ローコスト・ハイエンド音質をリードする

松島千治オーディオ道場

 当オーディオ道場では、自分の耳で音を聞いて生演奏と明らかに区別のつく音は良しとしません。それは、弦でもブラスでも打楽器でもボーカルでも、あらゆる楽器についてです。本当に良い装置は、音源を選びません。
 ふんだんにお金を掛ければ、比較的良い音を実現しやすくなります。でも、それではコストもかかるし、達成感も限定的です。当道場では、トータルコスト10万円程度で、場合によっては100万円以上の装置と同等かそれ以上の音を出すことを目安としています。
 私が高いものをあまり好きでないもう一つの理由は、高いものは総じて大きいからです。「そこまでやらなくても良い音を出せるのでは?」というのが当道場の考えです。
 多大なコストをかけずにコンパクトに良い音を出す。これこそが、オーディオの醍醐味だと考えているからです。但し、自作したりメーカー製品の内部を改造したりすることもあります。
 なお、松島千治のオーディオ道場では、読者のオーディオマニアの皆さんになるべく早く原音に近い満足のできる音に到達して頂けることを願って、次のリンク先のブログ記事を用意しておりますので、ご興味のある方には是非御一読頂けることをお薦めしています。

 

 また、当道場では読者の方のいかなる損害についても責任を負いませんので、実施する場合は自己責任でお願いします。
 
松島千治のプロフィール
千葉大学工学部電気工学科を1981年に卒業し、2012年に開発スペシャリストを務めていた電子機器や電子部品の某メーカーを退社。その間、プリンタ,スキャナ,液晶パネル,画像処理,静電タッチパネル,3次元座標入力,GPSベースバンド,ワイヤレス給電などの開発に携わる。高校生のころからスピーカー自作やメーカー製のアンプの改造などを行ないはじめて、オーディオ暦40年。

超高音質! 音響用コンデンサの抵抗素子による新制震方法 2020.7.26

 


 オーディオ装置において、音質を劣化させる主な要因の一つにコンデンサが挙げられます。カップリングコンデンサやスピーカーのネットワークなどに用いられるコンデンサでは、音質への影響が大きいようです。従来、コンデンサの音質改善策として、コンデンサの振動を力学的に抑えるために、糸などで巻き締めてエポキシなどで固める方法が知られています。私は、このような構造的な加工が得意ではないので、電気的に振動を抑える簡単な回路を付加する方法を考えて実施したところ聴感上大きな効果が得られましたので、ここで紹介させて頂きます。なお、今回音質改善したコンデンサは、ASC社のX335メタライズドPP(ポリプロピレン)フィルムコンデンサです。

 何かを参考にした訳ではないので、特許出願したい気持ちもありましたが、従来の周波数特性の微調整回路と目的や作用が全く異なると言う特徴はあるものの、構成上の区別がつかないことと、市場規模がさほど大きくないことから、ブログでの公開と言う形にすることにしました。もし、前例をご存知の方がいらっしゃいましたら、お知らせ下さい。先行例として追記したいと思います。また、当ブログを参考にして実施した内容を公表する際には、当ブログを引例として明記して頂けますようお願い申し上げます。


写真1 
 

音質劣化の推察メカニズム

 まず、コンデンサでどうして音質が劣化するのか?そのメカニズムについての私なりの推察を簡単に説明します。コンデンサの構成要素には質量と弾性があるため、オーディオ帯域の共振系になっています。コンデンサを爪などで軽く叩くと音がするのはそのためです。また、コンデンサに時間によって変化する音声信号が印加されると、コンデンサに蓄えられる電荷間のクーロン力や、誘電体に印加される電圧による電歪現象による力が変化します。そこで、コンデンサの共振系と音声信号の周波数が近づくと、共振することになります。この共振によって、電極間距離が変化して、静電容量が変化します。静電容量が変化すると、ハイインピーダンス系では電圧の変化になり、ローインピーダンス系では電流の変化となって、音声信号に共振が重畳されるものと考えられます。但し、ここで言う共振系とは、必ずしも特定周波数に限るものではなく、Qが低くてやんわりと残響を生じる媒体かもしれません。
 

共振対策

 一般的に、共振を回避するための方策として、共振周波数を問題にならない周波数にずらす方法と、共振のエネルギーを熱に換える方法とがあります。
 共振周波数をずらす方法は、例えば、従来の糸で巻く方法です。圧力を高くして弾性係数を高くして、共振周波数を可聴帯域より高くする方法です。あるいは、楽器やスピーカーのエンクロージャーの形状を斜めにするなどして共振周波数を分散させる方法などです。
 共振のエネルギーを熱に変換する方法は、機械的な方法と電気的な方法があります。機械的な方法では、摩擦や粘性によって振動を抑えますが、コンデンサの内部の振動に対して後から適用することはできません。これに対して、今回紹介させて頂く方法は、電気的に外付け抵抗を用いて熱エネルギーとして共振を吸収させます。振動を電気抵抗で吸収すると言う意味においては、ステルス戦闘機などでレーダーからの電磁波を電気抵抗素材により吸収させるのと同じようなことです。

制震回路

 

図1
 

 上の図1は、音質改善対象のコンデンサC1に、制震回路を付加したものです。コンデンサC1での振動により発生する電気的エネルギーを熱に変換するため、コンデンサC1に並列に抵抗Rを付加します。但し、ただ抵抗Rを付加しただけでは、直流が通過してしまうため、特性が大きく変化してしまいます。そこで、抵抗Rには、直列に別のコンデンサC2を付加して直流をカットするようにします。

 抵抗Rの値は、大きすぎて無限大の場合は付いていないのと同じだし、小さすぎて0Ωの場合にはコンデンサC1とC2が並列につながっているだけで振動のエネルギーを熱に変換できなくなってしまうので、その間に最適な値があることになります。抵抗Rの制震効果の最適値は、コンデンサC1内部の共振の機械的なインピーダンスを電気的に換算した値と考えられます。

 実際には、抵抗RとコンデンサC1,C2の値は、制震の観点と全体としての周波数特性の両方を満足させるものでなくてはなりません。それを計算で求めるのは結構な手間なので、実験で決めることになります。本来であれば、音を聴きながら抵抗値や静電容量を変えてみるのが良いのかもしれませんが、面倒くさがりな私は、取りあえず適当に試した値で十分満足の得られる結果になったので、今回はそれで良しとしました。


 コンデンサC2の値は、コンデンサC1で耳障りとなる音の周波数が低インピーダンスで通過する値であれば十分です。コンデンサC2には直列に抵抗Rがついているため、コンデンサC1のインピーダンスが小さくなる高域ではコンデンサC2には殆ど音声信号は通過しませんが、減衰域では、容量と抵抗値相応にコンデンサC2にも音声信号は流れますので、コンデンサC2の容量が大きくなると、全体としての周波数特性や音質への影響も大きくなります。
 また、コンデンサC2についても、コンデンサC1と同様に、抵抗Rにより制震されて音質改善されると考えられますが、ある程度音質の良いコンデンサを使わないと、全体としての音質にも若干の悪影響を及ぼします。

 

実施例
 それでは、具体的に私が実施した例について、下の図2に示す回路図を基に説明します。この実施例は、スピーカーのツイーターに直列に挿入するコンデンサの制震化によって、音質を大幅に改善したものです。


図2
 

 この実施例で用いた各抵抗とコンデンサは、次の通りです。

C11 ASC X335 400V 
C12 Mundorf MCap Classic 630V
C13 ERP MKP1845 630V
C2  Wima FKP 2 63V PPフィルム
R    Dale NS-2B(3W) 無誘導巻線

 並列に接続されたコンデンサC11~13は、3つ合わせて図1のコンデンサC1に対応するもので、すべてメタライズドPP(ポリプロピレン)フィルムコンデンサです。3種並列コンデンサで高音質化を図りましたが、若干の音のカスレが残っていました。単独での音の特徴からカスレを発生しているのは、おそらくコンデンサC11のASCのX335と思われます。このコンデンサC11は、存在感のある音が特徴で、容量的にも支配的なメインのコンデンサです。解像感に特徴のあるMCapClassicと中高域が綺麗に出ると言われているERPのMKP1845は、補助的に付加したものです。

 コンデンサC2と抵抗Rの値は、後から付加したため、全体の周波数特性に大きな影響を与えないことを優先してきめました。コンデンサC2の値は、メインのコンデンサC11の1/10の容量0.1μFで試してみました。抵抗Rの値は、高域でのコンデンサC1のインピーダンスより充分大きい値として、20Ωを選びました。全体の周波数特性への影響は、シミュレーションの結果、中域に若干の上昇がある程度に抑えられました。
 コンデンサC1,C2と抵抗Rの成すループのCR時定数は、1.8μsとオーディオ帯域よりかなり短いのですが、聴感上は気になっていたカスレが完全になくなって、大人しい自然な音になりました。制震効果の観点からは、抵抗RとコンデンサC2の値の許容範囲は意外に広いような気もします。

 なお、コンデンサC2には、ルビコン社MPSメタライズドPPフィルムコンデンサ250V0.1μFも試してみましたが、こちらは音に濁りがあったため、不採用としました。WimaのPPフィルムコンデンサは、安価ですが、噂に違わず良い音のようです。コンデンサC2は容量も小さく抵抗Rがついているので、音質への影響は軽微ですが、その影響が気になる人は元のコンデンサC1と同じシリーズから選べば無難でしょう。

 今回抵抗Rを付けた制震による音質改善効果により、もしかしたらコンデンサC12やC13は音質改善としての意味がなく不要になっているのかもしれませんが、わざわざ外して特性を合わせ直すのも面倒なので、そのままにしています。


 なお、今回紹介させて頂いたスピーカーは、当「松島千治のオーディオ道場」の以下のブログで紹介したスピーカーにて実施して、聴感上明らかな音質改善効果を確認したものです。

 

 さらに、回路定数は異なりますが、以下に示す当「松島千治のオーディオ道場」の他のブログで紹介したスピーカーでも、ツイーターに直列に挿入するコンデンサに制震回路を付加して、聴感上明らかな音質改善効果を確認しました。

 

 

適用範囲 また、上述の実施例は、スピーカーのツイーターに直列に挿入するコンデンサを制震して音質改善する場合についてですが、スピーカーに限らず、幅広く通常のカップリングコンデンサやフィルターなどについても同様の効果が期待できるものと考えられます。

 今回のブログを、最後まで読んで下さりありがとうございます。プログの分類タイトル「松島千治オーディオ道場」では、他にも様々な音質改善方法を紹介しておりますので、ご覧いただけると幸いです。

 

 また、当ブログ「未知を既知に 自由研究家 松島千治」では、この他にも様々な研究成果などを紹介しておりますので、ご覧いただけると嬉しいです。

 

 最後に、お気軽にご感想やご意見を残して頂けると嬉しいです。

 

以上 2020.7.26