ローコスト・ハイエンド音質をリードする

松島千治オーディオ道場

 

 当オーディオ道場では、自分の耳で音を聞いて生演奏と明らかに区別のつく音は良しとしません。それは、弦でもブラスでも打楽器でもボーカルでも、あらゆる楽器についてです。本当に良い装置は、音源を選びません。

 ふんだんにお金を掛ければ、比較的良い音を実現しやすくなります。でも、それではコストもかかるし、達成感も限定的です。当道場では、トータルコスト10万円程度で、場合によっては100万円以上の装置と同等かそれ以上の音を出すことを目安としています。

 私が高いものをあまり好きでないもう一つの理由は、高いものは総じて大きいからです。「そこまでやらなくても良い音出せるのでは?」というのが当道場の考えです。

 多大なコストをかけずにコンパクトに良い音を出す。これこそが、オーディオの醍醐味だと考えているからです。但し、自作したりメーカー製品の内部を改造したりすることもあります。

 なお、松島千治のオーディオ道場では、読者のオーディオマニアの皆さんになるべく早く原音に近い満足のできる音に到達して頂けることを願って、次のリンク先のブログ記事を用意しておりますので、ご興味のある方には是非御一読頂けることをお薦めしています。

 

 また、当道場では読者の方のいかなる損害についても責任を負いませんので、実施する場合は自己責任でお願いします。

 

 

松島千治のプロフィール
千葉大学工学部電気工学科を1981年に卒業し、2012年に開発スペシャリストを務めていた電子機器や電子部品の某メーカーを退社。その間、プリンタ,スキャナ,液晶パネル,画像処理,静電タッチパネル,3次元座標入力,GPSベースバンド,ワイヤレス給電などの開発に携わる。高校生のころからスピーカー自作やメーカー製のアンプの改造などを行ないはじめて、オーディオ暦40年。

 

実録! サブウーハー(FOSTEX PMーSUBmini2)の音質改善 2018.11.29

 

 今回は、1万円クラスのメーカー製のアクティブウーハーの音質をほぼ実用的なレベルにまでグレードアップする方法について、FOSTEXのPM-SUBmini2の改善を例として紹介します。他のメーカーや型番の同価格帯のサブウーハーについても、同様の改造で音質が大幅に改善できるかもしれませんので、ご参考にして頂ければと思います。

 

 但し、言うまでもありませんが、メーカー製品を改造すると、保証や修理を受けられなくなったり、第3者に売る場合に足かせになったりしやすいので、納得の上改造するようにして下さい。
 また、改造をするかどうかは、このブログを一通り読んで、無理なく出来そうかを考えてから決めるようにして下さい。

 

 このサブウーハーを選んだ理由は、密閉型であることと、御近所に音が響く40Hz以下の重低音が出ないことと、大きさと価格です。

 

 ちなみに、低音を出す方法には、密閉型ののサブウーハーの他に、バスレフ型のサブウーハーとバックロードホーンなどがあります。

 バスレフ型では、周波数が低くて出にくくなったところを共振させて出すものです。共振を使っているため、音にスピード感がなく、ドラムなどの打楽器の音も残響が続いてふやけた音になってしまいます。ひきしまった低音になりません。

 また、バックロードホーンの場合には、ウーハーユニットの後ろ側から出る位相が反転した音を一定時間遅延させて音を出すものです。バスレフのように音がふやけることはないのでしょうが、遅延したり反転したりして出てくる音では、音の力強さが砕けて不自然な音になってしまいます。数学的にも、インパルス応答やステップ応答では、すべての周波数のゲインと位相が揃わないと波形は再現できません。基になる低音の反転や遅延は、これらの波形を大きく乱します。

 これらが、密閉型のサブウーハーにこだわる理由です。

 

(写真1) 

 

 

 サブウーハーの音質改善のポイントは、次の3項目です。

(1)ウーハーユニットケーブルの交換
(2)ラインケーブルの製作
(3)箱鳴りを抑えるためにスタビライザを付ける(台,重り)

 

 ウーハーユニットのケーブルもラインケーブルも、元々ついていたものでは大きな高調波歪を発生するので、どちらかのみをグレードアップしても効果はあまり実感できないかも知れません。(1)~(3)の改善は、全て行うことをお薦めします。

 

 回路にも少し手を加えた方が良いかもしれませんが、回路基板は接着剤で固定されているため、今回はここまでとします。それでも、高調波が抑えられて力強いすっきりした低音になり、聴いていて不快に感じることはなくなりました。

 

 これより、上記の3項目について、私の考え方と具体例を説明します。

 

(1) ウーハーユニットケーブルの交換

 

 このクラスの音響機器では、内部のケーブルとコネクタで音質劣化しているケースがほとんどです。

 ここで言う内部のケーブルとは、回路基板とウーハーユニットを接続しているケーブルのことです。ウーハーもスピーカーの一種なので、交換するケーブルとして、音質の良いスピーカーケーブルを購入しておきます。

 30cmあれば十分なので10cm単位で売っている良いものを選びましょう。目安としては、10cmあたり100円程度で良い気がします。参考までに、私は線幅が長い方が相互作用が弱くて良いと考え、線幅が10mmの以下の印刷のある平行線のケーブルを選びました。

 

IH AKUSTIK PREMIUM LAUTSPRESHERKABEL 2x2.5 QMM ROHC MADE IN GERMANY

 

 実際に交換した手順は、次の①~⑤ですが、やり易いように変えても良いと思います。

 

① まずサブウーハーの背面の板金の周辺で固定している8本のネジをはずし、板金をこじあけます。この際、つまみやスイッチを引っ張ると部品の劣化で音質が悪くなるかもしれないので、板金そのものに力を加えてこじあけます。

 

② 次に回路基板からウーハーユニットにつながっているケーブルの回路基板側のコネクタをはずします。この際、力ずくで引っ張るのでなく、コネクタの構造を良く見て、ロックをはずすように力を加えると比較的簡単に抜けるはずです。

 

③ ウーハーユニットの端子に差し込んである端子を引き抜きます。ここにもロックがかかっていて、簡単には引き抜けませんが、ケーブル側の引き抜く端子は破壊しても良いので、なんとか引き抜きます。ウーハーユニットの近くでケーブルを切った方が、取りやすいかもしれません。

 

④ ウーハーユニットの端子には、購入したスピーカーケーブルをファストン端子を用いずに直接半田付けします。その際、サブウーハーの箱の中は狭いので、火傷しないように十部注意して下さい。回路基板側も、写真2に示すように、コネクタを使わずに直接半田付けします。

 半田付けをする箇所は、端子にもケーブルにも予備半田をしてからしっかり半田付けします。なお、ウーハー側も回路基板側も、スピーカーケーブルの予備半田をする際は、より線を間引きせずに、全てのより線を半田で接合します。半田付けしたら、ある程度強い力で引っ張っても取れないことを確認しましょう。

 

(写真2) 

 

注1) 予め、極性を良く見ておき、極性が逆にならないように接続して下さい。逆に接続すると、Phaseのスイッチの設定が逆になります。

注2) 回路基板側の接続箇所は、ショートしないようにビニールテープや熱収縮チューブなどでしっかり補強絶縁して下さい。
注3) ウーハーユニットに、半田ボールやフラックスが付着しないように、予めティシュなどを入れて養生した方が良いかも知れません。
 

⑤ ①で外した板金を取付けます。

 

(2) RCAラインケーブルの製作

 

 FOSTEXのPM-SUBmini2には、RCAラインケーブルが付属していますが、見るからに音質が劣化しそうなケーブルです。RCAラインケーブルは、市販のものもたくさんありますが、経験的に数千円のもの(オルトフォン AC-3800)を買っても満足な音の伝達はできません。

 そのため、私はRCAラインケーブルは自作することにしています。自作と言っても、ケーブルとコネクタを買って半田付けするだけの話です。ケーブルは、モガミのNEGLEX 2549 を使います。200円/m程度と安価ですが、音質の劣化はほとんどありません。赤と黒と緑から選ぶことができます。RCAのコネクタは、このケーブルに適合するものなら特にこだわりはありません。

 初めての方には、オヤイデ電気などで、ケーブルとRCAのコネクタと説明書の組立キットが通販されていますので、利用すると良いかもしれません。この通販ページでは、組立方法も紹介しています。

 

 ここに書かれている通りに接続しても良いかもしれませんが、私はこの通りには接続しません。モガミのNEGLEX 2549 は、2芯のシールドケーブルで、ホットとコールドとシールドの3つの導線がつながっています。RCAのコネクタは2端子です。ホットの線はRCAのセンターにつなぎ、コールドの線はRCAのシールドにつなぐぎます。ここまでは誰がつないでも同じなのですが、シールドの導線のつなぎ方には流儀があります。シールドの導線は、RCAのシールドにつなぐのですが、アンプ側とサブウーハー側の両方のRCAにつなぐ両側シールド接続か、アンプ側だけRCAにつないでサブウーハー側はつながない片側シールド接続かです。

 

 

 オヤイデ電気さんの考えを以前伺ったところ、両側ともシールドの導線をつなぐ両側シールドを推奨しているけど、好みの問題だとおっしゃってました。

 

 私の考えは、オヤイデさんとは逆で、つなぐのはアンプ側のみです。

理想は、ノイズによる電流がシールドの導線を流れて、本来の音声信号による電流がホットとコールドの導線を流れることです。

 しかし、両側のシールドを接続すると、ノイズによる電流も音声信号による電流もコールドの導線とシールドの導線の両方を流れてしまいます。この場合、ノイズに対してはインピーダンスが低く有利ですが、音声信号をシールドの導線で流しても良いならそもそも2芯にする意味ないじゃんてことで、音声信号の伝達特性については不利になると考えられます。

 片側のシールドを接続した場合、ノイズによる電流も音声信号による電流もコールドの導線のみを流れてしまいます。この場合、ノイズに対しては明らかに不利ですが、音声信号に対しては有利です。つまり、ノイズが問題になるような環境では両端ともシールドの導線を接続した方が良いが、音声信号の伝達特性を最優先するなら音声信号がシールドの導線を流れないように片側のシールドの導線は接続しない方が良いと言うことになります。

 でも、外来ノイズって言われる程問題になっているのでしょうか?音源の再生を止めた時に、スピーカーやサブウーハーからノイズが聞こえますか? 私の所では、ラインケーブルに片側のみシールド接続した場合でも、通常最大のノイズ源である50/60Hzのノイズですら聞いたことがありません。それが、片側シールド接続を推す理由です。

 また、留意すべきこととして、ホットとコールドの半田付けをする際には、全ての撚り線に半田が浸みるように予備半田をしてから、コネクタに半田付けします。一部のより線にのみ半田付けすると、他の撚り線と撚り線間接続することになるのですが、撚り線間接続は不安定なので音質を劣化させる要因になるかも知れないからです。シールドの線は一部のより線の接続のみでも構いません。片側シールド接続では音声信号はシールドを流れないからです。

 

(3) 箱鳴りを抑えるためにスタビライザを付ける(台,重り)

 

 サブウーハーの箱は振動しないのが理想ですが、サブウーハーから出る音は、周波数が低く振幅が大きいのでので振動しやすく、これを抑えるには、相当の質量と剛性が必要になります。このために、箱の外側から振動を抑えるスタビライザについて説明します。これは、サブウーハーの改善と言うよりは、設置方法と言うことになります。

 

 サブウーハーは箱鳴りの影響を抑制するために、可能な限り周囲から抑え込むようにします。実際には、外観や設置スペースなどを考えて、底面と上面から箱の振動を抑え込むようにします。 但し、前面の板は上下に若干出っ張っているので、前面の板を避けて抑え込むようにします。

 

 サブウーハーの設置は、写真1に示すように、床から順番に、台、衝撃吸収パッド、石のプレート、サブウーハー、石のプレートの本の重しの順番に重ねるようにしました。

 

 まず、サブウーハーは、床に直置きにすると床の反響などが問題になりやすいので、台の上に置いて、床から30cm程度浮かようにします。


 底面については、重たくて固い物の上に置くようにします。FOSTEXのPM-SUBmini2の底面には四隅に両面テープでクッションが貼り付けられていますが、これは柔な板の上などに設置した場合に板ごと振動して余分な音を出すのを防止するのが狙いで、サブウーハーの箱鳴り対策としては本末転倒です。つまり、このようなクッションはきれいに剥がして、固くて重いしっかりした石の上に密着して設置します。私は、当初は、ビバホームで298円で売られている20cm四方で3cm厚のローマ平板と言う石のプレートの上にサブウーハーを置くようにしました。これでも良いのですが、もし、スペースが許すのであれば、同じくビバホームで798円で売られている30cm四方で3cm厚のみかげ平板の上にサブウーハーを置くようにすると、更に引き締まった低音が出るようになります。

 

 但し、石のプレートの下には、踏み台や床に振動が伝わることを再優先で阻止するために、アイソレータを挿入します。アイソレータは、百均などで衝撃吸収パッドとして売られているもので、4cm四方5mm厚程度の水色の半透明な柔らかいパッドです。

 

 また、サブウーハーの箱の上からも、前述のローマ平板の石のプレートを置いて抑え込む構成としたところ、程度問題ですが、箱鳴りを抑えたしっかりした音になりました。さらにその上から重しとして、キルティングで包んだ本10冊を重ねると、よりスッキリした音になります。

 

 これらの対策により、1万円クラスのサブウーハーですが、高音質のシステムで実際に使用しています。ただし、このサブウーハーは、20cm程度の大きさのためか、40Hz以下の音は出ません。私は価格面からこのサブウーハーを選んだのではなく、御近所や外に音が響かない程度にするためにこのクラスのサブウーハーにしました。

 

 重低音を出すのが難しいと言うことではありません。大きなサブウーハーを選んで、より重い石を使えば良いのです。


 今回のブログを、最後まで読んで下さりありがとうございます。プログの分類タイトル「松島千治オーディオ道場」では、他にも様々な音質改善方法を紹介しておりますので、ご覧いただけると幸いです。

 

 また、当ブログ「未知を既知に 自由研究家 松島千治」では、この他にも様々な研究成果などを紹介しておりますので、ご覧いただけると嬉しいです。

 

 最後に、お気軽にご感想やご意見を残して頂けると嬉しいです。

 

以上 2018.11.29

 

改訂履歴

2020.6.24 「高音質オーディオへの近道」へのリンクを記載

2020.6.15 追記5箇所 改造前の留意事項,3項目全ての改善を推奨,ウーハーユニットの養生,LINEケーブルのすべての撚り線に予備半田,抑え込みでは前面を回避

2020.4.11 スピーカーケーブルを回路基板にコネクタを介さずに直付に変更

2020.4.7 下のローマ平板をみかげ平板に変更

2020.4.7 上のローマ平板の上に本10冊を追加

2018.12.6 バスレフとバックロードホーンについての考えを追記