大学生の時は誰もが言うように、お金はないけど時間はある。

時間があるので、お金はないけどどっかに行きたい。できれば行ったことがない遠くへ行きたい。道路がつながっている限り、時間がかかっても走っていれば、いずれ到着する。という欲求を満たしてくれる乗り物がバイクだった。

ガソリンを入れたら好きなときに好きたところに連れて行ってくれる最高の乗り物。

ガソリン代さえ作ることができたらどこでも行けるので、あの頃はガソリン代以外はほんとにお金をかけられないツーリングをしてた。

 

今回は、温泉で話したらウケたエメロンシャンプーの話なんだけど、なんでこの話がウケたのかは今でもあんまり良くわかってない。あまりにも貧乏すぎて哀れに思ってくれたのかも。

 

1983か84年ぐらいの夏、ひとりで四国にツーリングに行った。四万十川の沈下橋の写真見て決定。バイクであの橋を走ったり橋に腰掛けて足をブラブラするとか、片岡義男の小説みたいなことをしてみたかった。

乗ってたバイクはXL250R。前輪23インチのリア2本サスの次に出たやつで、フェンダーとタンクが赤でシートが黒、プロリンクサスでスイングアームに目立つプロリンクのロゴシールが張ってあるやつ。バイト先の店長が何回か転倒して、タンクとハンドルやミラー、レバーとステップとサイドカバーやマフラーか凹んだり折れたり曲がったりしたやつを格安で譲ってもらった。

跨ると丸いタコメータとスピードメータ、真ん中の下に速度警告灯。両方のメーターにしっかりと傷があってちょっと変な方向に向いてたけど250は高速も乗れるし車検もないということで、すごく嬉しかった。買ってすぐに上野のコーリンに部品とか買いに行って、お店の人に直し方教えてもらったなぁ。

<テールバックにはゴムのツーリングネットとか入れてた>

 

移動は当然下道。岡山か広島から船で行った(その後で神戸から淡路島を高速で橋をわたって行ったりして四国の記憶が交じってる)。讃岐うどんは醤油かけるだけでめっちゃうまい、高知の人は酒をすげー飲む、というのも思い出だけど、最も強烈な記憶は、日差しが死ぬほど強くて痛くて暑いことと、湿気がすごかったこと。

当時のバイク用品といえばヘルメットとグローブしか持ってなかった。このときは10日ぐらいのツーリングだったので、Tシャツとトレーナーと薄いジャケット、Gパン、スニーカーがアパレル関連。タオルと歯磨きセット、エメロンシャンプー、軍手、ハサミ、EPIのガスコンロ、アルミの食器セット、ライトニングボルトのサンダル、タオルケットがキャンプ用品。あと全国道路地図と懐中電灯。これらをCOURSE?の黒い防水袋に入れてサンダルだけわざと袋から出してリアシートに積むといスタイル。サンダルを見えるように積むのは、私は旅慣れています、と外部にアピールできていると信じてたからでした。恥ずかしー。

 

高知はとにかく日差しが半端なく強力で暑い。このころボーダーのTシャツが流行ってて、たしか4本ぐらいの横しまの長袖のTシャツ着てたんだけど、日焼けでこのしましまの跡がくっきりと背中に付く日差しだった。

当然暑いので汗もかくし海も近いので潮風にもあたってGパンや髪の毛も塩臭くなる。仁淀川で泳いででもシャツやGパンにしみた汗の匂いは完全に取れない。

どうしてたか、というと夕方に公園の水飲み場や公衆トイレの手洗いなんかで全身を洗ってた。ひどい話だ。

サンダル履きで水飲み場にいって蛇口の向きを上にして水を頭からかぶって全身をぬらしたあとエメロンシャンプーで頭をあらってから同じくエメロンシャンプーで着ているTシャツと履いているGパンを上からこすって洗う。Tシャツの背中は前面を洗ったあと手の袖の部分から手を抜いて首から前後を回し、背中の部分を前にして洗えばOK。Gパンのおしりや後ろは手が届くので簡単に洗えるしね。これでシャンプーとボディソープと洗濯が一度で完了。そのあとTシャツを脱いで絞る。Gパンは脱いで絞ったあと振り回して脱水。頭はすぐに乾くし、衣類はバイクで15分も走るとだいたい乾く。Gパンのおしりだけはスタンディングで走る必要があるけど。

このエメロンシャンプーは安かったのでツーリングはいつもコレ。

今から思うと、シャンプー、ボディソープ、衣類の洗剤、台所洗剤、ハンドソープを一本でやってたことになる。原料は同じ界面活性剤だし添加剤がそれぞれ違うだけなので、問題ないと思ってた。今も問題なかったと思ってるんだけど、本当は問題あったのかな。

<この青い方を使ってた>

 

宿は、とにかくお金がないので基本は野宿というか外。

なんで泊まるだけで3000円とか払う必要があるのか、もったいないだろ、という計画だったのでバス停とか公園のベンチとか公民館の軒の下とか橋の下なんかで寝てたんだけど、虫だけはほんとにまいったなぁ。蚊取り線香を焚いいても蚊にバンバン刺されるし、変な虫がはってきてムズムズするしで、なるべく海の近くで風の吹いてるところで寝るようにしてた。虫除けシートのついてるテントがほんとに羨ましかった。夜寝られなかったときは昼に屋根のあるところで寝てた。で、夕方になると水飲み場でエメロンシャンプーというルーチン。

 

トラブルが全くなかったツーリングの思い出って、よかったな・たのしかったな、の印象ぐらいしか思い出さないけど、パンクしたとかコケたとか故障したとか大雨に降られたとか、トラブルがあった場合は当時のことを映像とともにはっきりと覚えてる。

20代のころは友だちとツーリングに行って、トラブったりして予定通りに先に進めないことがあると、なんだよー って思ってたけど、今となってはいい思い出になってるので、ツーリングでトラブルが起こるってことは、怪我したりしない限り、将来思い出して話のネタが得られた貴重なツーリングになって良かった、と喜ぶのが正解なんだと思う。

この四国のツーリングもきれいな景色はあんまりおぼえてないけど、頭の上から降り注ぐ痛いほどの日差しは今もよく覚えている。

 

ツーリング先でバイクが壊れるのは最悪だけど、強烈な思い出は残る。

ただ、壊れるのがわかっているバイクでツーリングに行くのは、バカなのでメンテ頑張ろ。