リスニングを得意にするには(藤野先生ありがとうございます) | 「都立受験」のプロフェッショナル(学志舎)

大学時代。

授業が型破りで魅力的だった先生に英語の習得法について質問してみました。

その際に教えて頂いた勉強法。

久しぶりに読んでみました。

1人の学生に対して、これほど丁寧に対応した下さったこと、

本当に有難いことでした。

私だけの知識にするのは非常にもったいないので公開させて頂きます。

皆様の参考になれば幸いです。

※中3生はあまり時間がないので、授業でリスニングの勉強法については別途話します。

布施くんへ

メールをどうもありがとう。リスニングのための耳を作りたいということですが、そうした明確な目標を持つことは大切だと思います。ただ、リスニングが出来るようになるということは、脳の中の言語野を育てるということですから、決して簡単なことではないのです。


僕がカナダにはじめて留学したときの話をしましょう。当時、僕は全くといって良いほど英語が使えませんでした。リスニングもスピーキングもボロボロでした。当時は一日約20時間英語漬けの生活を送っていたのですが、自分でも苛立つほど進歩は見られませんでした。ところが、3ヶ月たったある日、突然壁を付き抜けたかのように英語が聞け、そして話せるようになったのです。あの頃は「言語野」なんて概念は全く知らなかったので、「何が起こったんだろう???」と、とにかく驚いたことを覚えています。ところで、当時、僕は16歳だったのですが、比較的柔らかい脳を持っているといわれるその年齢でも、「言語野」を育てるにはそれだけの時間がかかってしまったのです。君はまだ20歳代前半でしょうが、それでも16歳のときと比べれば、言語を習得するためにはより多くの時間が必要になると思います。ましてや、日本語に囲まれた環境においてですから、じっくりと時間をかけて取り組まなければ、いつまでたってもカタコト英会話の域を脱することは不可能でしょう。

厳しい言い方かも知れませんが、「何か効果的な方法を用いれば一年やそこらで英語がペラペラ話せるようになれるのでは?」という幻想は今すぐに捨ててください。海外留学をしている学生ならともかく、防大の学生ではそれは不可能に近いと思います。今、君のいる環境の中では、最短でも2年間努力を続けることが、英会話を習得するための最低条件だと考えてください。ただし、あんまりがっかりする必要はありません。と、いうのも、語学の学習というものは「一生モン」だからです。逆に言うと、長い目で見なければ絶対に成功しません。防大を卒業して、任官して、英語が一番必要となる時期に英語が話せるようになっていればよいのです。実際に、これからの自衛官は英語が出来ないとキツイですよ~。

と、抽象的なことを言ってばかりでも仕方ないので、具体的な学習法を教えます。ただし、これは僕個人が効果的だと考えて薦める(自分でも実際に行っている)方法ですが、それが君に合うかどうかは分かりません。

1)ビデオでもあったが、とにかく高周波の音が入った音楽(クラシック)を聴く。CDラジカセなどで流しっぱなしでも良いが、出来れば一日15分で良いからヘッドフォンを付け、メロディーラインを自分で鼻歌で歌えるくらい集中して聴いて覚える。6日間同じ曲を聴いて、一日脳を休ませて、次は別の曲を聴くというように、基本的に一週間のスパンで曲を変える。これを最適3ヶ月続ける。これが自分の英語力の基礎体力を作る訓練となる。
2)クラシックを聴き始めて、1ヶ月が経った時点でラジオやTVを使って、実際の英語を聞いてみる。ラジオだったらAMEagle810(810MHZ)やFMInter FM(71.6MHZ)、テレビだったら外国のドラマやニュースを録画して(見て)聞く。IE5を使って、海外のインターネットラジオ局の放送を聞いても良い。また、NHKの英語講座の教材を利用してもよい(ただし、日本語の訳は聞かないこと)で、とにかく集中して聞いてみる。ただし、決して意味を理解しようとしないこと。とにかく、自分の知っている表現、単語に耳を傾ける(その結果、意味が分かるのは良い。つまり、意味を掴むこと自体を目標にしないで、自然な形で英語を受け入れるための練習が必要)。この段階では、恐らく英語の意味はほとんど分からないだろうが、気にしないでとにかく聞く作業に専念する。

3)英語を聞き始めて一ヶ月経ったら(=2ヶ月目)、何でも良いので簡単で短い英会話の本を一冊買って、一日最低1フレーズ、出来れば4フレーズを覚える。その際、必ずそのフレーズをノートに、ひとつにつき最低10回は書きうつすこと。単語とスペルと文章を手(=感覚を使って)で覚えるためである。また、フレーズを「覚えること」とは言ったが、この段階では翌日に忘れてしまっても良い。これはあくまでも、英語を自分の日常生活の一部にするための訓練なのだから。当然、この間もクラシックと英語のリスニングは続けること。


4)3ヶ月目に入ったら、だいぶ英語を聞く耳(と脳)も養われていると思うので、NHK英会話講座等の教材を使って、自分でディクテーションをやってみる。英語を聞いて、それを書き出す。単語の綴りが分からなかったら、あまり気にしないで適当に書いてみる。それから、もう一度同じ英語を聞いて自分の聞き取りの誤り(単語も含めて)を訂正する。日本語の訳を見て、意味を理解することも必要。この間もクラシックと英語のリスニングは続けること。

とりあえず、上記の訓練を3ヶ月間続けてください。リスニングの力は必ず上がるはずです。スピーキングの練習は全く含まれていませんが、スピーキングはリスニング能力を高めてから始めるのが良い。と、いうよりもリスニング(聞くこと)が出来なければ、いくらスピーキング(話すこと)を知っていても、コミュニケーションする上では全く意味がないのです。これを真面目に3ヶ月間続けられたら、またメールで相談してください。その段階でスピーキングのための練習を指示します。
とにかく、継続が大事です!とは言っても、練習を怠けてしまった自分を責めることだけは決してしないように。自分を律することは大事ですが、楽しく学習することが英語では不可欠なのです。また、この練習法で書いていること(特にスピーキングを3ヶ月はしないこと)が、僕が授業で指導することとは異なることも多々あると思います。それはあくまでも、純粋に英会話習得を目指した個人のための練習と学校のカリキュラムとの違いということで理解かつ了承してください。

答えからいうと、別にモーツァルトでなくても構いません。高周波の音は弦楽器を多く使ったクラシック音楽に含まれることが多いのですが、この中でしたら・・・バイオリン名曲集なんて最高ですね。モーツァルト、モーツァルトとビデオで繰り返していたのは、モーツァルトの「交響曲」に弦楽の音が入っていることが多いからなのであって、モーツァルトにも低周波の音を含む曲は当然存在するのです。

音楽を聴いてみて、音が高いと自分で感じることの出来る曲ならば、どんな作曲家の曲でも全く構いません。当然、同じ曲の中でも音が高い楽章と低い楽章があるのですから、クラシックであれば特に曲名、作曲家名にこだわらずに聴くことが大切です。

効果が出るまで時間がかかる練習ですが、諦めないで根気良く続けて下さい。ついでにクラシックの勉強を少しすると、教官位の年齢になったときに、ちょっとお嬢様気取りのお姉ちゃんをデートに誘いやすくなって一石二鳥です。

ピアノ曲にはあんまり高周波は含まれないとおもいますね。科学的には分かりませんが。体感的に考えると、あのオーケストラの弦楽器と管楽器が絡まった音が英語の脳を作るのに良いのだと思います。つまり、管楽器の比較的低い周波数の音の中に高周波の弦楽器の音を探す訓練というわけですね。クラシックでは弦楽器が曲の主旋律を奏でる場合が多いので、メロディーラインを追うという行為には「雑音」の中に正しい音を見つけるという意味も含まれているのです。

今、一番おすすめの教材は授業の中でも紹介した。「英会話とっさのひとこと辞典」です。あの本は一生使えますよ。ただし、英文購読や単語の「練習」本としてはどうかと思いますね。英文購読に関しては、個人的には雑誌を読むよりも何か短い小説を読む方が勉強になると思いますね。雑誌だと、次から次へと新しい号が出回るので、精神的にあせってしまうのです。何にしても、自分が興味を感じるものを読むのが最適です。書店の洋書売り場を歩いてみて自分の興味を引いたものを購入して読んでみましょう。本を読むのが大好きな人には是非おすすめの小説がありますが、結構難しいし長いですよ。興味があるようでしたら、紹介します。単語についてはTOEICに活かしたいのであれば、今一学年対象に使用している「TOEIC必修単語}(ジャパン・タイムス)が分かりやすくて良いと思います。