「ママ、あのねあのね、今日ね、うふふふふーっ」と、笑う娘。
娘は内緒事が出来ない。
黙っていられない。
こちらを驚かそうとしても、興奮し鼻の穴が膨らみ、
満面の笑顔から、なにかサプライズをたくらんでいるのが、バレバレだ(笑)
「あのね、今日ね、ママにお手紙かいてきたんだよ、海ほたるでね、1年後にとどくんだよ」
なんだそりゃ?
海ほたるで1年後?
なんのことだと首をかしげていたら、後から登場したダンナが、
「あー、なんだよ、言っちゃったら意味ないじゃないかー」と、残念そうにしていた。
黙っていられない娘の話を総合すると、
PAの海ほたるに、1年後に配達される郵便ポストがあり、
そこに、わたし宛の葉書を投函したらしい。
1年後のわたしに。
どうしてだか衝撃だった。
お礼を言うのが一呼吸遅れてしまったくらい。
1年後のわたし。
1年後のわたしが存在して、手紙を受け取る。
不思議な感覚だった。
いつからわたしは、将来のことを考えなくなっていたのだろう。
初夏の頃、しこりを見つけ、
梅雨の時期に、検査を受け続けた。
夏の盛りに、入院し、手術をし、
放射線が終わりかけているいま、季節は晩秋を迎えようとしている。
月が変わり、季節が移り、もちろん記憶は鮮明なのに、
将来への気持ちがこの数ヶ月、何もなかったことに、気がついた。
わたしは癌なんだから、病気なんだから、先のことなんて考えられない、ということではけして、ない。
次の連休はどうやって過ごそう。
クリスマスは何を作ろう。
お正月はなにをしよう。
次の旅行はどこへ行こう。
3年後のわたしはなにをしているのだろう。
娘が20歳になったとき、52歳のわたしは何を思っているのだろう。
少しずつ年を取り、孫を抱き、おばあちゃんになるのだろう。
そんな風にわたしは、先のことを想像しては、いつも楽しんでいた。
それなのに、この数ヶ月、微塵も先のことを考えなかったのだ。
たぶん、突然の乳がんはわたしの頭を、
治療内容やら、お金のことやら、不安やら、痛いだの痒いだので、いっぱいいっぱいにし、
脳味噌の「通常業務」が、非常事態だったのかもしれない。
『ガンモード』にギアが入り、頭のど真ん中にはいつも乳がんがあり、
「通常業務」すら押しやられ、先のことなんて遙か彼方へ追いやられていたらしい。
なんてこった。
1年後のわたしに手紙が届く。
止まっていた時計が動き出したような気持ちだった。
そうだ。
手紙を楽しみに待とう。
前を向いて、大きなことから小さなことまで、またいろんなことを考えよう。
もうど真ん中にはいさせてあげないよー
ここまで書いて、そうだ、わたし、ご褒美に1人旅に行くのだ!と書いたのだっけ、と思い出しました
1人旅の意味にも、正直なんだか深い意味がありまして...それはまた後日書きます。
ランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。