまめかしい、とでも言うのだろうか。
私は生まれて初めて
異性、という生々しい
自分とは異なるものを感じて
自分の心音を聴いた。
あの、熱血先生に叱られている子は
私ではないだろうか。
先生の顔を見ることが出来ずに
うつむいて手を握り締めている。
ふと視線をあげて
笑っている女の子がいないかと
探してみたが
もう、あそこにいる叱られている彼、
ではなくなった私の視界には
彼と先生以外に記憶に残りそうな顔は
見当たらなかった。
カルピスの味なんかしないや
僕は踵を返して、学校を後にした。
ちゃんとした、甘い恋、って
どんな感情だったっけ。
あ、クリーニング出すの忘れてた。
セールス電話の怖さ。 それが商売の人々。
・・・前回の続き・・・
メーカーの担当者の尽力で、普通ならパーにされて泣き寝入りすることが多い
ハードディスクの故障事件も、一つもデータが壊れることなく、製品も問題が
解決されたマイナーチェンジ版に交換してもらえた。
やはり、中身ハードディスクの一台を取り出してリーナックスマシンに繋いだら
単純に読むことができた。
急いでUSBの外付けハードディスクを送り、そちらに
全部コピーしてもらい、現在ではきちんと外部からもインターネット経由で
繋がるようになった。 感謝。
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データサルベージ屋
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で。
それは解決したので良かったのだが。
最悪の場合を考えて、データのサルベージ屋に金額を聞こうと思って
ネットでいくつか検索し、ホームページが凄く良くできていて強烈な会社に
電話をかけてみたのだ。
まじめな話、結構ギョッとした。のである。
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直ぐに持ってきてください!!!
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見積もり、というか大体いくら位なのかを聞こうとしただけなのに、
今すぐ持って来い、すぐに契約して直さなきゃ!と畳み掛けてくるのだ。
「いくら位かかるんですか?」
「おっしゃる内容だと、かなり状態が良くありません。
少なくとも45万円から60万円だと思ってください。」
「え?御社のホームページには7万円から、って書いてありますよ」
「それは、個人の普通のハードディスクで症状が軽い場合です。
あなたの場合はRAIDという複雑なハードディスクで色々と
してはならないことをなさっています。 それなりの金額がかかるのは
当然です。」
「しちゃいけないことって何ですか?メーカーのサポートの指示に従った
だけですよ」
「難しい説明になるので省きますが、リセットボタンを押したから
データが全て消えかかっている可能性があるんですよ!」
「そんな馬鹿な。 数ギガバイトがボタン一つで消滅なんか
しないでしょう」
「何故判らないのにそう言い切れるんですか。 会社に与える損害の
責任もありますでしょう? とにかく、急がないと全てダメになって
しまいます!」
「45万なんて聞かされて、はい、直ぐに持って行きます、とは
言えませんよ。」
「とにかく、ものを見てみないと判りません。直ぐに送って下さい!
その前に、お名前は?法人ですか個人ですか?住所と電話番号を
教えてください。 我々があなたを助けることが出来るんです!
どうしようかなどと考えている場合じゃありません!」
のけぞりながらも、聞かれたことに答えていくと、またもや
「直ぐに送っていただけますか? 弊社は御社から近いので
持参していただければそれだけ早く直せます。 今日は来れますか?」
「いや、まだメーカーの修理センターに送ったから手元にないんです」
「そんな悠長なことをしていたら大変ですよ! 彼らはデータの保証は
一切しません。 全てパーにされて法的にも守られませんよ!」
「ええ?でも、作ったメーカーですよ。まずは修理センターに送るのは
当然でしょう?」
「素人、いや失礼、一般の方は知識なしに単純にメーカーを信じます。
我々のような専門の技術者集団に比べてメーカーの修理センターなんて
大した技術はないんですよ。 空っぽの新品に交換されて終わりです。
直ぐに取り戻してウチに持ってきてください!」
「いや、出して一週間以上経つから、後4,5日すれば戻ってくる・・・」
「だから、それじゃ遅いんです!大切なデータが入ってるんじゃないん
ですか?! 会社にも大きな損害を与える訳だからお困りじゃないですか?
事態は急を要するんです。 それをきちんと認識してください。
いつ持ってこられますか?」
「状況の報告に今日夕方電話がかかってくることになってるんですが」
「それは何時の予定ですか? その時修理は断って送り返すように
伝えてください。 本当にパーにされちゃいますよ。!あなたのためを
思って言ってるんです! その時間にもう一度電話をかけます。
よろしいですね?」
「いや、こちらからかけますから。その時間に電話が来るか判らないし」
何時にお電話を頂けますか? その時間に私準備を整えてお待ちします。」
「とにかくざっとの金額が知りたかっただけなんです。 何か、もうすぐに
契約するのが当然というお話しぶりですが、その前に一つ、技術的に
打つ手があるので、メーカーにそれを指示したんですよ。」
「そういう素人考えが取り返しのつかない致命的なミスになるんです。
もう、それでだめかも知れない。 残念です。」
「ダメならダメでその時にはお願いしますよ。」
「今じゃなきゃダメなんです。 そんな応急処置みたいなことをして
完全に壊れたら100万円でも治せないんですよ!」
「その話がどうしても信じられないんですよ。 ディスクが読めるかを
試そうとしているだけで何かを書き込むような物理テストを試みようと
言うわけじゃないんですよ。」
「会社に対して、それで大丈夫ですか? お客様自信も、その処置で
壊れたんじゃない、と完全に技術的に証明できるんですか?
軽はずみに取り返しのつかないことはすべきではないですよ。」
「仮にそうだとしても、もう遅いですよ。その依頼をしたのは数日前
なんですから」
・・・・・実際にはもっと色々技術的なやり取りなどもあったのだが、
半分にはしょってもこんな感じなので割愛。
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まるでオレオレ詐欺
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●この、大変だ!早くしないと大変なことになる!私があなたを助けるために
一生懸命なんですよ、ぐずぐずしていてはいけない、直ぐにお金を払いなさい!
・・・というような話を聞いたことがある。
オレオレ詐欺だ。
パソコンに詳しい人でも、クリーンルームでハードディスクを分解・組み立てした
人間など殆どいない。 困っている人に考える隙を与えずに法外な料金を吹っかけ
畳み込むように追い込んでいく。
セールスとしてはやり手なのだろう。法的にも、まあ、違法営業ではない。
だが、普通の一般的なユーザーならハメられてしまうのではないだろうか。
詐欺、とまでは言わない。 だが、足元を見て知識の乏しい素人から
高額のお金を脅し取る手法は、詐欺まがい、とそしりを受けても仕方がない。
住宅リフォームの世界でも、この「大変だ!」商法は後を絶たない。
ポケットにシロアリを忍ばせている業者も相変わらずいるらしい。
結局、素人が詐欺かどうかを判断するのに、「売り込みが激しい人」を
警戒するしか方法がないのも止むを得ないことなのだろう。
世の中、自分こそが善人、正義、そういう物言いをする人間は沢山いる。
勉強しなければ、つい、そういう「私に任せて」を信じてしまう人も多かろう。
信じられる人と出会えたら、それは物凄くラッキーなことなのかも知れない。