塔は、ただそこに立っていた。
名もなく、意味もなく、
けれど人々はその入口へと
吸い寄せられるように歩いていく。
同じ道を、逆向きに駆け戻る影もあった。
顔をゆがめ、何かを叫んでいるのに、
その声だけが世界から抜け落ちて、
風さえも聞き取ろうとしない。
塔の上では炎がゆっくりと噴き上がり、
空は赤く、焼けただれた皮膚のように
ひび割れながら広がっていた。
焼けた鳩が、音もなく落ちてくる。
羽ばたくことを忘れた白い灰が
地面に触れるたび、
世界の温度がひとつ減っていく。
それでも人々は歩き続ける。
逃げる者も、向かう者も、
互いの理由を知らないまま、
塔の影の中で交わっては離れていく。
そして私は、ただ立ち尽くしていた。
どちらへ行くべきかも分からず、
塔の名も、炎の意味も知らないまま、
夢の縁に置き去りにされたように。
