さよならウィッグ~卒業ドキュメント~ | QOL ~Quality of Life~

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わたしがウィッグを卒業した日。



エクレアをたくさん詰めてもらい、


お土産にして、美容院へ。


Mさんの美容院は、


レセプションやアシスタントの人まで数えると、


12~3人の大所帯。


わたしから見たら、みんな若い人ばかり。


みんな、とても仲が良い。


だから、とても居心地がいい美容院。


きっと、わたしの今日のことは、


Mさんの口から、伝わっているだろう。


誰かひとりでも、


わたしに好奇の目を向ける人がいるだろうか。


そんなことを気にしてしまう、


自意識過剰な自分を持て余しながら、


美容院へ。



こんにちは、と、受付へ。


Mさんが、ちらりとこちらを見て、


わあ、でも、どうも、でもなく、


ちょっと待っていてくださいねと、


アシスタントの人と、


パテーションを立てている最中だった。



しばらくののち、


どうぞーと、ぴったり「個室」となった一角へ。


緊張すると多弁になってしまうわたしは、


連絡できなかったことを、


ごにょごにょと、


鏡に映るMさんに話した。


脱毛した時期、


発毛した時期、


そして、いまのホルモン治療のこと。


その影響が少しあるのか、


前髪やてっぺんが伸びない、ということ。


でも、なんとか整えてもらうことができたら、


ウィッグを卒業したいのだ、とも。


Mさんは、ただ黙って、うんうん、と聞いていた。



ひと通り話して、すっきりし、


「じゃあ、取るね」と、ウィッグを外した。


慰めや愛想を言うでもなく、


「思ったより伸びてました、じゃ切っていきましょう」


と、ひらりとタオルとケープをかけるMさん。



多毛で硬くてくせっ毛な、わたしの髪。


トップとのバランスを考えて、


頭の下半分のボリュームを抑えるのに、


下半分、ストレートパーマで大人しくさせましょうと、


カットの前に、パーマになった。


普段は、トップスタイリストのMさんだけれど、


アシスタントは誰もつけず、


シャンプーへ移動のときも、


わたしの頭をしっかりくるんでくれた。



いろんな話をした。


harucoさんからの電話のあと、


わたしも保険を見直そうと思いました、とMさん。


見直してね、


そうしてくれたら、ホント嬉しいよ、絶対ね。


そして、以前に一度、


やはり抗がん剤で脱毛した人の、


ウィッグ卒業までを、


お世話したことがあるのだ、とMさん。


そうだったんだ。


わたし、本当にずっとここに来たかったんだ。


でも、癌になって髪が抜けたわたしに、


Mさんがドン引いちゃうかもしれないって、


それが怖くて、来れなかった。


そんなことも話した。



いままで、Mさんに髪を切ってもらっていて、


失敗したこともがっかりしたことも一度もない。


今回も、お任せしたけれど、


あまりにジョキジョキはさみを動かすのと、


床や膝に落ちる髪の量がものすごくて、


「なんか...すごい切ってる...?」


2回ほど聞いてしまった。


いくら多毛でも、


せっかくここまで生えたあたしの貴重な髪汗


「大丈夫です、減らしてるだけですから」


「心配しないで、大丈夫」


と、ジョッキジョキ、


豪快にはさみを入れていくMさん。


気がついたら、


もっさりボコボコした頭から、


どんどん立体的になっていく、わたしの頭!



ドライヤーで上から抑える感じで、


頭の下半分は乾かして。


前髪は、ドライヤーを当てながら、


引っ張って伸ばす感じでね、全然違うから。


ワックスは、クリーム系のがいいです。


伸びがいいから、使いやすい。


こうやって、揉むようにつけてね、


気になるようなら、


最後、ハード系のスプレーで仕上げてください。


スタイリングの仕方を教えてもらった。



「決めた。このまま帰ります、もうウィッグ卒業する」


仕上がりを合わせ鏡で見せてくれていた、


Mさんのほうが驚いていた。


おかしくない?似合ってるかな?


言いながら、涙がぼろぼろ出てきた。


最初からここにくれば良かった。


でも、Mさん、ありがとう、


最後にMさんに切ってもらえて、良かった。


あたし、このまま帰る。


そう言いながらぼろぼろ泣くわたしを、


そう言ってもらえて良かった、と、


Mさんが、後ろからぎゅっと抱きしめてくれた。



「じゃあ、開けますよー」


パテーションが開いた。


あー、もう後戻りできないんだな、


開いちゃったから(笑)



娘の髪を担当してくれていた美容師さんが、


「エクレアごちそうさまでしたぁ」


と、笑顔で顔を覗かせた。


どうかな?ヘンじゃない?


真剣に聞くわたしに、


「イイですよ~、全然大丈夫!」と、太鼓判。


いろいろあって、娘までご無沙汰することになっちゃって、


本当にごめんなさいねと言うわたしに、


いいんですよ、じゃあ次は一緒にまた来てくださいね、


待ってますねと。


みんなこんな優しい人たちだったのに、


わたしひとり、


ハリネズミみたいになっていたんだなあ。



ホルモン治療はまだまだ続く。


ホルモン治療が終わっても、


経過観察は、もっと続く。


それでも、ウィッグ卒業は、


最後の大きな、節目に思える。


大切なものが、手の中に帰ってきたような気がした。


もうこの先は、いろんなこと忘れてしまえるといい。


そして、人生を楽しんでいけるといい。



さよなら、ウィッグ。


ありがとうね。














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