日本版トラス・ショックは起きないか
「日本版“Trussショック”(英国のTrussショックに似た市場ショック)」が起きる可能性について、**“起き得るリスク”と“起きにくい理由”**の両面から、今の状況を見てみるのが有益だと思います。以下、最近の議論・状況を整理しました。
✅ 日本で“似たようなリスク”が指摘されている理由
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2025年以降、高市早苗 新政権による大規模な財政支出・補正予算の投入が進んでおり、その財源としての国債発行が拡大しています。
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その結果として、長期国債の利回り(=長期金利)が上昇。国債価格の低下、つまり債券市場の不安定化が進んでいます。
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また、円安や株高、債券利回り上昇という「通貨・株価・債券」の同時動きが、過去のTrussショックのような “トリプル安/混乱” を引き起こす可能性として、金融市場やメディアで警戒されてきました。
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つまり、「歳入の裏付けがあいまいな大規模財政+債券市場の不安定化」の構図は、過去イギリスで起きた混乱と似た構造になりうる、という警戒があります。
✅ 起きる可能性がある――ただし“必ず”ではない理由
一方で、直ちに英国型の大混乱が起きるとは言い切れない、との見方も多くあります:
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世界的な資金フローや投資家の行動には多様性があり、過去のような“一斉売り”が起きるとは限らない。たとえば、投資運用会社PIMCOの幹部は、「市場の混乱は事前に予見されていれば防げる」と述べ、再現を懸念しつつも過度の悲観は避けるべき、との立場を示しています。
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また、英国でのTrussショックは「無理な減税」「歳入見込みの甘さ」「マーケットの信認崩壊」が併せて起きたため発生しましたが、日本では「減税」だけでなく「戦略的投資」「物価・賃金対応」「子ども・生活支援」など、ある種の“社会対策+経済対策”を含む支出という性質があります。これがある意味の“裏付け”と見なされれば、単なる無秩序な財政拡大とは市場の受け止め方が異なる可能性があります。
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さらに、通貨・債券・株式が同時に暴落する“トリプル安”という構図が成立するかは、「市場の心理」「海外投資家の動向」「世界経済の状況」に大きく左右されるため、日本国内の事情だけでは予測が難しい、との慎重な見方も根強いです。
⚠️ 日本版“Trussショック”が起きたときのリスク
もし「トラス型ショック」が起きれば、起こりうる影響として以下が懸念されます:
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国債価格の急落 → 金利急上昇 → 借り入れコスト上昇 ⇢ 企業や家計の負担増
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円安の急激な進行 → 輸入品・エネルギー価格の急騰 → 物価高・生活コストの上昇
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株価下落 → 投資や消費の萎縮 → 経済全体の停滞
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市場の混乱 → 海外投資家の資金引き上げ → 為替・国債・株式の連鎖的な下振れ
このような“トリプル打撃”が同時に来れば、家計や企業、金融機関を含めて広範囲に影響が及ぶおそれがあります。
🎯 でも“完全な再現”は難しい――
「日本で“ある程度のショック”は起きる可能性はあるが、“英国のTrussショックと同じ規模・形”になるとは限らない」という線が現実的だと思います。
その理由は、「日本の経済構造・財政運営・国際資本市場での位置づけ」が、英国当時と異なるためです。また、国内外の議論がそれを警戒し、同時に「市場信認の維持」「財政の透明性」「政策の裏付け確保」というガードも機能する可能性があるからです。