ローコスト・ハイエンド音質をリードする

松島千治のオーディオ道場

 当オーディオ道場では、自分の耳で音を聞いて生演奏と明らかに区別のつく音は良しとしません。それは、弦でもブラスでも打楽器でもボーカルでも、あらゆる楽器についてです。本当に良い装置は、音源を選びません。
 ふんだんにお金を掛ければ、比較的良い音を実現しやすくなります。でも、それではコストもかかるし、達成感も限定的です。当道場では、トータルコスト10万円程度で、場合によっては100万円以上の装置と同等かそれ以上の音を出すことを目安としています。
 私が高いものをあまり好きでないもう一つの理由は、高いものは総じて大きいからです。「そこまでやらなくても良い音を出せるのでは?」というのが当道場の考えです。
 多大なコストをかけずにコンパクトに良い音を出す。これこそが、オーディオの醍醐味だと考えているからです。但し、自作したりメーカー製品の内部を改造したりすることもあります。
 なお、松島千治のオーディオ道場では、読者のオーディオマニアの皆さんになるべく早く原音に近い満足のできる音に到達して頂けることを願って、次のリンク先のブログ記事を用意しておりますので、ご興味のある方には是非御一読頂けることをお薦めしています。

 

 また、当道場では読者の方のいかなる損害についても責任を負いませんので、実施する場合は自己責任でお願いします。

 

 
松島千治のプロフィール
千葉大学工学部電気工学科を1981年に卒業し、2012年に開発スペシャリストを務めていた電子機器や電子部品の某メーカーを退社。その間、プリンタ,スキャナ,液晶パネル,画像処理,静電タッチパネル,3次元座標入力,GPSベースバンド,ワイヤレス給電などの開発に携わる。高校生のころからスピーカー自作やメーカー製のアンプの改造などを行ないはじめて、オーディオ暦40年。

超高音質! デジタルアンプの音質改善 2022.6.9 改訂

 

 当オーディオ道場では、デジタルアンプを推奨しています。デジタルアンプには、原理上音質を大きく劣化させる要因は少なく、電源と終段の共振体と出力に挿入される保護機能の3ヶ所が主な要因となります。電源と終段の共振体の改善の一例については、以前次のブログ記事で紹介しました。DENON PMA-60の改善例ですが、他のアンプでも参考になるかもしれません。

 

 

 今回のブログでは、デジタルアンプのもう一つの音質劣化要因である出力に挿入される保護機能での音質劣化を抑える方法について、実施後半年程度経過しましたが大幅に音質を改善した状態を維持しているため、実施例とともに紹介します。ここで言う出力に挿入される保護機能とは、かなり広義で、例えばデジタルの音声データとして直流が入力された場合にスピーカーに大電流が流れて故障するのを回避するために、出力に直列に挿入される機能のことです。具体的には、単一電源単一アンプの場合に出力される電源電圧の半分の電圧の直流をカットするために挿入されるコンデンサや、電源のオンオフ時ばかりでなく異常時に出力を遮断するミューティングリレーのことです。この保護機能がコンデンサでもミューティングリレーでも、そこで音質を劣化させている可能性が大いに考えられます。

 
1.当初の失敗
 実は、私は、当初デノン社のデジタルアンプPMA-60のミューティングリレーを単純にバイパス(ショート)させて音楽を楽しんでいたのですが、アンプを2回も壊しました。1回目はパソコンの正弦波発生ソフトがフリーズした時で、2回目は音楽再生中に停止ボタンを押した時です。2回とも同じ箇所が故障したので、故障の原因はアンプに直流波形が入力されたのではと推察しています。同じことをしても壊れなかったことも多いので、停止した時の直流レベルがたまたま波形の大きな値の場合に壊れたようです。
 しかも、写真1に赤丸で示すように、表裏合わせて表面実装の部品6カ所が壊れて交換した大故障です。私は、自力で修理しましたが、故障部品を特定して、部品(あるいは代替部品)を入手して交換することは、一般の方にはまず難しいと思います。
 
写真1 故障修理箇所
 
 もし、私がデジタルアンプのICの設計者なら、デジタル入力の段階で、例えば以下の簡単な式による演算でカップリングコンデンサと同じ働きをさせるフィルター機能を挿入します。この方法では、直流データが入力されてもすぐにカットできるので、いずれ主流になるのではと思います。このようになっていれば、今回製作する高音質コンデンサユニットをミューティングリレーに置き換えることなどは無用の長物になることでしょう。
 
 LowFreq[t] =k*Din[t]+(1-k) *LowFreq[t-1]
 Dout[t] = Din[t]-LowFreq[t]
 
 式に興味のある人は、1行目の式のDinにステップを入力すると、LowFreqがexpカーブで追従するのがわかると思います。kの値で時定数を設定することができます。2行目の式で、直流や超低周波成分をカットします。
 アナログアンプの場合には、入力にカップリングコンデンサがついているため、電源オンオフ時の異音を我慢して、スピーカーケーブルが短絡しないように留意していれば、ミューティングリレーはショートさせてもリスクは小さいかもしれません。現時点では、入力に直流カット機能のついていないフルデジタルアンプでは、ミューティングリレーは弱点と言えるかもしれません。
 
2.対策(代替保護機能)
 そのような訳で、単純に保護機能を取り除くことはお勧めできません。そこで、今回は、これらの保護機能をバイパス(ショート)させる代わりに高音質保護ユニットをスピーカーケーブルに挿入することにより比較的安全に音質を改善する方法を紹介します。
 いうまでもなく、元々実装されているコンデンサやミューティングリレーを外してヒューズと音質の良いコンデンサに置き換えても同じことなのですが、実際にはスペース的に困難なことが多いため、元々実装されているリレーやコンデンサをバイパス(ショート)させて、代わりに音質の良いヒューズとコンデンサをふんだんに使った高音質保護ユニットをスピーカーケーブルに挿入するようにしました。

 

3.残課題

 但し、音質を劣化させる保護機能をバイパスさせてスピーカーケーブルに高音質保護ユニットを挿入する方法には、以下の課題があります。実施するかどうかを決める際には、このあたりを十分考慮するようにして下さい。

 第1に、コンデンサとヒューズによる保護機能が確実に故障を回避できる保証はありません。ミューティングリレーをコンデンサに置き換えることはメーカーにとっては全く想定外の使い方です。直流はカットしますが、交流は異常なレベルのものでもカットするものではありません。実施する場合は、「壊れたらアンプを買い直せば良い。」ぐらいの気持ちで行うのが良いと思います。
 第2に、アンプの出力端などで配線がショートした場合に保護機能が全く働きません。スピーカーケーブルのすべてのより線をしっかり半田付けして、YラグやIラグなどで端子にしっかり固定することをお勧めします。そのほうが音質もよくなります。
 第3に、ミューティングリレーをバイパスしたことにより、電源オンオフ時に異音がすることが想定されます。私のデノン社のPMA-60では、電源を入れる度にアンプが壊れたのかと思うような破裂音のような音がスピーカーから出ます。それでも、音質には代えられないので無視しています。この異音も、時間の経過とともに慣れてきました。
 第4に、保護機能をバイパスしたアンプは、高音質保護ユニットを挿入し忘れると、音楽再生中に停止ボタンを押した場合などに故障する可能性が高くなります。大出力のアンプの場合には、スピーカーが発熱することがあるかもしれません。
 

4.実施例

 実施例では、デジタルアンプの保護機能のバイパス化とスピーカーケーブルに挿入する高音質保護ユニットとこれらの2つを併せての音質確認について紹介します。

 

保護機能のバイパス化(ショート)

 まず、デジタルアンプの保護機能のバイパス化について、私の所有するデノン社のPMA-60を例に説明します。

 写真2に示す実装基板で、アンプの出力からの赤矢印で示す太いパターンを辿っていくと黄色い枠で示した黒い部品に配線されています。

 

写真2 ミューティングリレー

 

 この部品は「JZC-42F」とマーキングされているので、「JZC-42F Datasheet」で検索すると、データシートを入手することができました。データシートには、「POWER RELAY」と記載されているので間違いありません。データシートには、図1に示すような内部接続図があります。そこで、写真2に示すようにスイッチの両端を左右分の2カ所半田付けでショートさせました。

 

図1 リレーの内部接続図

 

高音質保護ユニット

 

(1) 回路

 今回製作した高音質コンデンサユニットの回路図を、図2に示します。

 

図2 高音質コンデンサユニットの回路図

 

 

 使用した主な部品は、次の通りです。

【Fuse】ISOCLEAN 6x31.8mm 5A 4,040円

【C1】JantzenAudio.CrossCap 47.0μF 2,046円
【C2】JantzenAudio ElectrolyticCap 300μF NP 1,113円
【C3,4】MUSE-ES(BP) 50V 330μF 134円
【C5】ASC X335 400V 1μF  994円
【C6】Mundorf  Mcap 630V 1.00μF 653円
【C7】ERO MKP1841 250V 0.2μF 200円位?
【C8】WIMA MKP2 0.1μF 63V 90円
【R1】JantzenAudio Superes 15.0Ω 10W 492円
【基板】 FR-4ガラスエポキシ両面銅張積層板パナソニック電工
  T=1.6mm銅箔70/70μm (100mm x 75mm 4枚入り)  650円
【端子】? 約1,000円
【Yラグ】LOJECT SC-68Y(G) [金メッキ4個入]1,750円
【木材】桐 ハウジング用
 

 この回路の特徴を以下に示します。

 高音質保護ユニットは、当初はヒューズなしで使用していましたが、ある日保護ユニットを外して音を比較しなおしてみると中低域の力強さが低下していたため、その対策としてヒューズは後から付けたものです。

 スピーカーケーブルでの保護となるとヒューズだけで使うのが普通かもしれません。しかし、オーディオグレードの高価なヒューズの説明書には、半年から1年程度のインターバルでの交換を推奨しています。そこで私が考えたのは、これまで使用していたコンデンサによる保護ユニットのコンデンサに並列にヒューズを付加することです。この方法にはいくつかメリットがあります。まず、オーディオグレードと言えどもヒューズにはそこそこの直流抵抗が必要なので、音楽の瞬時的な大電流やコンデンサのインピーダンスが十分低い周波数ではコンデンサの方に多くの電流が流れて、ヒューズの劣化が少ないと考えられること。また、別の見方をすると、ヒューズだけの場合よりコンデンサを並列に接続した方が高音質(音質劣化が少ない)と考えられること。もしかしたら、オーディオグレードの高価なヒューズでより普通のヒューズに並列にコンデンサを付加した方が高音質になることも十分考えられます。だから、私は、切れない限り少なくとも10年はヒューズを交換するつもりはありません。これって、ある意味私の発明かもしれませんが、市場規模を考えて特許出願はしません。皆さん、遠慮なくこの方法を使って下さい。ただし、ここを参考にしてスピーカーケーブルに挿入するヒューズにコンデンサを並列に付加した事例の公開や製品の販売をする方は、道義的にここからの引用を明記して下さい。

 ヒューズの定格電流は、アンプの出力から決めました。私のアンプは、取説に25W(@8Ω),50W(@4Ω)となっています。電流の多く流れる50Wを4Ωで割って平方根を計算すると3.5Aとなり、余裕をもって5Aにしました。確認のためPMA-60のD級アンプのスイッチングFETのデータシートを見ても、5Aでは壊れることはなさそうです。

 コンデンサC1~7は、ふんだんにこれだけ並べれば多分音質の劣化は気にならないだろうと思うだけのコンデンサを並列接続して、合計1,000μF程度になるようにしたものです。この組み合わせはヒューズを付加しない前提で決めたもので少し過剰かもしれません。それでも、ヒューズを補助的なものと考えて、ある程度高音質のものを予算と音へのこだわりで適当に決めればよいと思います。

 抵抗R1とコンデンサC8は、C1~7の制振用です。詳しくは、当ブログの次の記事を参照して下さい。

 

 なお、スピーカケーブルは短いのですが、念のため以前当ブログで紹介したハイブリッドパラレル接続にしました。

 

 

 

 

(2) 実装

 それでは、組み立てです。図3の基板実装図に穴開けとコンデンサの位置関係を示します。ただし、図3での寸法の単位は[mm]なのですが、寸法の表記は特殊です。寸法の値は、寸法線と基板外形の一部によって構成される長方形の辺の長さを表しています。したがって、原点は、部品によって異なり、凡そ基板外形の4つの角のうちの近い所になっています。

 

図3 基板実装図

 

 この基板実装図を基に、1つのコンデンサユニットにつき2枚、左右のスピーカー分として4枚穴開けします。コンデンサは、コンデンサのリードが短くなるように空間の効率を考慮して、写真3に示すように、2枚の基板に挟まれるように実装しました。

 

写真3 コンデンサの実装

 

 コンデンサのレイアウトに際しては、コンデンサは中空で他の物体との間に少なくとも5mmは間隔があくように配置しました。

 図3での赤丸は、マイナス側のスピーカーケーブルを通す穴を示しています。2カ所あるのは、ハイブリッドパラレル接続にしたためです。このように基板の中央にマイナス側のケーブルを配置したのは、なるべくコンデンサとの距離が大きくならないようにするためです。

 ヒューズは、写真4に示すように、半田付けで実装しました。

 

写真4 ヒューズの実装

 

(3) 組み立て

 基板にコンデンサを実装したら、桐の板で囲いました。桐の板を選んだ理由は、軽くてスカスカな材料であるために電気的な影響がほとんどないことを想定したためです。板には予め基板が嵌るようにのこぎりで溝を切っておきました。さらに、低域の音が多少暴れる感じがしたので、写真5に示すように、基板を両側からフェルトで押さえるとともに内面の反響を防いで制震化するために、写真5に示すように、フェルトを貼りました。

 

写真5 フェルトによる制震化

 

 この桐の板で4辺を囲んでネジで固定しました。あとは、写真6に示すように、端子を板で固定して接続します。

 

 

 

写真6 端子の接続

 

 最後に、写真7に示すように、Yラグにスピーカーケーブルで配線して、インシュロックタイで板に固定して、高音質コンデンサユニットの完成です。

 

写真7 Yラグ側

 

 なお、写真6や写真7に示すように、端子やスピーカーケーブルを基板に半田付けする際には、銅基板の表面からの酸化を防ぐために、コンデンサの実装端子との間を半田の幕で覆うようにしました。

 また、スピーカーケーブルの半田付けに際しては、すべてのより線を有効活用するために、写真8に示すように、すべてのより線に予備半田してから基板や端子やYラグに半田付けします。

 

写真8 スピーカーケーブルの半田付け

 

 より線のフル活用についての詳細は、当ブログの次の記事を参照して下さい。

 

 

 完成した高音質コンデンサユニットは、写真5に示すように、スペースの関係でスピーカーの後ろでスピーカーケーブルに挿入するようにしましたが、振動の影響を考えると理屈的にはアンプ側で挿入したほうが良いのかもしれません。

 

 

音質確認

 

 高音質保護ユニットは、ダンピングファクターを考慮すして、スペースが許す限り、アンプ側よりスピーカー側に挿入するようにします。

 さて、テスターで接触不良やショートがないことを確認したら、ワクワクどきどきの音質確認です。コンデンサのエージングのために暫くは弱くてぱっとしない音を覚悟していたのですが、不安は杞憂でした。最初から、コンデンサユニットを挿入したことによる違いが私のつたない耳では全く分からなかったのです。暫く使っても、まったく変化が分かりません。6種類のコンデンサによって至らないところを補い合って、音質劣化が余裕で分からない程高性能のコンデンサユニットを構成できたようです。私の中では、満足度100%です。

 

 ここまで面倒くさいことを手間暇かけてするのは、そうまでしてもリレーの接点はなくしたいと思う気持ちからです。もはや、ミューティングリレーのあるアンプには決して戻りたくありません。費用は少し過剰品質のため左右合わせて3万円近くかけましたが、それでデジタルアンプのアキレス腱がなくなるなら良いのではと思います。


 今回のブログを、最後まで読んで下さりありがとうございます。プログの分類タイトル「松島千治オーディオ道場」では、他にも様々な音質改善方法を紹介しておりますので、ご覧いただけると幸いです。

 

 また、当ブログ「未知を既知に 自由研究家 松島千治」では、この他にも様々な研究成果などを紹介しておりますので、ご覧いただけると嬉しいです。

 

 最後に、お気軽にご感想やご意見を残して頂けると嬉しいです。

 

以上

 

改訂履歴

2022.6.9 ヒューズを付加,フェルトによる制震化

2021.3.14 初版公開