これからの世界経済はどのように変化していくか、また、なぜその可能性が高いか
これからの世界経済を一言で言うなら、
「低成長・高債務・AIによる生産性革命・インフレ再燃リスクが同時に進む、かなり変動の大きい時代」
になる可能性が高いと考えます。
特に重要なのは、「世界全体が一斉に成長する」のではなく、国・企業・産業によって勝ち負けが大きく分かれる経済になることです。
現在のIMF見通しでも、世界成長率は2026年3.0%、2027年3.4%と、急激な世界不況ではないものの、過去の平均から見ると力強い成長とは言いにくい水準です。
最も可能性が高いと考える「7つの変化」
① 世界経済は「低成長」が基本になる
先進国では人口減少・高齢化・政府債務の増大が重しになります。
米国も強いものの、欧州はさらに弱く、中国も成長率が徐々に低下する可能性が高い。
一方でインド、東南アジアなどは比較的高成長を維持するでしょう。インドについては2026年度6%台の成長予想が並んでいます。
つまり、
米国・日本・欧州=成熟経済
中国=減速する大国
インド・ASEAN=成長エンジン
という構図が強まります。
② 最大の変化は、やはりAIです
ここは非常に重要です。
AIは単なる「ITブーム」ではなく、
労働力そのものを増やす技術
になりつつあります。
BISによると、世界の主要5社だけで2025~26年にAIへ1兆ドル超を投資するとされ、世界のAI投資は2030年に4兆ドル規模まで膨らむ可能性があります。
AIによって、
- ソフトウェア
- 半導体
- データセンター
- 電力
- 光通信
- 半導体製造装置
- ロボット
- 医療
- 金融
- 防衛
まで設備投資が広がっていきます。
だから私は、AI投資は今後数年間、世界経済を支える最大の設備投資サイクルになる可能性が高いと見ています。
③ しかし「AIバブル」も一度は調整する可能性が高い
ここが非常に重要です。
AIそのものが嘘なのではありません。
むしろ、
「AIの経済効果は本物。しかし、株価と設備投資が先走る」
という可能性があります。
BISも現在のAIブームについて、巨大な投資規模、割高な株価、AI関連企業への市場集中、さらに債務・プライベートクレジットによる資金調達を金融安定上のリスクとして指摘しています。
これは1990年代末のインターネットと非常によく似ています。
インターネットは本物だった。
しかしドットコム株は暴騰し、その後暴落した。
AIも、
AI革命 → 過剰投資 → 株価調整 → 淘汰 → 本格的生産性革命
という順番になる可能性があります。
④ 世界は「グローバル化」から「ブロック化」へ
これもかなり大きな変化です。
米中対立、半導体規制、ロシア・ウクライナ、中東情勢などによって、
「一番安い国から買う」
という従来型グローバル化が弱くなっています。
代わりに、
「多少高くても、安全な国から買う」
という考え方が強くなる。
その結果、
- 半導体
- 防衛
- エネルギー
- 食料
- 重要鉱物
- AI
- 通信
などでは、各国が自国・友好国の供給網を作る方向へ進むでしょう。
これは日本企業にとって、実はかなり大きなチャンスです。
⑤ インフレは「完全には戻らない」
私はこれも重要だと思っています。
2020年代前半のような急激なインフレは落ち着いても、
2010年代のような「ほとんどインフレがない世界」には戻りにくい
でしょう。
理由は、
- 人手不足
- 高齢化
- 脱グローバル化
- 防衛費増加
- AI・データセンターの電力需要
- エネルギー投資
- 財政赤字
です。
IMFも2026年は世界インフレ率が一時上昇した後、2027年には低下すると予測していますが、エネルギー・地政学リスクによる再上昇余地は残っています。
つまり、
「インフレ→金利上昇→景気減速→インフレ低下→利下げ」
という循環が以前より激しくなる可能性があります。
⑥ 日本は「意外に強い国」になる可能性がある
私はここをかなり注目しています。
日本は、
- 人口減少
- 高齢化
- 巨額政府債務
という弱点があります。
しかし同時に、
- 半導体材料
- 半導体製造装置
- 精密機械
- ロボット
- 光通信
- 電子部品
- 防衛
- 医療
- AI関連インフラ
- コンテンツ
などに非常に強い。
そして日本では長期間続いたデフレから、
「物価が上がる → 賃金が上がる → 設備投資が増える」
という経済へ転換する可能性があります。
これは日本株を見る上でかなり重要です。
⑦ 最後に「AI+ロボット」が人間の労働を変える
私は10年程度の時間軸では、ここが最大の変化になると思っています。
AIだけなら「頭脳労働の自動化」です。
しかし、
AI+ロボット
になると、
- 工場
- 倉庫
- 建設
- 農業
- 物流
- 介護
- 医療
まで変わります。
つまり、
「人間が不足するから経済成長できない」
という問題を、AI・ロボットが部分的に解決する可能性があります。
BISも、AIによる特定業務の生産性向上はかなり大きい一方、雇用への影響や再教育が重要になると指摘しています。
では、2030年前後の世界を予想すると
私はこんな姿を想像しています。
| 分野 | 2030年前後の可能性 |
|---|---|
| 世界経済 | 低~中成長 |
| インフレ | 以前より高め |
| 金利 | ゼロ金利時代には戻りにくい |
| AI | 最大の成長投資分野 |
| 半導体 | 戦略物資化 |
| 電力 | 非常に重要 |
| 防衛 | 長期的拡大 |
| 中国 | 成長率低下 |
| インド | 世界有数の成長エンジン |
| 日本 | 製造・技術力が再評価 |
| 株式市場 | AI関連と旧来産業の格差拡大 |
そして面白いのは、
「AIだから全部上がる」ではない
ことです。
AI投資が拡大すると、むしろ
電力 → 発電設備 → 電線 → 光通信 → 半導体 → 半導体製造装置 → 素材 → 冷却 → 建設
という巨大な産業連鎖が生まれます。
現在の世界経済は、すでにAI関連投資が戦争によるエネルギーショックを一部相殺している状態です。IMFも「AI関連需要が世界の成長を支えている」としています。
ただし、これから最も警戒すべきなのは、
「AIによる本物の成長」と「AI株の過剰評価」が同時に存在すること
です。
私は今後5~10年を、単純な「好景気・不景気」ではなく、巨大な産業構造の入れ替え時代になると考えています。
そしてその場合、株式市場では「指数を持っていればいい」という時代から、勝ち組産業を選ぶことの重要性が非常に高くなると思います。