サボテンマニア -6ページ目

サボテンマニア

これさえ読めば、きっとあなたもサボテンマニア!
※注 マニアになったからといって、特典などはございません…w

寒い日が何日か続いて、久々の陽気に包まれた日曜日。
それでも吹きすさぶ風は冷たく、肩をすくめて外に出た。
繋がれた左手をギュッと握って、行き場を失った右手は上着のポケットに収まった。
この通りは日陰が多くて寒いんだ。

他愛も無い会話をしながら歩く。
時に自ら喋り、時に相槌を打ちながら。

その通りには、いつも目をひく巨大なアロエ?がある。
やはり今日も例に漏れず、そのアロエの話に華が咲く。
少しお金持ち風な家の、2Fバルコニー部分に鎮座しているアロエ。
街に似つかわしくない巨大な風貌。
1Fにまで到達してしまうぐらい、デローンと垂れ下がった大きな葉。
その存在感に驚き、また、どこか滑稽に思えるその様に、失笑に近い笑みがこぼれる。
どうしてあそこに植えたのだろう?とか、
あそこまで大きくなるって思わなかったんじゃない?など、
そんな街の一角にある植物に、いらぬ想像を膨らませつつ僕らは笑う。

しばらく歩いたら目的地に辿り着いた。
大人達が静かに並んでいる。
普段は小学校として機能しているこの場所も、今日は特別な用事で様変わりしてしまっていた。

僕らも無言で列に並ぶ。
ずっと日陰を歩いてきて寒かったのが一転、ここはぽかぽかと暖かい。
そんなに広くはないけれども、南向きの校庭は日の光を充分に与えてくれる。
寒さから解放され、暖かさに包まれた僕は、さきほどのアロエのことを思い出しつつ船を漕いでいた。
うつらうつらしていたら、次第に投票所が近づいてくる。
僕はここの住人ではないので、繋いでいた手を一旦放した。
放したその手は、この季節とは思えないほど汗ばんでいた。

手持ち無沙汰なので、携帯電話なんかをいじりながら待っていた。
校庭には、一緒に来たご家族を待っているのか、まだ小さい子供や犬を連れて遊ぶ人がいる。
「影ふんじゃうぞぉ~!」という元気な子供の声が聞こえる。どうやら父親と影踏みをしているようだった。
その父子に遠い日の父と僕を重ねる。
何故だか知らないけど、最近無駄に涙もろい。父子を見ていただけで泣きそうになっていた。

ふと足下を見たら、小さい犬がいる。
僕は犬が大好きだ。微笑みながら静かに手を差し出す。
フンフンと匂いを嗅いでいたが、気が済んだのか僕から遠ざかっていった。
飼い主のお年寄りが、「ありがとうございます」と、しわくちゃの笑顔を僕に向けてくれた。
僕も笑顔で軽く会釈をすると、お年寄りの方は犬を追って歩いていった。

すると用事を済ませて帰ってきたので、僕らはまた手を繋いで歩き始めた。

今日は鉄板入りの編み上げブーツを履いていた。
完全に失敗だった。
さらに、靴下も短めのをチョイスしてしまった。
これもまた完全に失敗だった。
ブーツは少しオーバーサイズで、久しぶりに履いたのもあって、中で足が遊んでいた。
短い靴下も、ブーツの中でスルスルと脱げていってしまう。
校庭を通り抜け、歩道に出る頃には完全に脱げていて、アホの子みたいになっていた。
少し歩いちゃ靴下を引っ張り上げる・・・その行為の繰り返しだ。
そのうち僕はそれを諦め、アホの子でいることに決めた。

駅まで向かう間も、他愛の無い話にいくつもの華を咲かせた。
水を使わないで作ったカレー、僕のこと、あなたのこと。
やっと持って帰るバウムクーヘン、タバコの空き箱、イルミネーション。
七分丈のジャージ、30日のライブ、クリスマスにお正月のこと。
気がついたら駅に着いてしまっていた。

いつも見送られてばかりだったけど、今回は僕が見送った。
改札が僕の行く手を阻み、人混みに紛れながら小さくなっていった後姿。
ご主人に置いてけぼりにされる犬の気持ちが、今なら解る。
僕は地上に上がり、僕が乗るべき電車を待った。


地元に着いた。
イマイチ垢抜けてないけど、やっぱりなんか落ち着く。
家族に電話をかけて、迎えにきてもらおうとしたけど繋がらず。
歩いて帰ると1時間ほどかかる。一瞬歩こうかとも思ったが、アホの子なのですぐイヤになった。
バス乗り場へ向かう。タイミング良くバスが出るところだった。
小走りで駆け込むと、すぐにバスは出た。

家に着いてすぐ、僕も紙切れを持って再び家を出た。
さっきは小学校だったけど、僕のところは公共施設なんだ。
先ほどのような行列はなく、人気の無いその場所で紙切れを見せる。
名前を確認され、新たな紙切れを渡された。
僕はそれに「ナシ」とだけ書いて、貯金箱のオバケみたいなのに入れてきた。


その帰り道、花を見つけた。
こんなに寒い季節にも、咲いてる花はあるんだね。
花、葉、茎、そして根。
ひと言に「花」とは言っても、色んなもので成り立ってるんだなあ。

今日も色んな話の華を咲かせたけど・・・
きっとそれらも、色んな事柄が合わさって成り立っているのかもしれない。
今日の話の「華」の葉っぱ、茎、根っこは何なんだろう?
そんなことを考えていたら、一日が終わってた。

みなさんのPCは快適に動作していますか?
OSやアプリケーションの立ち上がりが悪くなったり、すぐに固まってしまう。
また、酷い場合には、容量オーバーで警告が出てしまうこともあります。

そんなわけで、今日はPCメンテ初歩の初歩をご紹介します。
今回は諸事情により、Windows7のケースでお話しますが、XPでも基本は一緒です。

手順その1 不要なファイルを捨てる!
これはそのまんまですね(笑)
取り込んだデジカメの画像や動画・Excel・Word等のファイルを削除します。
特に画像や動画は容量が大きいので、捨てると一気にHDD容量が空きます。
削除するには忍びない・・・または、どうしても消したくないファイルは、CDやDVDなどメディアにコピーするか、外付けHDDなどに移しましょう。

手順その2 ディスククリーンアップする
不要なファイルを削除しても、実はインターネットでダウンロードした過去のデータ等、隠れた不要なファイルが存在しています。
ついでなので、これら古いファイルも削除してもらいましょう。


1

まずは[スタートメニュー]から[コンピューター]を選択します。


2

そこで、ハードディスクドライブ(C)を右クリックして[プロパティ]を選択すると、↑のようなダイアログが出ます。
円グラフに使用状況が視覚化されていますが、その右下に[ディスククリーンアップ(D)]というタブがあるので、クリックします。


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クリックするとすぐに、スキャンが始まります。
場合によっては数分~数十分かかることもあります。その間、何もしないでください。



3

スキャンが終わると、新たなダイアログが出ます。
詳細の下に、ディスククリーンアップ後の空き領域が表示されます。
この数字が大きければ大きいほど無駄なファイルが多いという証拠です(笑)
良ければ[OK]をクリックします。



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[OK]をクリックして、[ファイルの削除]を選択します。



6

ディスククリーンアップが始まります。
これもまた、ファイル数によって数分~数十分かかることがあります。
止まっているように見えても、裏で動いています。この間いじらないでください。



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ディスククリーンアップが終了しました。


ここで、手順その3 ディスクデフラグをする!
ハードディスクプロパティのダイアログ上に[全般][ツール][ハードウェア][共有]・・・などのタブが並んでいます。
そのうちの[ツール]を選択します。



8

項目が3つありますが、[最適化]の[最適化する(D)]をクリックします。



9

[ディスクの分析(A)]で、最適化するか否かを判断する場合もありますが、今回は[ディスクの最適化(D)]をクリックします。
[ディスクの最適化(D)]を選択しても、最初は分析が始まります。分析が終わると自動で最適化にシフトしてくれます。



10

ディスクの最適化が始まりました。
これもものによっては数十分~数時間かかることもあります。
[実行中...]と表示されているうちは、動いてないように見えてPC内では作業をしています。
「変化が無いなぁ・・・?」と思って途中で止めたりすると、それまでの作業が水の泡です。
動かさないようにしましょう。


・・・と、ここまでがPCメンテの基本です。
ディスククリーンアップは、読まなくなった雑誌を捨てるようなもの。
ディスクデフラグは、本棚に本が歯抜けで並んでいたとして、それを横からギュッと押して新たな本を並べるスペースを作るようなものです。
これらをすることによってPCの動作が快適になります。


これでもダメなら、PCの再セットアップやリカバリーぐらいしか無いのですが・・・
お近くにいるPCに詳しい人や、各メーカーのカスタマーサービス・最寄のPC専門店か買ったお店などで聞いてみるのもいいかもしれません。


以上、今さら他人に聞けないPCメンテナンスのコーナーでしたw

前回まではコチラ



それは封書の束だった。

暗がりでよく見えなかったが、僅かに射し込む外の灯りで、封書だというのは分かった。


こんな時間に一体誰が・・・?


一瞬恐怖も過ぎったが、誰がこんなものを投げ込んだのか、確認せずにはいられなかった。


履くものもそっちのけに、私はドアを開け一歩外に踏み出した。


静寂---


見回しても誰もいない。なんの気配もない。


自分以外の三部屋は空き室のはず。当然といえば当然である。

ただしんとして、深夜独特の澄んだ空気が身体に張り付く。


一瞬呆けてしまったが、ハッと我に返り、封書の束の存在を思い出す。


が、その時だった。


カタン、カタン・・・という例の音が聴こえてきた。


それも、いつもよりも速いテンポでこちらに近づいてくる様子が鮮明に聴こえる。


カタン、カタン カタン、カタン、 カタン、カタン! カタン!カタン! カタン!!カタン!! カタンカタン!!!


その正体を知りたくて自ら扉の外に出たくせに、私は慌てて部屋に引き返した。


急いで鍵をかけ、玄関に散らばった封書もそのままに、頭から布団をかぶって夜をやり過ごした。




電話が鳴っている---

永遠に感じられた夜は明けていたようだった。


いつしか眠っていた私は、その音に起こされた。


充分な睡眠をとれていなかったためか、半分寝惚けながら電話を取った。


だが、電話の向こうから聴こえてきた声は、思いがけない人物のものだった。


鈴保千絵だ・・・!


予想していなかった出来事にテンパりながらも、歓喜と興奮により一気に目が覚めた。


会話の内容は他愛も無いことで、昨日の礼と、話した内容や出来事の反芻だった。


例え内容の無い会話であっても、憧れの人の声が聞けて、それが自分だけに向けられたものだと思うと


起きていながら夢見心地であった。


さらに驚いたのは、今日も遊びに行っていい?という千絵からの問いだった。


何故?という疑問はあったが、断る理由は無い。むしろ歓迎すべき提案に、二つ返事でOKした。


予期せぬ嬉しい目覚めに気分も良かったのだが、玄関にふと目をやると、昨夜のことが思い返された。


今は闇夜とは違い、太陽の光に溢れている。外には人々が生活している気配もする。


多少の気味悪さはあるが、とりあえず玄関に散らばったままの封書をかき集め居間に戻る。


一旦落ち着こうと煙草に火をつけて、まじまじと「それ」を観察してみた。


数えたら十通。皆同じ封筒のようだ。


宛名も差出人も書かれていない。


すぐにでも中身を見たいという気持ちと、見たくないという気持ちが葛藤していたが、


煙草が吸い終わる頃、ついに封を切ろうと決心した。


to be continued

こんばんは。サボテンです。
久々のご挨拶になります。

いや~、リレー小説の大トリという大役を仰せつかったのですが・・・
個人的な感想というか、あとがき的なお話させていただこうかと思います。

まず、自分のことに関して言うと、「なげーよ!w」って感じでしょうか?(苦笑)
私の技量の無さというのが一番の要因なのですけど。
でも、アレ以上削れなかったんですよねぇ。
アレの1/2~2/3ぐらいで収めるのが理想だったのですが、必要なことを盛り込んだら、あんなことになっちゃいました。
いやいや、削ったら中身がスッカスカになっちゃって、今までの流れを切っちゃうように思えたんですよ。
どうせラストなんだし、最初から見てくれた人なら読んでくれるだろうという勝手な思い込みもありましたがw
どれぐらいの方が最後まで読んでくださったかは判りませんが、楽しんでいただけたなら、それ以上望むことはありません。

最後まで読んでくださった方はもちろん、途中まででも読んでくださった方も、ありがとうございました。

さて、お話の中身なのですけど。
登場人物達のネーミングは、それぞれの思いがあって付けたと思われますw
これ言っていいのかわかりませんけど、主人公の佐保トミオなんですが・・・これ多分私のことだと思いますw
以前実際に会ったことのある人から言われた私の印象について、声が梅沢富美男に似てると言われた事がありまして。
本人的にはどうかと思うところもあるのですがw、それを面白おかしく伝え聞いた方が、トミオという名前に着想を得たのだと思っておりますw
サボテン=佐保 +トミオ っていうことですね。えぇ、そうでしょうよ。ハイハイ。

それにしても、この佐保トミオってヤツ、どうしようもないですよねw
写真で一目ボレしたようなアブナイ女の子と二つ返事で付き合っちゃうわけだし、憧れていたとはいえ横入りした子とも言われるがまま付き合っちゃうなんて・・・(汗)
コイツ自主性0かよ!なんて思ってしまいますw
唯一自主性見せたのが、ラブホに連れ込む時だけですし。サイテー野郎ですw

川口マリ・・・この子も相当イッてますね。サイコなニオイがしますw
だってそうでしょう?会ってもいないのに、写真を見ただけで一目惚れって・・・自分的にもありえないですし、身近でも聞いたことは皆無ですw
ただ、途中の描写でカワイイ一面を見せたり、ラストの回でも一途な面を見せたりして。
サイコっていうより天然なのかな?うん、そうに違いない。
そう思ったら、なんか可愛く思えてきたぞ!(←バカ)

そして最後までよく分からなかったのが、坂下桜ちゃん。
う~む。名前が出てから私に回ってくるまで、人物的な描写が一切なかったもので。
結局最後までよくわからない人になっちゃいました(汗)
個人的には、容姿は良いけど性格はあんまり?途中二股になる辺りなんかは、小悪魔っていうかビッチなイメージでしたw
悪い子じゃないんでしょうけど、友達の彼氏に手ぇ出したり、付き合っていた先輩にフラれたり・・・多少性格にも問題があるのかなぁ?なんて勝手に想像をしちゃいます。

最後はあんな感じで〆ましたけど、読んでくださった皆さんはどう思いましたかね?
あの後でも色んな選択肢があると思うんですよね。

・ちょっと遅れて彼女が来る
・結局来ない
・そこにマリが現れて・・・!

他にも様々な選択肢が考えられますが、私的には・・・彼女は現れないと思います。
ってか、こんな野郎には待ちぼうけがお似合いだぜ!と思ってる自分がいますw

そうだなぁ、私がトミオだったなら・・・
とりあえず会社に戻って無断欠勤を詫びる→マリに謝る→元サヤ
っていうのがセオリーだと思うんですけど。

でもトミオ自主性0だからなぁ・・・orz
きっと思いもよらない行動をして、私をガッカリさせてくれるに違いないでしょうw


そんなこんなで、ようやく終わったリレー小説。
ホッとしたのもつかの間・・・!


どうやら次が始まっているようですよw
しかも二番手は私ですとっ!!w


普通に書きますw

第一話【起】

第二話【承】

第三話【転】



「トミオ・・・・・・・あのね・・・・・・」

少しだけ苦しそうに一つだけ息を吐き出して続けた。
「やっぱりマリとは別れて欲しい」
「あたしだけのトミオになって欲しい」
桜ちゃんのありったけを込めた、精一杯の言葉だった。
だけど俺はそれを受け止めるのがやっとで、何も返してやれなかった。

あの日から桜ちゃんは素っ気なくなっていった。
学校で会っても『わざと』視線を合わせようとせず、隙を見計らって話しかけようとすると慌てて背中を見せるようになった。
避けられているのは明らかだ。

一方マリとの付き合いは、今まで通り変わることは無かった。
いや、俺の中では確実に変わっていたのだが、マリに対しては、これまでとなんら変わりない。
・・・ように装っていた。
桜ちゃんに告白されて、なし崩し的に二股状態になっていたなんて。マリに伝えられるはずもなかった。

そのままの状態が続き、高校生活を終えた。
結局桜ちゃんとはあれっきり進展は無いまま。
俺は推薦で大学進学。マリは地元企業の事務職に就くことになった。
桜ちゃんは・・・直接聞けたわけでないが、他県の大学へ進学が決まったらしい。
決して気にならないわけではないが、少し肩の荷が下りたような気持ちになったのも事実だ。
元々俺とマリの間に後から割り込んできたのは桜ちゃんだ。
でも、ずっと遠くで眺めることしか出来なかった子と、あれだけ親密になれたのだ。
少し惜しい気もしないではないが、それではマリに申し訳ない。
いや・・・二人の女の子と同時に付き合うという事自体が、面倒になっていたというのが正直なところだ。

その後も俺は、相変わらずマリと付き合っていた。
俺より先に社会に出た彼女は、「女の子」というより「女性」と呼ぶに相応しくなっていった。
知的でエネルギッシュな部分はそのままに、落ち着いた雰囲気になった。
また、仕事の影響だろうか、一つ一つの仕草や表情に気品が漂っている。
たまに見せる彼女のそんな一面に、焦りにも似た感情を抱きつつも、一緒にいると心穏やかでいる自分に気づかされた。
「コイツと一緒になるんだろうな」
いつしか、そんなことを考えるようになっていた。

俺は都市部にある商社に内定し、4年の大学生活を終えた。
大学生活はとても短く感じられた。
友人は何人かできたが、特に部活やサークルに入っていたわけでもない。
『大学→バイト→マリ』というルーティンをこなしていただけのような気がする。
この間マリにも、将来を意識したような言動が少しずつ目立つようになっていった。
始めの頃は夢を語り合うような感じで、俺自身楽しんでいた部分はあったと思う。
だが次第にそれが現実味を帯びてくると、マリのその言動が鬱陶しく感じられるようになった。
この俺が家庭を持つ。もう自分の思い通りに生きることは出来ないんだ。
これから死ぬまで家庭という鎖に縛られるんだと思うと、ゾッとした。

入社後、研修期間を終え、1ヶ月が過ぎた頃だった。
まだまだ実務はおぼつかない部分が多いが、対人関係や社内環境には慣れてきた。
そんな時だった。
マリが、たまには会社帰りに一緒にご飯でもどう?と提案してきた。
実は最近、マリと一緒にいるのが億劫になっていた。
以前はそう感じなかった言葉や仕草の一つ一つに苛立ちを感じ始めていたのだ。
それは俺が一人で勝手に感じていることかもしれない。
だが、馴れ合いの中に埋もれた日常の一つ一つに『お前は私の所有物なんだ』というニュアンスが見て取れたような気がしてならなかった。
だからといってマリの提案を拒否する理由があるわけではなく。俺はマリからの提案を受け入れた。

その日は俺が初めて社内プレゼンをすることになっていた。
早めに出社して最後の資料チェックをしたいし、何かと準備もある。
俺はいつもより1時間早く家を出た。
駅に着きホームに向かい歩いていると、誰かに呼び止められた。
振り返ると、一瞬ドキッとするような可愛らしさを持つ女性がニコニコしながら話しかけてきた。
「トミオ・・・!あ、佐保君、久しぶり。元気?」
一目見ただけでは分からなかったが、声と喋り方、俺を見つめる瞳を見て思い出した。
「桜ちゃん・・・?」
髪型も髪の色もあの頃と違っていたし、メイクもしていた。
でも、あの頃の面影は残っていて、急な出会いに驚いたと同時に懐かしく、嬉しくもあった。

すぐに電車が来て、二人は同じ電車に乗り込んだ。
会社までは2駅だったのでロクに話すことは出来なかったけど、お互いの近況や「あの後」の事などを少し話した。
桜ちゃんは他県の大学に進学して一人暮らししていたらしいが、在学中にアクセサリー製作に出会い、のめり込み辞めたということだった。
それから地元に戻り、専門学校でデザインを学んでいたのだが、それも終えて数日後に上京すると言った。

本当にあっという間に会社の最寄駅に着いてしまった。
後ろ髪引かれる思いだったが、別れを告げ電車を降りようとした時に不意に彼女は言った。
「あの時の返事、聞いてないよね・・・あれってまだ有効かな」
電車の扉が閉まり、走り去っていった。
二人を取り残したまま。

とはいうものの、俺は会社に行かなければいけない。
彼女は数駅先に用事があったのだが、つい勢いで一緒に降りてしまったと笑いながら言った。
「佐保君、会社終わった後は何か予定あるの?」
きっと何かの誘いに違いないのはすぐに分かった。
しかしマリとの約束もある。しばし考えて言った。
「仕事の後、1件用事があるんだ。それが済んでからで良ければ・・・」
彼女は屈託のない笑顔でうんと頷くと、21:00にこの駅の改札前で待ってると言い、次の電車を待っていた。

社内プレゼンは散々だった。
自分なりに練りに練って自信を持って出したのだが、細かい詰めが甘かった。
一通り終わった後、それらの一つ一つを指摘され、他の同僚達の前で吊るし上げにされた。
アイデアも平凡だと上司に鼻で笑われてしまった。
俺と同じ他の新人の時は、特に何も指摘されていなかった。
別に褒められたいわけじゃないが、自分ではまずまずの出来だと思っていたのに、全部否定されてしまった。
屈辱と喪失感で、頭が真っ白になっていた。その日何をしていたのか覚えていないが、いつしか就業時間が終わり会社を後にした。
出てすぐにメールが入り、マリが近くの店で待ってるという知らせだった。
そんなことすっかり忘れていた。

店に入るとマリが奥まった席でこちらを見て手を振った。
会社の事で気落ちしているのが顔に出ていたらしく、席に着くなり大丈夫かと心配された。
格好悪い出来事ではあったが、別に隠す相手でもない。俺はワインを口にしながら日中の事をマリに話した。
するとマリは『期待されている証拠だ』とか『最初に怒られて良かった』『誰でも最初は素人だよ』など、分かった風なことを言って慰めてきた。
確かに社会人としてはマリの方が先輩だし、言う通りなのかもしれない。
だが、今まで積もりに積もったこともあってか、マリにそんなことを言われるのが凄く悔しくて腹立たしかった。
その時はなんとか我慢していたのだが、その話題が終わったらまた『いつ籍入れる』『早く一緒に住みたい』なんて言ってきたので、いい加減うんざりした俺は、ついに爆発してしまった。

「またそれかよ!しつこいんだよ!」「俺はお前の所有物じゃねぇ!」「上から物言いやがって!お前は何様なんだよ!」
つい関係無いことまで言い放ってしまったが、酒も入っていたせいか、思いのたけをぶちまけた。
「ごめんなさい・・・そんな風に思ってるなんて、思ってもみなかったから・・・」
マリは謝罪を口にして、しょんぼりとうなだれていた。
勢いに乗って言った手前、引くに引けず、さらに自分でも思ってないことを口にしてしまった。
「もうお前とはやっていけないよ。別れよう。もう無理だ」
マリは肩をビクッと震わせて、首を激しく横に振った。
「付き合い始めた時からそうだったんだ。俺はあの時桜ちゃんのことが好きだったんだぜ?」
マリの首の動きが静かに止まった。
「お前と付き合い始めてすぐに、桜ちゃんとも付き合ってた。お前は知らないだろうけどな・・・」

「もう終わりにしよう。お前も俺のことは忘れてくれ」
するとマリが震える声で言った。
「・・・知ってたよ。桜とのこと」
今度は俺がビクッと肩を震わせることになった。
「いつだったかトミオを驚かせようと学校まで行った時、桜と共通の友達から聞いたの」
「でもトミオはあたしが好きになった人だし、トミオがあたしの傍にいてくれるなら・・・それでいいと思ってた。」
驚いた。何年も前の事とはいえ、マリは知らなかったと思い込んでいた。
「あたしがね、トミオを真っ直ぐ見つめてたら、きっと最後にはトミオはあたしを選んでくれるって」
マリはうつむきながら、涙をぽろぽろと下に落としながら話した。
「でも、もういい。」
俺には何も言えることは無かったが、それでも何か言おうとした。それを察知したマリが先に口を開いた。
「トミオには、あたしなんて必要じゃないんでしょう!」
俺には一瞥もくれず、マリは走って店を出て行った。

店で修羅場を演じてしまったので、さすがにいたたまれなくなった俺は会計を済ませ外に出た。
マリはもういなかった。時計を見たら20:45分を指している。
酒が入っていたとはいえ、放った言葉は俺が本当に思っていたことだ。
でも、とてもじゃないが良い気分とは言えない。いや、消えてなくなりたいとさえ思った。
駅までトボトボと歩いていると、誰かがこっちを見て手を振っている。
そうだ。今朝、桜ちゃんと約束したんだっけ。
「佐保君どうしたの?」
しょぼくれている俺を見て、少し大袈裟に笑いながら呼びかけた。
お互い食事は済ませたし、こんな俺を見て今から飲もうと言えるはずもなかったらしい。
二人無言で彷徨ったところ、モーテルを見つけた。
俺は何故か彼女の手を半ば強引に引いて入ろうとしたが、彼女は特に拒んだ様子を見せなかった。
その夜俺は家に戻らなかった。


そして俺は今、小さな駅のホームで、端の欠けたベンチに腰をおろして空を見上げている。
数日前一緒に夜を過ごした時、坂下桜は俺に言った。
「明後日発つことにしたの」
「朝9:00●●駅にいるわ」
何を言っているのか分からなかった。
気づいたら朝になり、彼女は既にいなかった。

昨日も今日も会社には行っていない。
どうしてここにいるのか、自分でも理由は分からない。
ただ、今の俺の拠りどころはここしかないような気がする。
時計は9時をとうに回っている。
彼女はまだ姿を見せない。