春の広島県漫遊2日目。

 

尾道巡りの〆は国宝寺院。

 

市街地の東端にその寺院は佇んでいます。

 

◆浄土寺◆

(国宝)

 

街道沿いの石段を上がると、線路下のトンネル。

 

 

振り返れば、尾道の原風景。

 

山門

(国指定重要文化財)

 

室町時代前期の建立と伝わります。

 

山門をくぐれば、そこは国宝の園。

 

堂宇も境内地も国宝です。

 

御本堂

(国宝)

<由緒>

真言宗泉涌寺派 転法輪山浄土寺

創建:不詳

御本尊:十一面観音

開基:(伝)聖徳太子

寺格:大本山

札所等:中国三十三観音霊場九番

 

創建年代は不詳も、推古天皇24年(616)に聖徳太子により創建されたとも伝わる古刹。

 

鎌倉時代後期に再興され、南北朝時代には後醍醐天皇と足利尊氏の双方から寄進を受けるなど、時代の流れに翻弄されます。


近世においては、尾道の豪商が支えてきました。

 

因みに、寺紋は足利氏の"二つ引門"です。

 

 

現在の御本堂は鎌倉時代晩期、嘉暦2年(1327)の建立。

 

御本尊の十一面観音は秘仏で国重文。

 

大仏様と禅宗様を織り交ぜた折衷様の仏堂建築の代表作として、昭和28年(1953)、国宝に指定されました。

 

阿弥陀堂

(国指定重要文化財)

 

貞和元年(1345)再建の旧御本堂。

 

現御本堂と"並び堂"と称されます。

 

 

奈良の古刹を思わせる優美なる造り。

 

多宝塔

(国宝)

 

元徳元年(1329)建立。

 

瀬戸内海を代表する仏教建築として、誉れ高き国宝建築です。

 

 

多宝塔から境内を振り返る。

 

 

阿弥陀堂から望む。

 

青空に朱が映えます。

 

中国地方らしい、黄色の砂の境内。

 

護摩堂

 

正徳年間(1711〜1716)の建立です。

 

 

石仏大集合。

 

長い歳月を経た、人々の想いが詰まっているのでしょうね。

 

子安堂

 

宝篋印塔・納経塔

(国指定重要文化財)

 

右の納経塔は弘安元年(1278)の建立で、尾道最古の石造物。

 

宝篋印塔(足利尊氏供養塔)

(国指定重要文化財)

 

建武3年(1336)、足利尊氏が浄土寺で戦勝祈願をしました。

 

足利尊氏が白鳩に導かれたという、"白鳩伝説"が残っていて、浄土寺の眷属も鳩です。

 

北朝が勝利を収め、足利尊氏が室町幕府を開いたのは、その2年後のこと。

 

 

3月中旬、境内の桜が見頃でした。

 

庫裡

(国指定重要文化財)

 

享保4年(1719)の建立です。

 

 

眷属とされるだけあって、鳩で溢れる境内。

 

鳩の餌売り場に人が近付くと、一斉に集まって来ます。

 

代々、受け継がれてきた習性なのでしょうね。

 

 

境内上空を滑空する鳩の群れ。

 

さながら影絵の様な美しさ。

 

けれど、浄土寺の鳩はかなりアグレッシブなので、餌やりには要注意…

 

 

そんな境内の鳩とは真逆の可愛らしさ。

 

中世、瀬戸内海の要所だった尾道。

 

そこには、信仰や商いのみならず、政治や戦の軌跡も残っています。

 

時代の栄枯盛衰を見守り続けて来た古刹。

 

穏やかな空気の中の緩やかな時間でした。

 

2日目の漫遊を終え、宿へと向かいます。