市中肺炎。 肺炎をなめると、大変なのだよ。 | 犬好き麻酔科医ブログ

犬好き麻酔科医ブログ

海外臨床留学麻酔Dog、カブリオレのお送りする、
最新論文から、医療の未来像まで。
日々精進。

Community-Acquired Pneumonia

いやーー、
助かるわあ。
病院代わって、呼吸器科がいないのに、肺炎がいる。
重症なのは僕が見るようになる可能性もあるな~、
なんて思ってたから、肺炎についての
NEJM Reviewが、出てくれて、色々助かるわあ。

結構長いんでね、、、
飯食ってから、見てね。。。。



俗にいう市中肺炎について。
肺炎は、特に高齢者の重大死亡原因の一つ。
市中、と分けるのは、
院内肺炎は、またまためんどくさいから。

、、、
抗生剤のない時代、
肺炎の95%以上は、肺炎球菌によるものだった。
現在、その頻度は下がり続け、
およそ、10-15%に減少した。
最も貢献したのは、ワクチンができたこと、
その次に、喫煙者が減ったこと、とされている。
逆をいえば、
ワクチン摂取が甘い国、喫煙者が多い国では、
以前として、高い原因菌として、君臨する。

それ以外の肺炎原因として挙げられるのが、
インフルエンザ桿菌、
ブドウ球菌、
モラクセラ・カタラーリス
緑膿菌、
その他のグラム陰性桿菌
です。

COPD患者、
特にステロイドを使用している場合、
肺炎は高リスクであり、
インフルエンザ桿菌、
モラクセラ、
が特に多くなる。

非定型肺炎とは、
マイコプラズマ、クラミジア肺炎をいう。
頻度は時・場所で、大きく変わる。
CPR法は、確定診断を容易にした。

もう一つ、
クロストリジウム肺炎もある。
特徴的な地方で、特定の環境で、
特徴的な流行をする。

いわゆる、oral flora、は、
痰のグラム染色で陽性となる、
嫌気性菌群などのことで、
原因となる菌が全く出なかった時のみ、
原因と考える。

インフルエンザウイルスが流行すると、
それのみで、肺炎も起こすし、
細菌の2次感染もおこす。

その他のウイルスも、肺炎を起こしうるものは多々ある。
その内のどの程度に、細菌の2次感染が影響しているかは、
わかっていない。

更に、世界中で新たなウイルス肺炎も報告されている。

それ以外にも、
Q熱、真菌、は、咳と、高熱を伴う肺炎となる。
それ以外にも様々な原因菌、ウイルス、が存在する。
が、、
市中肺炎の半分で、原因菌が確定されない、
ということもまた、事実だ。

実は、
市中肺炎と診断、入院した患者の17%が、
誤診であったというデータもある。
典型的症状、典型的Xp、典型的データ、
全てがそんな患者ではなく、
非典型的なことも良くあるために起こりうる。

重症な肺炎は、入院させ、抗生剤を一刻も早く投与することが
予後を改善する。
が、入院させ、抗生剤投与した患者が肺炎じゃないこともある、
という事実は、受け入れるべきこと。


経験的治療を始めるためにも
原因の特定をなす必要がある。
原因が特定されれば、
抗生剤を狭域に変更でき、
クロストリジウム腸炎や、
耐性菌、
Cost面など、
様々な利点のある、
確定的治療に変更できる。


グラム染色、痰培養、血液培養、
レジオネラ菌、肺炎球菌の尿検査、
マイコプラズマ、クロストリジウムのPCR、
などで、診断をする。
プロカルシトニン<0.1 μg per literは、抗生剤中止基準として使用できる。
(これが、CRP、WBCに勝るか、という情報を僕は十分持っていない。
(明らかに有効、というデータも少ないはずだが、、)

顕微鏡検査で、肺炎球菌の診断は、
抗生剤使用前、使用12時間以内の(へーー)
痰グラム染色があると
80%、可能らしい。

高濃度食塩水によるネブライザーを用いると、
痰の排出が促進され、
サンプル採取が正確になる。

肺炎球菌患者の血液培養は、
20-25%で陽性となるらしい。
しかし、これ以外の肺炎では、
原因菌は、これ以下の頻度でしか陽性にならない。

近年、最も進歩した診断法は、
尿ELISA法、だ。
細菌性肺炎の、 77 to 88%
非細菌性肺炎の、64%
レジオネラ菌の、74%
を診断できるという。

一方、PCRは、
ウイルス診断に、非常に有効だ。
マイコプラズマ、
クラミジア、
インフルエンザ、
などでは、
PCRが確定診断になる。
市中肺炎患者に行ったPCRで、
20-40%が、ウイルス陽性となる。
が、、、
この結果は、解釈に注意がいる。
ウイルス自体が肺炎の原因であるかもしれないが、
ウイルスは、細菌の2次感染を
促進させている因子に過ぎないかもしれないからだ。
約、20%の市中肺炎は、
細菌性+ウイルス性の肺炎とされている。

PCR陽性となる細菌にも、注意が必要だ。
通常、肺炎を起こす細菌は、
まず、上気道に、コロニーを形成後に、
ようやく肺に届く。
つまりは、
感染かもしれないし、コロニーに過ぎないかもしれない。


重症度を決め、
治療場所(外来、入院、ICU)を決める必要がある。
Pneumonia Severity Index (PSI)
CURB-65 score
Infectious Diseases Society of America and the American Thoracic Society (IDSA/ATS)
などが、有名である。

The SMART-COP scoreは、
肺炎で、ICU入院が必要かの予測スコア、
90%を超える高い感度を持つ。
また、PSIも、これに劣らず優秀な検査だ。


治療ガイドラインができ、
一定した治療が行われ、
入院患者への抗生剤早期投与は、予後を改善するとされる。
以前は、受診後6時間以内の抗生剤投与が目標とされたが、
適切な診断、治療、抗生剤選択は、
現在では、早期投与にまさるとされ、
まずは、正確な診断をするように、とされている。

外来患者の治療には、特別、診断を必要としていない。
それは、重症度が低く、コストもかかるからだ。
並存疾患や、最近の抗生剤投与歴がなければ、
IDSA/ATSガイドライン上、
マクロライド(25%程度に、強い抵抗性細菌あり)か、
テトラサイクイン
が推奨されている。

逆に、並存疾患あり、抗生剤投与歴ありだと、
ニューキノロン、か
βラクタム+マクロライド
が、推奨されている。

一方、イギリス、スウェーデンのガイドラインでは、
外来患者の抗生剤は、アモキシリン、ペニシリンを推奨している。

確かに、βラクタムを、まず使う背景も、わかる。
どの程度の、薬剤抵抗性が蔓延しているか不明だし、
一番の敵である肺炎球菌には、ペニシリン系の方が効果があるからだ。
ちなみに、肺炎球菌の15-30%は、マクロライド、テトラサイクリンに、
強い抵抗性をもつとされる。

更に、βラクタムが、効果少ないことがわかったあとで、
マイコプラズマを中心としt、非定型肺炎を狙い、
マクロライドを追加することはた易いことだ。

USAでは、インフルエンザ桿菌、カタラーリスも、
ペニシリン耐性菌が、30%程度出現しており、
重症感や、並存疾患がある場合は、
単純なペニシリン系より、
βラクタマーゼ阻害効果を持つものを選ぶように推奨されている。

入院が必要な肺炎にたいしては、
IDSA/ATSガイドラインでは、
経験的治療を行うことを推奨し、
βラクタム+マクロライド、か
ニューキノロン、
を推奨している。
中等度レベルの肺炎の90%は、これで治癒するとされる。

ICUが必要な肺炎には、
最小限のβラクタムに、
マクロライドか、ニューキノロンの併用が推奨されている。
が、
インフルエンザウイルスが流行していれば、
48時間以内でなくとも、
タミフルを推奨する。
で、簡易検査が陰性でも、インフルエンザウイルスの
PCRが陰性に出るまでは、治療を続ける。

細菌性の重複感染 もありうるため、
セフトリアキソン、
バンコマイシン、
リネゾリド、
は、
明らかに、感染がない、という状況以外(グラム染色陰性など)では、
併用されるべき薬剤である。
特に、
ブドウ球菌は、
ステロイド使用例やインフルエンザウイルス症例では、
常に疑うべきで、バンコマイシン、リネゾリド投与の
推奨にもなる。

セフトリアキソンは、ブドウ球菌のみならず、
肺炎球菌、インフルエンザ桿菌にもこうかがあり、
最終的には、
セフトリアキソン+バンコマイシンかリネゾリド、
というのが、
MRSA対策の薬剤となる。

COPD患者や、免疫低下患者では、
緑膿菌も、有力な原因菌となる。
抗緑膿菌βラクタム、
カルバペネム、
が、有力な選択肢となる。
ちなみに、
IDSA/ATSガイドラインでは、
2剤併用を、推奨している。
緑膿菌には、その価値ありってことっすな。


ガイドラインは、全てにフィットする抗生剤を示すのが
目標、
ではある。
かといって、、、
全てにフィットする状況があろうはずはなく、、、
要は、
治療が失敗する、
過剰過ぎる抗生剤カバーを避ける、
この2点を大きな目標として作られたものとも言える。


発熱、悪寒、咳、痰、胸痛、WBC上昇、
は、典型的細菌性肺炎の所見で、
通常、
入院、βラクタム投与の適応となる。

、、、
こののちしばし、
ガイドラインと、彼らの治療法の違いを
述べてるが、
それは省略、ね。


抗生剤投与期間は、
初期には5日、
その後、5ー7日に増加した。
が、
7日以下、8日以上
の投与期間で、予後に変わりなしというデータもある。
それにも関わらず、
実際は、10日、14日と投与されることも多い。
ブドウ球菌、グラム陰性菌の肺炎は、
破壊性が強い。
よって、心配で、長期投与してしまう、というわけだ。
一方、溶連菌は、2ー4週間、治療されるべきでもある。
空洞や、膿瘍が見られれば、数週の投与がいることもある。
反応が悪い症例は、
再評価を怠ってはならない。

マクロライドは、非定型肺炎にきくだけでなく、
炎症を抑える効果があるとされる。
細菌性肺炎治療に、
βラクタムに、マクロライドを併用すると、
合併症も、死亡も低下するとされるのは、
抗菌作用のみならず、
抗炎症効果も役立っているようだ。

また、スタチンにも、抗炎症効果がある。
観察研究では、肺炎で入院した人で、
スタチン内服者は、重症度が高いにもかかわらず、
予後が良好だというデータもある。
(が、VAPで、悪化など、解釈には注意)
両者ともに、RCTや、それに準ずるデータすらないが、
可能性として、有効かも。
が、、、
ここ数年、
アジスロマイシン内服と、
ちょっとした増加ではあるが、有意な、
心臓関連死亡の増加が、指摘されてることには、注意する。

また、肺炎自体が、
心臓合併症増加と関連し、
10-25%は、入院中に、何らかの
心臓イベントがおきるとされている。
(仮説としては、炎症に伴う凝固亢進、プラーク不安定)
Afや、心不全も、何らかの機序で増加する。

肺炎で入院した患者の30日死亡率は、10-12%とされている。
30日再入院は、18%とされている。
更に、一度肺炎で入院した人の死亡率は、
1ー5年単位で、同じ年齢層よりも高くなる。

、、、
ということで、まとめコーナーに。
どれだけ頑張っても、半分位で、原因菌(ウイルス)は、不明。
割合(細菌性、定型、非定型、ウイルス、真菌、、など)も不明。
肺炎は、予後に大きく関与。
新しい診断法、特に、PCRが、
原因の特定、
経験的でなく、確定的抗生剤投与に繋がるかが課題になる。
耐性菌の増加は、治療のレジメに影響を与える。
抗炎症効果が、肺炎に与える影響は今後調べねばならない。

以上。