雇用統計の悪化は何が原因か

はい。今回の米国9月雇用統計の悪化は、単純に「米国経済が急に崩れた」というより、雇用市場がかなり慎重になっていることが背景と見るのが自然です。

9月は非農業部門雇用者数が**+2.9万人にとどまり、予想の約9万人を大きく下回りました。失業率も4.1%→4.2%**へ上昇しました。さらに7・8月分も合計6万人下方修正されています。

なぜ雇用が弱くなったのか

大きく分けると、私は次の4つが重要だと思います。

① 企業が「採用を増やさない」状態になっている

現在の米国は「大量解雇」よりも、採用を抑える「低採用・低解雇」状態に近いです。

つまり、

景気が悪いから大量に人を切る
↓
という段階ではなく、

「今いる社員で何とかやり、積極的な新規採用は控える」

という企業が増えています。APもこの状態を「low-hire, low-fire」と表現しています。


② AIによる省人化・生産性向上

これは今回だけの原因とは断定できませんが、かなり重要な構造変化です。

特に、

  • IT
  • 情報サービス
  • 事務職
  • ホワイトカラー
  • 金融・専門サービス

などでは、AIによって「人を増やさなくても仕事を処理できる」企業が増えています。

今回も情報産業では雇用減少が続いています。

 

これは*「AI投資が進むほど、企業利益は増えるが雇用は増えにくくなるのでは?」**という話とかなりつながっています。


③ 高金利の影響が遅れて出ている

企業は高い金利環境の中で、

「設備投資や借入を増やして事業を拡大するより、今は効率化を優先しよう」

となりやすい。

その結果、求人は減りやすくなります。

実際、8月の米求人件数も約708万件へ減少しており、採用市場の勢いが弱まっています。


④ 移民政策による労働供給の変化

ここは少し特殊です。

移民流入が減ると、企業側から見ると「働き手そのもの」が減ります。そのため、雇用者数の伸びが弱くても、失業率が一気に上がらないことがあります。

今回も失業率は4.2%とわずかな上昇にとどまっています。


そして、今回かなり重要なのが「賃金」です

賃金上昇率も前年比3.1%程度で、インフレ率を下回っています。

つまり今の米国は、

雇用 ↓
賃金上昇 ↓
求人 ↓

という方向に進んでいます。

これはFRBにとっては非常に重要です。