1984年の全米1位曲 | ver.5 - 洋楽チャートをデータと共に

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1984年の全米1位曲 (19)



1984年はブリティッシュインベイジョンの波が83年をピークに落ち着き始め、全米から新しいスターが次々と登場していきます。その一人がPrinceで、自身を映画化した『Purple Rain』で世界的なブレイクを果たします。そして女性ポップシンガーの時代を開いたCyndie LauperとMadonnaでした。またUKからはGeorge Michael(Wham)が全米に上陸。80年代ヒットメイカーのPhil Collinsもこの年に初の全米1位を獲得しました。全米1位こそなかったもののBruce Springsteenは『Born In The USA』を発表。音楽全体の流れとしてはシンセポップが後退し、ギターロックが再び勢いを盛り返し、ロックとポップスが再び分かれ始めます。



■ Owner Of A Lonely Heart / Yes 2W

『こわれもの』や『危機』で知られるロンドンで結成されたプログレッシブロックバンドYesの全米1位曲です。デビューアルバム『Yes』で1969年にデビューをし、1972年には「Round About」が全米13位のヒットを記録します。やがて80年代に入るとBagglesのTrevor Hornを加え、ニューウェーブに影響を受けたポップな曲を作るようになります。そして1983年11月に発売された11枚目のアルバム『90125』からシングルカットされた「Owner Of A Lonely Heart」が1月21日付と1月28日付で2週間1位を記録しました。突然拘束されて裁判にかけられる男の姿を描いたPVは音楽に合わせて時々フラッシュされるショッキングな映像と共に話題となりました。



■ Karma Chameleon / Culture Club 3W

ブリティッシュインベイジョンの中心的なバンドであったロンドンで結成されたロックバンドCulture Clubの全米1位曲です。Culture Clubは1982年にデビューすると「Do You Really Want To Hurt Me」が全米2位を記録すると、「Time」(全米2位)「I'll Tumble 4 Ya」(全米9位)と次々とビッグヒットを放ち人気バンドとなっていました。満を持して1983年10月に発売された2ndアルバム『Colour By Numbers」から「Karma Chameleon」がカットされると2月4日付から2月18日付まで3週間1位を記録しました。邦題が「カーマはきまぐれ」ですが、Boy George が女装するアーチストだったことから「オカーマは気まぐれ」とも言われていました。曲はCulture Clubらしいラテンのリズムと美しいコーラスが魅力のナンバーで、カラフルながらR&B、ソウルな雰囲気がバックにあることがビッグヒットの要因でした。日本では特に人気者となり、日本のみで発売された日本語で歌われたシングル「危ないストリート」があったり、PVでは日本の芸者が登場したりしていました。



■ Jump / Van Halen 5W

カリフォルニアで結成されたハードロックバンドVan Halenの全米1位曲です。1974年にVan HalenはEddie Van HalenとAlex Van Halenの兄弟にDavid Lee RothとMichael Anthonyの4人で結成され、1978年にはデビューアルバム『Van Halen』(全米19位)をリリースします。Eddie Van Halenの両手を使った速弾きやパワフルなロックパフォーマンスが話題となり人気バンドとなると、1982年にはMichael Jacksonのアルバム『Thriller』の「Beat It」にEddie Van Halenが参加してポップファンにも知名度を上げていました。そして6枚目のアルバム『1984』からリードトラックの「Jump」が2月25日付から3月24日付まで5週間1位を獲得しました。David Lee Rothのパワフルなボーカルとパフォーマンス、間奏のEddie Van Halenの(ライトハンド)ギターソロからシンセサイザーソロ、そしてAlex Van Halenの迫力のドラムと全てが神がかっていて、最初から最後までキラキラとした輝きがあるナンバーです。



■ Footloose / Kenny Roggins 3W

1984年にはケビンベーコンが主演した映画『Footloose』が大ブームになります。9曲中6曲がTop40ヒット、3曲がTop10ヒットとなったサントラからKenny Rogginsが歌うタイトルトラックが3月31日付から4月14日付まで3週間1位を記録します。Kenny Rogginsはワシントン出身のシンガーソングライターで、1970年にLoggins & Messinaとしてデビューを果たし、1977年にソロ活動をすると、1979年には1980年Grammy賞のSong Of The Yearに輝いたDoobie Brothers「What A Fool Believes」を作曲するなど作曲家としても知られるようになります。そして1984年には「Footloose」が全米1位に輝きますが、これまでのAORな曲とは違い、映画に合わせたロックでダンサブルなサウンドになっています。このヒットの後はサントラからのヒットが続き、映画『Top Gun』から「Danger Zone」(全米2位)、映画『Over The Top』から「Meet Me Half Way」(全米11位)がヒットしました。



■ Against All Odds (Take A Look At Me Now) / Phill Collins 3W

イギリスはChiswick出身のPhil Collinsの全米1位曲です。Phil CollinsはUKのプログレッシブロックバンドGenesisのドラマーとして1970年から活躍し、1980年にはソロデビューを果たして、1981年には「In The Air Tonight」が全英2位、全米19位のヒットを記録します。そして1982年にはSupremesのカバー「You Can't Hurry Love」で初の全英1位を記録、全米でも10位のヒットを記録しました。そして1984年に映画『カリブの熱い夜』サントラからPhil Collinsらしい美しいメロディと優しいボーカルが光るバラード「Against All Odds」(「見つめていたい」)が4月21日付から5月5日付まで3週間1位を記録しました。



■ Hello / Lionel Richie 2W

Lionel Richieのアルバム『Can't Slow Down』から「All Night Long」に続き4曲目の全米1位を獲得しています。5月12日付から5月19日付まで2週間1位を記録。Lionel Richeiらしい泣きのバラードですが、PVがまた素晴らしく、盲目の少女とそれを支える先生という愛と感動のストーリ-になっています。ストーリーが展開する中でLionel Richieがこの曲を歌うのですが、Lionel Richieに電話をかけてくる少女にたいして「Hello」といっただけで電話を切ったり、少女が作った先生の彫塑像を見せるときにも突然「Hello」と歌いだすなど名ビデオながら笑える内容になっています。



■ Let's Hear It For The Boy / Deniece Williams 2W

映画『Footloose』から「Let's Hear It For The Boy」が5月26日付と6月2日付の2週間1位を記録していました。歌っているdeniece Williamsはインディアナ出身のソウルシンガーで、1975年の「Free」(全英1位、全米25位)のヒットでブレイクし、1978年には「Too Much、Too Little、Too Late」で全米1位を獲得していました。Tom SnowとDean Pitchfordの作曲でプロデューサーはGerge Duke。ダンスが下手な男の子を主人公のケビンベーコンがレッスンするシーンで流れていたのがこの曲で、映画のワンシーンがそのままPVという感じでした。躍動感あふれるダンストラックで、映画を知らなくとも心が踊るポップサウンドです。



■ Time After Time / Cyndi Lauper 2W

ニューヨーク出身のシンガーソングライターCyndi Lauperの全米1位曲です。アルバム『She's So Unusual』から2曲目のカットで、6月9日付と6月16日付の2週間1位を記録しました。1984年は女性ポップシンガーが活躍した年で、Cyndi LauperとMadonnaがこの年活躍したことで女性シンガーの時代が到来しました。Cyndie Lauperのデビュー曲となる「Girls Just Wanna Have Fun」はまだ抑圧されていた存在だった女性に対して「女性だって楽しまなくちゃ」と歌ったこの年の象徴的なナンバーで、全米2位に入った他に世界中で大ヒットしました。続く、この曲はしっとりと歌うバラードで、Cyndi Lauperが演じるドラマのようなPVもあって全米1位までたどり着きました。Cyndi Lauperはこの後2曲がTop5入りを果たし、デビューアルバムから4曲をTop5内に送り込むことになりました。80年代の名曲として知られますが、1998年にはInojがカバーして全米6位のヒットを記録しています。



■ The Reflex / Duran Duran 2W

ブリティッシュインベイジョン中心バンドの一つDuran Duranの初の全米1位獲得曲です。6月23日付と6月30日付の2週間1位を記録しています。アルバム『Seven & The Ragged Tiger』からの3曲目のカットで、もともとシングル向きでない曲をChicのNile Rogersが「Fle Fle Fle Reflex」の名イントロとともにクールなナンバーにミックスしてヒットしました。もともとビジュアル的に人気がありましたが、メンバーがそれぞれ輝きながら歌うPVも反響があり、日本でも当時凄い人気でした。これによりDuran DuranとNile Rogersの関係が強くなりその後もヒットを次々と生み出していきます。



■ When Doves Cry / Prince & The Revolution 5W

1978年にミネアポリスから登場したPrinceの初の全米1位曲です。Princeはシンセサイザーを使ったファンクサウンドで活躍をしますが、1982年は『1999』の大ヒットで一気に人気アーチストとなります。続くアルバム『Purple Rain』は自身を描いたPrinceが主演する映画で、この年を席巻します。「When Doves Cry」は7月7日付から8月4日付まで5週間1位を記録して、1984年の全米年間シングル1位に輝きます。ねっとりとしたファンクのリズムにまるで念仏のようなループするメロディ。一度聞いたら癖になりそうな魔力を持ったナンバーです。合わせ鏡のPVは映画のシーンも含めてMTVで流れまくり、Princeをトップミュージシャンに押し上げました。



■ Ghostbusters / Ray Parker Jr. 3W

デトロイト出身のR&BシンガーRay Parker Jr.の全米1位曲です。70年代にはセッションミュージシャンや作曲家として活躍し、やがてR&BグループRaydioのメンバーとしてチャートヒットを放ちますが、1982年にはソロとして「The Other Woman」が全米4位を放ちます。1984年には映画『Ghostbusters』のタイトルトラックを担当し、映画のヒットとともに8月11日付から8月25日付まで3週間1位を記録します。曲はとにかく「Ghostbusters」というタイトルをコール&レスポンスの形で歌わせるCMチックなナンバーで、PVでは刑事コロンボ(役)に大草原の小さな家のローラ(役)などがこの「Ghostbusters」と歌っています。



■ What's Love Got To Do With It / Tina Turner 3W

テネシー出身のシンガーTina Turnerの全米1位曲です。Tina Turnerのデビューヒットが1960年「A Fool In Love」だったので、Tina が全米1位を獲得するまで24年をかかったということでも有名です。60年代にはIke & Turnerとして、やがてソロとして活躍していたTina Turnerですが1984年にリリースしたアルバム『Private Dancer』が転換期となります。アルバムからの先行シングル「Let's Stay Together」が26位に入り、ソロとして初のTop40ヒットを生み出すと、続く「What's Love Got To Do With It」が9月1日付から9月15日付まで3週間1位を獲得します。曲はTina Turnerのハスキーでパワフルなボーカルの魅力が良い味を出している名曲で、特にサビのシャウトはTina Turnereのボーカルなければこの切なさはあり得ないというぐらいにハマっています。この曲でGrammy賞も受賞し、人気アーチストとなり、80年代にはヒットを連発するようになります。



■ Missing You / John Waite 1W

ロンドンで結成されたロックバンドThe Babysのメンバー John Waiteの全米1位曲です。John Waiteは1982年にソロデビューを果たしますが、1984年に発売された2ndアルバム『No Brakes』から「Missing You」が9月22日付で1週間1位を記録します。1週間の1位ながら80年代の名曲とも言われるロックバラードで、John Waiteの飾り気のない独特の歌い方、曲はサビまでの高揚感が最高です。PVは映画俳優さながらにJohn Waiteが演じるPVが話題となりヘビーローテーションされて全米1位に繋がりました。John Waiteはこの後1989年にはBad Englishとして再び全米1位を獲得しています。



■ Let's Go Crazy / Prince & Revolution 2W

Princeの大ヒット映画『Purple Rain』サントラのオープニングナンバー「Let's Go Crazy」が9月29日付から10月6日付まで2曲目の全米1位を獲得しています。Princeの当時の勢いを感じさせるファンキーなロックナンバーです。個人的にはThe Revolutionの独特のドラムとラストのまるでライブのようなジミヘンばりのギターソロが最高に素晴らしいと思います。



■ I Just Called To Say I Love You / Stevie Wonder 3W

ミシガン出身で、1963年には11歳 Little Stevieとして「Fingertips」で全米1位を獲得した天才ソウルシンガーStevie Wonderの8曲目の全米1位曲です。Stevie Wonderは70年代にはGrammy Album Of The Yearを3枚連続で獲得するなど大活躍をしますが、80年代に入ってからは70年代ソウルとは違ったポップな路線に変化しながらも活躍を続け、1982年にはPaul McCartneyとの「Ebony And Ivory」が全米1位を7週間記録していました。Stevie Wonderの邦題「心の愛」は全米チャートでは10月13日付から10月27日付まで3週間1位を記録しますが、日本では特に大ヒットしたナンバーです。70年代のちょっと酔うようなソウルサウンドとは違った直球のバラードナンバーで、どちらかといえばアダルトコンテンポラリーな作風になっています。



■ Caribbean Queen ( No More Love On The Run) / Billy Ocean 2W

トリニダード・トバゴ出身でロンドンで活動をしていたBilly Oceanの全米1位曲です。11月3日付と11月10日付の2週間1位を記録しています。Billy Oceanは1976年にデビューを果たし、「Love Really Hurts Without You」が全英2位のヒットを記録するなど活躍をしていました。世界的なブレイクとなったのはこの曲が収録されている『Suddenly』からで、全米チャートで「Caribbean Queen」(1位)、「Loverboy」(2位)、「Suddenly」(4位)とビッグヒットを連発して、人気アーチストとなりまsちた。「Caribbean Queen」はディスコサウンドをアダルトコンテンポラリー風に上手く消化したナンバーで、Motown出身のLionel Richieとは違ったR&Bサウンドでした。UKからのソウルシンガーで、どこかトロピカルな部分もありますが、Billy Oceanの素晴らしいのはそのソングライティングで、80年代には名曲を次々と生み出していきました。



■ Wake Me Up Before You Go- Go / Wham ! 3W

イギリスはBusheyで結成されたGeorge MichaelとAndrew RidgeleyのコンビWham!の全米1位曲です。この後ソロとしても活躍を見せるGeorge Michaelの初の全米1位でもあり、11月17日付から12月1日付まで3週間1位を記録しています。1983年にデビューを果たし、イギリスでは「Young Guns」(全英3位)、「Wham Rap」(全英8位)、「Bad Boys」(全英2位)、「Club Tropicana」(全英4位)とシングルヒットを連発して人気グループとなります。1984年には2ndアルバム『Make It Big』を発表しますが、ここから「Wake Me Up Before You Go-Go」を含む3曲が全米1位を獲得するなど世界的にビッグヒットとなり、伝説のグループとなります。この曲は60年代MotownのSupremesのリズムを使ったオールディーズ風ポップナンバーですが、サビで「Before You Go-Go」とGoを2連続で使っているところが素晴らしく、80年代から90年代と大活躍するGeorge Michaelの作曲のポップセンスが光るナンバーです。



■ Out Of Touch / Hall & Oates 2W

80年代に次々と全米1位を生み出してきたHall & Oates6曲目の全米1位曲です。12月8日付と12月15日付で2週間1位を記録しています。フィリーソウルグループにして絶妙なポップセンスで人気グループのHall & Oatesですが、バンド色、ロック色を強くしたアルバム『Big Ban Boom』からのリードカットなります。インパクトのあるサビメロは勿論魅力ですが、Daryl Hallの軽やかなステップを披露するPVがまた最高に良いです。



■ Like A Virgin / Madonna 6W

1984年は重要なアーチストの初の1位が数多く生まれていますが、その最後となるのが女性ポップシンガーのトップといっていいMadonnaの初の全米1位でした。12月22日付から1月26日付まで6週間1位を記録しました。この6週間というのは1983年の「Say Say Say」以来のビッグヒットで、インパクトを与えました。Madonna は1983年にアルバム『Madonna』でデビューしますが、1984年には「Lucky Star」が全米4位のヒットとなり一躍人気となりました。当時Cyndie Lauperが活躍していたこともあって女性ポップシンガーはMadonna派とCyndie派と人気を二分していました。「Like A Virgin」は勢いの乗るMadonnaがChic のNile Rogersと組んで作られた2ndアルバム『Like A Virgin』からのリードトラックで、そのタイトル、ベニスで撮影されたPV、Nile Rogersのグルーブが効果的に働きました。作曲はBilly SteinbergとTom Kelly。この1位はMadonnaの人気を決定づけましたが、Madonnaが現在まで活躍するには実は同時進行で進んでいたプロジェクトが大きく働きます。映画『Vision Quest』のサントラ参加、そして自身も映画『Desperately Seeking Susan(マドンナのスーザンを探して)』に入っていました。1985年は一気にMadonna一色となる活躍の前触れでした。



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