「建坪」の定義 | In My Life■無印良品の家

In My Life■無印良品の家

建築士の視点から見た「無印良品の家」(木の家)の紹介を中心に、
インテリア・音楽・食べ物・旅行・日々の出来事を自由に書いています。

家作りの情報を集めるようになってから、

建坪」(たてつぼ)という言葉を頻繁に見るようになりました。


家作り中、もしくはこれから建てる方も、家族や友人に新築の

話をしたら「建坪はどのくらい?」という質問が来ることでしょう。



その時に、どうやって答えますか?



(写真はイメージです。)
注文住宅の建て方■無印良品の家-土地


■人によって違う「建坪」
僕は実際に聞かれてちょっと戸惑いましたあせる


建築面積の坪数だろうと思って答えたら、

そうじゃなくて全体で!」みたいに言われたので。



どうやら「建坪」という言葉は、人によって

建築面積(坪)」だったり「延べ面積(坪)」だったり、

統一されていないのです。


知恵袋とか建築系の掲示板とか見ても、とにかくバラバラ。

誤用が多い、と言っても良いでしょう。何が正しいかは後述します。


たいていの場合は、文脈や常識的な坪数から

「あ~この人はこっちの意味で使ってるな~」って判断できます。



例えば、ある人が「建坪10坪」と言ったら、おそらく

建築面積(≒ほぼ1階の床面積)として使っていると判断します。


つまり総2階としたら、延べ20坪



でも、「建坪30坪」と言ったら、延べ面積の場合が多いです。

つまり総2階としたら、建築面積(≒ほぼ1階の床面積)が15坪


でももしかしたら、1フロア5坪の狭小住宅もありうるし、

大きな家で1フロア30坪もあるかもしれない。

というか実際にあります。


なぜこんなことが起こるのでしょうか?





■専門家は使わない?


戸建住宅はほとんど扱わない、中規模の建築設計事務所に勤めて

かれこれ8年以上経ちますが、事務所内で「建坪」という言葉を

ほとんど聞いたことがありません。


その一番の理由は、正式な用語ではないからでしょう。

建築基準法にも都市計画法にも、「建坪」という言葉はありません。


そしてその言葉を使うことで、音を短くできるとか、何かメリットが

あるかというと、そういうわけでもない。


基本の単位は「 」ですから、すぐに計算できるし。

(詳しくは、「坪と㎡の換算」 2011.09.05付の記事を参照。)



そんなわけで、曖昧or誤用が多い上に、正式な用語ではないので、

建築士をはじめ建築業界の人は「建坪」という言葉をほとんど使いません。


主に土地の取引を主とする不動産業界や、

住宅に詳しくなった素人の方が多用している気がします。






■「建坪」の正しい意味


別に「素人が使うな」とか傲慢なことを言うつもりはないです。

僕も家作りをするまで口にしたことがなかったし。


どうせ使うなら正しく使ってほしいと思うだけの話であって。

インターネット上の情報はあてにならないので、辞書で調べてみました。

注文住宅の建て方■無印良品の家-日本語大辞典
【講談社 「日本語大辞典」】


 ●建(て)坪 

   建物の1階が占めている面積。建築面積。


ふんふん、やはり建築面積なんですね。

「建築面積」は建築基準法にももちろん記載があります。

ですので当然、ちょっと検索にかければたくさんヒットします。


1階より2階が飛び出していたり、庇の大きさなど様々な条件で

「1階の床面積」と「建築面積」は違ってくるんだけど、

細かいことは良しとしましょう。普通はだいたい同じですから。


じゃあ、よく誤用される延べ面積の「坪バージョンは?」と

思って調べてみたら、辞書にありました。


 ●延(べ)坪 : 

   建築物で、各階の床面積の合計を坪数で表したもの。延べ床面積。


へー。「のべつぼ」って言うんだー。\(゜□゜)/

うーん。使わないなぁ(笑)


うちの事務所で戸建住宅の設計物件は少ないとはいえ、商業施設の

売場などは坪数を重視するので、施主向けの図面には記載しますが、

「のべつぼ」というオーソライズされた言葉としては誰も使っていません。



なお、「延(べ)床面積」と「延べ面積」は同義です。好みの問題。


建築基準法の正式な言葉は「延べ面積」。「床」は付きません。

その定義は、 建築物の各階の床面積の合計 です。

でも、「床」を付けて「延(べ)床面積」と言った方が分かりやすい気がしますね。



*********************************************************



■建蔽率の「ぺい」

「建坪」(たてつぼ)の意味についてはひとまず解決したところで、

おまけ情報、その1


敷地面積に対する建築面積の割合を、「けんぺいりつ」と言い、

「建率」 と書きます。


この、「ぺい」という漢字はこれまで常用漢字外でした。

正式書類では、ほとんどが「建ぺい率」と表記されてます。



ところがビックリマーク


2010年11月30日に、常用漢字に追加されたらしいです。

ずいぶん最近のニュース、1年経ってないじゃないですか!NEW



漢字辞典ネット のリンクを貼ります。

音読み順で、通常の音読みは「へい」なのでページの下の方です。


今後、「ぺい」のひらがな表記は減って、漢字表記が増えるでしょう。






■誤用は御用

だじゃれかいっむかっ

おまけ情報、その2



ネットで時々、「建坪率」なる言葉を見かけました。

「たてつぼりつ」?なんじゃそりゃ?


まぁ確かに、建ぺい率を計算するのに、「㎡÷㎡」でも「坪÷坪」でも

割合は同じになるから、「たてつぼりつ」があってもいいのですが。



問題はそこじゃありませんでした。




建築用語集 なるサイトの情報。 ←リンク有り。


「建坪率」と書いて「けんぺいりつ」と読ませるなっ!パンチ!

「建築用語集」ってタイトルで堂々とこういう誤情報を出さないで欲しいなぁ。




「建ぺい率」の「ぺい」と、「坪」(つぼ)とは何の関係もありません。

「蔽」(へい)という言葉は、“覆っている”という意味。


土地に対して建物がどれだけ覆っているかの割合を示すから「建率」

面積の単位の「坪」(つぼ)も、音読みはたしかに「へい」ですが、

「けんぺいりつ」とは無関係です。






■「建坪」って重要?

おまけ情報、その3


建坪は、建築面積を表すということでした。

で、建築面積って会話に出るほど重要なんでしょうか?


延べ面積は、「坪数×60万」ぐらいで、超ざっくり建物本体の

費用を概算で知ることができるかもしれません¥



でも、建築面積が分かったところで、得る情報は少ないですよね。



みんなが平屋の建物を建てていた時代なら、建坪はそのまま建物の

規模を表していました。


でも2階建と3階建とでは、建坪が同じでも規模や金額は全く違ってきます。

だとしたら、建坪という言葉はあんまり必要ないのでは…?



建物の外部でも、庇の長さポーチの柱の有無で数字が変わってくる

建築面積というやつは、延べ面積ほどの重要な意味はありません。

(他にもいろんな算定ルールがあります。)


よって建坪という言葉も、家作りにおいてそれほど重要な

意味はないと思うのですがいかがでしょうか?





■建築面積が重要な場合

おまけ情報、その4



建築面積が主役となる、重要なケースが1つありました!!
広さを例えるのに、「東京ドーム○個分」と聞きますよね。


あれはまさに、「東京ドーム」という建物そのものの建築面積で、

46,755㎡(約1,414坪・約4.7ha・約0.047k㎡)。

観客席も含みます。ちなみにグランドは約13,000㎡です。


ニュースなどで言う、広さの「東京ドーム○個分」よくこの4.7haで

割り算しているケースがほとんどです。


*********************************************************


本題より「おまけ情報」が多いってどうなんだ!?

まぁいいや。細かいことは気にしない音譜


ではでは。