家作りの初期段階において、
「2階にトイレを設置するかどうか」
がよく議論になります。
建築系の掲示板等でこういう質問が上がると、
賛成派・反対派それぞれから、なかなか説得力の
ある回答が出てきて面白いです。
■それぞれの主張
【2階にもトイレが欲しい!派の意見】
●混み合った時や詰まった時に、2つあると助かる。
●病気の時など、寝室の近くにあると助かる。
●友達が来た時に2階にもあった方が良い。
【2階にトイレは要らない!派の意見】
●余計にお金がかかる。約20~30万円。
●スペースが必要。約1帖。
●トイレ掃除が面倒。
●水が漏れた時に下階が水浸しになる。
●結局どっちかはあまり使われない。
●実際にマンション暮らしの人は、1つで足りている。
なるほど~。
「要らない!」という意見は、理由が明確ですね。
「欲しい!」という意見は、“あったら便利”に尽きます。
食洗機とか床暖房とか浴室乾燥とか勝手口とか、
だいたいこのパターンですね。
あると便利だけど、なければないでなんとかなる。
予算とスペースがあるなら、2階にもトイレを設置すべし。
ごく当たり前のお話でした。
■最近の傾向
最も一般的な2階建の戸建住宅においては、
2階にもトイレを設置するケースの方が多いと思います。
市場の傾向を把握する最も簡単な方法は、
建売住宅のチラシを眺めること。
建売住宅というのは、基本的にはその時々の
市場ニーズに則ってプランニングされています。
そしてほぼ100%、2階にトイレはあります。
でも 僕が小さい頃に遊びにいった友達の家にも、
結構2階にトイレがある家が多かったから、
特に「最近の傾向」というほどではないかもしれません。
とはいえ昔より割合として増えているのは確かだと思います。
最近の特徴を挙げるなら、「便房」に加えて洗面スペースを
確保するケースが増えている気がします。
■我が家の場合
うちの場合、
妻は「絶対欲しい!」
僕は「あるといいなぁ。」
という感じで、少し温度差がありました。
僕はトイレの1帖分を、収納スペースに
充ててもいいと思っていました。
最終的に妻の意見に与した理由は、居住経験の差。
僕は自邸を新築するまで、マンションやアパートなどの
集合住宅にしか住んだことがなかったのに対し、
妻は実際に30年近くも2階建の家に住んできて、その上で
必要だと感じているのだから、それを否定するわけにはいきません。
元々は、
病気の時、もしくは高齢になった時に、トイレのためだけに
主寝室(2階)から1階まで移動する辛い。
というのが、妻の一番の主張でした。
新築して1年経っての実感としては、
「まさにその通り」でした。
新居に住み始めてから妻は妊娠し、
妊娠初期の重いつわりの時も、妊娠後期の頻尿の時も、
トイレが近いことでとても助かりました。
僕は僕で、尿管結石の時に非常に助かりました。
そういうことなんですね。
健康な時は、2階にトイレは要らないんです。
でも、あると助かるんです。
階段というのは、一種のバリア(障壁)。
手すりや段差のように、健康な時にはその存在を意識しません。
でも健康ではない時に、階段の昇り降りはとてもしんどいです。
我が家の家作りは、妻はほとんど僕に任せてくれました。
数少ない妻の明確な主張の1つが、「2階のトイレ設置」でした。
妻の主張に任せて良かったと心から思います。
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長々と書いた割には、たいした話ではありませんね。
設計には、想像力が大事だなぁと改めて実感しました。
誰もが、ある程度は想像力を働かせながら家作りをします。
僕が言いたいのは、もっと突っ込んだところ。
どんな状態の時に、どう感じて、さらにどう変化していくか。
猛暑日の打合せで、床暖房が必要かどうかイメージできるか。
ピンピンしている時に、インフルエンザの辛さをイメージできるか。
そして、25年後に家族はどこで何してて、家はどんな状態?
建売住宅によくある、細切れの2階の部屋はどうなっていますか?
2階の間取りを考えるために、というよりも、
家作りを根本から考えるためには、25年後の想像は重要です。