石川県南端の加賀市大聖寺。

 

大聖寺藩の城下町として栄えた地は、あの九谷焼発祥の地でもありました。

 

そんな大聖寺には九谷焼の美術館があります。

 

◆九谷焼美術館◆

 

大聖寺駅からもほど近い公園の中に、その美術館はあります。

 

*入館料¥560

 

江戸時代前期、大聖寺藩領の九谷村で良質な陶石が見つかり、佐賀有田で技能を習得した後に藩の殖産政策とされたのが、九谷焼の始まりです。

 

一度は廃絶してしまいますが、文化4年(1807)に加賀藩が再興させて、明治時代に輸出品としても人気を集め、現在の九谷焼ブランドへと繋がっていきました。

 

それでは、目眩く九谷焼の世界へ。

 

山水家屋図青海波文平鉢

 

何とも艶やかで、メタリックにも近い色味が秀逸で、目が釘付け。

 

江戸時代前期の"古九谷"に分類される作品です。

 

梅笹に樹木葉図平鉢

 

こちらも古九谷の作品。

 

古九谷は青を基調とした絵付から、"青手"とも呼ばれるそうです。

 

江戸時代前期にこの色彩感覚を持っていた事が驚きです。

 

菊図輪花鉢

 

青・蒼・碧、緑・碧・翠…

 

2つの色が織り成す、色彩の魔法。

 

鶴丸に唐草文大香炉

 

焼物の絵柄の定番、鶴。

 

ミラーで底や背を見られるのも楽しいですね。

 

私の酒器コレクション棚も背面ミラーで、逆さに飾ったりして楽しんでいます。

 

札にある松山窯とは、加賀藩が九谷焼を再興した時代、嘉永元年(1848)に大聖寺で開かれた窯元。

 

この頃の九谷焼を"再興九谷"と呼ぶそうです。

 

山水家屋図平鉢

 

古九谷の作風を継承しつつ、ビビットさを抑えた感じ?

 

札に"棟方志功旧蔵"とあるのも驚き。

 

色絵李白観山図隅切角皿

 

人物絵がどこかユニークな古九谷の皿。

 

まるで、そこに物語が秘められているような。

 

見る角度によって縁の色合いや輝きが変わって、見飽きる事がありません。

 

 

書院造の座敷を再現したコーナーに九谷焼が展示されています。

 

和の空間を素敵に彩っていますね。

 

作:北出不二雄

 

巨匠・北出不二雄(1919〜2014)の作品。

 

北出不二雄はペルシア陶器の研究家としても知られます。

 

壺に中東の空気を感じるような?

 

金繍手瑞鳥図飾瓶・金繍手双蝶図飾瓶

作:北出塔次郎

 

北出塔次郎(1898〜1968)は北出不二雄の父で、九谷焼に新風を吹き込んだと言われる名工。

 

複雑な模様は古九谷には無かった新しさ。

 

江戸時代後期、古九谷に代表される"青手"の真逆の、赤を基調とした作風が生まれした。

 

 

その様式は赤の上から金で文様を描く事から、"赤絵・金襴"と呼ばれました。

 

牛車人物図大瓶

作:竹内吟秋

 

竹内吟秋は明治時代の陶芸家。

 

繊細の朱の絵物語。

 

玉取獅子図香炉

作:初代中村秋塘

 

中村秋塘は明治大正期の陶芸家。

 

ちょこんと鎮座した獅子が可愛い。

 

鳥に楓図平鉢

作:相上芳景

 

相上芳景は昭和期の赤絵・金蘭の匠。

 

秋を描いた作品は赤絵・金蘭ならでは。

 

 

館内2階はギャラリー兼喫茶。

 

 

作品も購入出来ます。

 

次回は、ここで良き作品に出会って持ち帰りたいものです。

 

企画展示室

 

近代的な九谷焼が展示されていました。

 

北前舟皿

作:北村隆

 

北前船の作風で知られる、現代の巨匠。

(ねぶた師の巨匠と同姓同名ですね)

 

色絵細密鉢

作:福永幾夫

 

点で描かれた絵柄が、繊細な宇宙を生み出しているかのようです。

 

彫釉彩蓮に翡翠文陶額

作:山口義博

 

温かみのある自然の一瞬。

 

優しく淡い色使いが良いですね。

 

九谷焼の魅力にどっぷり浸かって、満面の笑みで美術館を後にしました。

 

 

宿泊したアパホテル大聖寺駅前のロビーにも、北村隆作品が飾られていました。

 

駅からタクシーに乗り、漫遊最後の地、北前船集落へ向かいます。