6:00
道の駅「庄和」で起床。
売店の裏に芝生のスペースがあったので、ふかふかの地面で寝る事ができた。
今日は日本一周を終え、東京へ帰る。
旅の最後の朝。
こうして道の駅で目覚めるのも、これが最後。
テントを畳むのも、これが最後。
これからはもう、トイレの水を汲む事もない。
暗くなってから寝床を探す心配もない。
雨の浸水に恐怖する事もない。
鳶の舞う海も。
ピヨピヨ鳴く信号も。
ヘルメットを被った中学生も。
もう日常的に見る事はなくなる。
それらの非日常が５ヶ月という月日の中で、自分にとっての日常になっていた。
そこから旅立ち、未知の世界に戻っていくような、そんな最終日の朝だった。
7:00
大量のトラックに見守られながら出発。
国道16号を川越方面へ走り、東京の真ん中を避ける形で八王子に向かう。
それでもさすが首都圏の道。
ものすごい交通量だ。
これまでいつもそうして来たように、何十台、何百台とトラックに先を譲りながら進む。
すると青看に八王子の文字が。
あとたったの41㎞で八王子に着く。
たったの41㎞で、この旅が終わるのだ。
通りすぎる景色の中に、これまで出会った人の顔が浮かんでは消えていった。
川越から16号を外れ、県道を進む。
ここから先は見慣れた景色。
もう青看を見る必要もない。
この先、どこで曲がれば良いかも全部わかっている。
走り慣れた道に、地元のナンバーの車。
もう景色はすっかり、旅先ではなくなっていた。
12:00
多摩湖で休憩。
バイクの横で、いつものようにコーヒーを淹れる。
荷物の積載にこだわり、余計なものを極限まで省いた今回の旅で、唯一と言っていい贅沢品がこのコーヒーセットだったかもしれない。
旅先で淹れるレギュラーコーヒーは、金銭的な意味だけでなく、いつの時でもこの旅をちょっとだけ豊かにしてくれた。
休憩を終えると、小さなダムの上を走り、いよいよ東京都に入る。
そして旅の最後に行きたい場所があった。
ここまでの長旅に耐えてくれたバイクに、最後にオイルを交換してやりたい。
という事で、武蔵村山市にある有名なバイク屋さんへ立ち寄る。
久しぶりにプロの手によるオイル交換を、側で見守る。
ドレンボルトを抜いた穴から、すっかり黒くなった油が流れ出した。
旅に出る前は、数ヶ月に1度で済んでいたオイル交換。
毎日バイクを酷使するこの旅では、おおよそ月に2回のペースでオイルを交換していた。
作業が終わってからも少し旅の話をしたり、バイクの各所を見てもらったりしながら、1時間ほどして店を出る。
さあ、いよいよラストラン。
あとはこの道を真っ直ぐ走って行くだけ。
ひたすら真っ直ぐ、30分ほどで自宅へとたどり着くのだ。
－道－
これまで数え切れないほどの道を通ってきた。
楽しい道もあれば、困難な道もあった。
何もない所で立ち止まってしまえば、それは何もない道になる。
どんなにゆっくりでも進み続けてさえいれば、それは意味のある道になる。
日本を一周したところで誰のためになる訳でもなく、何の意味もない事でしかない。
でもその無意味な旅が、無意味であればあるほど自分に力を与えてくれる。
道はどこまでも続き、そして繋がっている。
世界の果てなんて無いんだ。
てっぺんも無ければ、どん底もない。
やればできる。
行けばわかる。
ただそれだけを信じて、目の前の道を進んできた。
目の前に延びているのが、まだ見ぬ土地へ続く道から自宅へ続く道・・・
日本一周ゴールへの道へと変わった。
２０１４年１０月４日
１６：００
日本一周達成！！
今回、この旅で訪れたすべての土地を好きになる事ができた。
そして最後に、自分の住むこの東京を好きになって本当のゴールなのかもしれない。
その意味では、まだまだ旅は終わらない。
広い広い、この日本のすべての景色に
旅先で出会ったすべての人に
応援して下さったすべての人に
ありがとう
「原付日本一周の旅」
終
2014.10.04
■天候:晴れ
■走行距離:87㎞
■総走行距離:16198㎞
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