Ver.5サイトが選ぶポップミュージック名曲選 80,90年代編 10 | ver.5 - 洋楽チャートをデータと共に

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Ver.5サイトが選ぶポップミュージック名曲選 80,90年代編 10


よくあるロックの名曲ではなくて、ポップミュージックの名曲を当サイトが厳選して紹介しています。選曲は全米Top5に入った曲はそれだけで名曲で、膨大なリストとなるため外しています。
70年代までの100曲編と80年代、90年代編は名曲としての意味合いが変わってきます。80年代頃からは幅広い音楽に触れる機会が増えたことで、様々な音楽を取り入れたり過去の音楽を再構築することが増えていきます。またシンセサイザーの普及で簡単に電子機器で音楽を作ることができるようになります。90年代頃には音楽の一部をサンプリングするラップミュージックが流行しました。
ということで今からだいぶ過去の音楽ですが、それでも色あせないポップミュージックの美しいメロディの世界をぜひお楽しみください。
 

90年代といえばヒップホップ、ラップのブレイクは外せません。ロックがポップチャートから離れていったのと対称的に90年代のポップミュージックの中心はヒップホップでした。サンプリングという過去の音楽のエッセンスが大きな役割を果たしていましたが、ヒップホップならではの切り口は新たなポップミュージックの可能性を広げました。

Let’s Talk About Sex / Salt-N-Pepa 91

 

ニューヨークで結成されたグループSalt-N-Pepaの91年に全米13位、全英2位を記録した曲です。全米やヨーロッパはもとよりジンバブエでも1位を記録するなど世界規模でヒットしました。タイトルのとおり安全なセックスについて歌った歌で、当時問題となっていたAIDSやHIVの蔓延も背景にありました。サンプリングしているのはStaple Singersの「I'll Take You There」(72年全米1位)。オリジナルとはまた別の切り口で、ラップの特徴であるメッセージを強く出した初期のヒップホップの名曲の一つです。

Around The Way Girl / LL Cool J 90

 

ニューヨーク州はBay Shore出身のラッパーLL Cool Jは80年代半ばに登場したヒップホップアーチストの元祖的な存在ですが、80年代はどちらかと言えばアイドル的な印象でした。それが変わったのは90年に発表された『Mama Said Knock You Out』(90年全米16位)からで、「Around The Way Girl」は初のTop10入りとなる全米9位、全英41位を記録して、90年代のLL Cool Jの活躍に繋がりました。Mary Jane Girlsの「All Night Long」にKeni Brurkeの「Risin To The Top」をサンプリングしていますが、この曲の魅力はバックにずっと流れるノイズに近い音で、音に深みを加えています。

Funkdafied / Da Brat 94

 

ヒップホップの最初のブレイクが89年から90年とすれば、94年はセカンドブレイクのような年で、CoolioやSnoop Dogg、Notorious BIG、Nasが登場したヒップホップの当たり年として知られます。そんな94年のヒップホップ年間で1位だったのはイリノイ州シカゴ出身のラッパーDa Bratの「Funkdafied」で、全米6位、全英65位を記録しています。ヒップホップの大ネタのIsley Brothersの「Between The Sheets」を上手くポップソングに。作曲プロデュースは90年代から数多くのヒットを手がけたJermain Dupri。

I Get Around / 2 Pac 93

 

ニューヨーク州Manhattan出身のラッパー2 Pacの初のヒット曲で、93年に全米11位を記録しています。2 Pacも所属していたDigital Undergroundの曲としてリリースされる予定だったものを2Pacが歌詞を書いて、Digital UndergroundのShock GとMoney Bがフューチャーされています。Jazzyなメロディのループをバックにするお洒落なヒップホップで、サンプリングネタで勝負の当時としても独特でした。2Pacはこのヒットを手がかりにラップスターとなり、96年に亡くなってからは伝説となっています。

Aint 2 Proud 2 Peg / TLC 92

 

ジョージア州アトランタで結成された3人組ヒップホップユニットTLCはBabyface、LA Reidが作ったLaFaceレーベルから登場して、全米6位、全英13位を記録しています。作曲プロデュースは後にメンバーChilliと結婚するDallas Austin。Kool & The Gangの「Jungle Boogie」やBob Jamesの「Take Me To The Mardi Gras」など7曲がサンプリングされています。コンドームを使ったセーフセックスについて歌っていて、メンバーのLeft Eyeの左目眼帯にはコンドームがつけられています。この曲の魅力はあれだけサンプリングしながら不協和音のバースとメロディアスなバースを交互に組み合わせているところ。この曲のヒットからTLCは世界的なグループとなっていきます。

The World Is Yours / Nas 94

 

ニューヨークはブルックリン出身のラッパーNasの94年発表のデビューアルバム『Illmatic』(全米12位)に収録されていた曲で、USラップチャート27位ながら50万枚を売り上げています。90年代を代表する名盤『Illmatic』の中心となる曲で、About.comで史上7番目に優れたラップソングに選ばれているようにメディアでは高い評価です。Ahmad JamalのJazzピアノ曲「I Love Music」がサンプリング。ピートロックのプロデュースも素晴らしくスクラッチを含めた曲の完成度の高さは芸術的です。

Ain’t No Nigga / Jay-Z f. Foxy Brown 96

 

ニューヨークシティ出身のラッパーJay-Zは今もなお影響力を持つレジェンドですが、そのデビューアルバム『Reasonable Doubt』(全米23位)からのシングルで、全米50位を記録しています。この曲のヒットでJay-ZはDef Jamと契約を結び、現在までの活躍につながります。作曲はJay-Zで、当時17歳だったFoxy Brownがフューチャーされていて、The Whole Darn Familyの「Seven Minutes Of Funk」がサンプリングされています。後にサントラ『Nutty Professor』にも収録されました。

Let Me Clear My Throat / DJ Kool f.Biz Markie & Doug E Fresh96

 

Washington D.C.出身のラッパーDJ Koolの96年に全米30位、全英8位を記録した曲です。この曲はフィラデルフィアのバハマベイクラブでライブ録音されたもので、観客の歓声や叫び、コール&レスポンスが曲の一部として入っています。イントロはKool & The Gangの「Hollywood Swinging」、メインはThe 45 Kingの「The 900 Number」のサンプリングが使われていますが、なんと言ってもこの曲はライブ感満載のコール&レスポンスが魅力です。Biz MarkieとDoug E.Freshがフューチャーゲストで競演しています。

Ex Factor / Lauryn Hill 98

 

先日発表されたApple Musicのアルバム選で1位がニュージャージー州East Orange出身のシンガーソングライターLauryn Hillのデビューアルバム『The Miseducation Of Lauryn Hill』でした。そこから2曲目にカットされて全米21位、全英4位を記録したのがこの曲。ネオソウルとヒップホップの要素を合わせた曲で、Wu Tang Clanの「Can It Be All So Simple」がサンプリングされています。なんといっても最後の最後にくるサビメロが素晴らしく、Drakeの「Nice For What」(2018年全米1位)など数多くカバーもされています。

Glory Box / Portishead 95

まさか今週PortisheadのBeth Gibbonsのアルバムが全英チャートで登場するとは思いませんでしたが、イングランドはBristolで結成されたヒップホップ、ロックユニットPortisheadのデビューアルバム『Dummy』(全英2位)からカットされて全英13位を記録しています。Issac Hayesの「Ike's Rap Ⅱ」がサンプリングされていますが、バックのサンプリング、ギター、そしてエモーショナルなボーカルが一体となって時代を超えて愛されているポップの名曲になっています。