2005年の全米1位曲 (8)
2005年の状況はまず2000年以降不振を極めていたMariah Careyがレーベルを移籍し、ヒップホップ、R&B色の強いアルバム『Emancipation Of Mimi』をリリースして大成功したことがあります。また、作曲家として2000年以降活躍していたKanye Westが自身の2ndアルバム『Late Registration』でシングルアルバム共に1位を記録してラッパーとして成功を治めます。この年活躍したのは他にNo DoubtのボーカルだったGwen Stefani、そしてアメリカンアイドル初代チャンプのkelly Clarkson。R&BではChris Brownのデビューもありました。またUKのバンドColdplayがアルバム『X&Y』とシングル「Speed Of Sound」で全米でブレイクし、一気に世界的なバンドになりました。その英国ではArctic Monkeysのデビューシングルが1位を記録し、衝撃を与えます。
バルティモア出身のR&BシンガーMarioの全米1位曲です。MarioことMario Dewar Barrettは2002年にデビューアルバム『Mario』からBiz Markieの「Just A Friendw」をアレンジした曲で全米4位を記録して注目を集めました。そして2004年には2ndアルバム『Turning Point』をリリースし、そこからのカット「Let Me Love You」が1月1日付から2月26日付まで9週間1位を記録します。美しいメロディの光るバラードナンバーですが、注目を集めたのはMarioではなくてこの曲を作曲したShaffer Smithこと後のNe-Yoでした。Ne-Yoはこのヒットにより作曲家として知られることになり、2000年後半からの活躍に繋がりました。
■ Candy Shop / 50 Cent f. Olivia 9W
ニューヨーク出身のラッパー50 Centの3曲目の全米1位曲です。2ndアルバム『The Massacre』から「Disco Inferno」(全米4位)に続くカットで、3月5日付から4月30日付まで9週間1位を記録しています。50 CentとScott Storchによる作プロデュースで、中東アジアのメロディを使ったミッドテンポのラップソングになっています。ニューヨーク出身の女性R&BシンガーOliviaがフューチャーされていて、サビメロでの良いアクセントになっています。2005年の50 Centはまさに絶好調で、同時期にラッパーThe Gameのヒットでフューチャリングされていたこともあり、2005年4月2日付では1位「Candy Shop」、5位「Disco Inferno」(50 Cent)、6位「Hate It Or Love It」(The Game f. 50 Cent)、8位「How We Do」(The Game f. 50 Cent)とTop10内4曲ランクインするという出来事がありました。
■ Hollaback Girl / Gwen Stefani 4W
カリフォルニアで結成されたスカロックバンドNo DoubtのボーカルGwen Stefaniの全米1位曲です。Gwen StefaniはNo Doubtとして1995年に大ヒットを記録し、「Don't Speak」はシングル盤発売こそされなかったもののラジオエアプレイで16週間1位を記録します。2001年にはEveの「Let Me Blow Ya Mind」にフューチャーされて全米2位を記録しポップスターとしての足掛かりを作ると、2004年にソロデビューアルバム『Love,Angel,Music,Baby』をリリースします。1stシングル「What You Waiting For?」は全米最高47位と予想外の結果となりますが、Dr Dreがプロデュースした2ndカットの「Rich Girl」は7位とTop10ヒットとなり、その勢いでリリースされた3rdカットの「Hollaback Girl」はチアガールに扮したダンスPVに、売れっ子プロデューサーNeptunesの作プロデュースということもあって人気となり、5月7日付から5月28日付まで4週間1位を記録しました。Gwen Stefaniはその後も強い女性のキャラクターも相まってポップスターとしてシングルヒットを連発していきました。
■ We Belong Togther / Mariah Carey 14W
Mariah Careyの16曲目となる全米1位曲です。Mariah Careyは2000年に「Thank God I Found You」が15曲目の全米1位を獲得して以降、しばらく不振の時期を迎えます。2001年に発売された『Glitter』は全米最高7位となり、シングル「Loverboy」が2位を記録するもののどちらも全米1位は獲得できませんでした。2002年には『Charmbracelet』をリリースしますが、アルバムは全米3位を記録するもののTop40ヒットも生まれないという状況となりました。
2001年にこれまで所属していたColumbiaレーベルからVirginに移籍し、2002年からはIslandレーベルに移籍をします。2005年Islandレーベルからリリースされた10枚目のアルバム『Emancipation Of Mimi』はヒップホップ、R&B色の強いアルバムで、1stカットされた「It's Like That」はJermain Dupri作プロデュースのヒップホップなナンバーで全米20位の記録ながら新しいMariah Careyを印象付けます。そして2ndカットされたのはMariah Careyが得意としていたバラードながら、Jermain Dupriらしいヒップホップの香りも残る「We Belong Together」で、これが全盛期を彷彿とさせるパワフルなボーカルも話題となり全世界で大ヒットを記録しました。全米では6月4日付から6月25日付、7月9日付から9月10日付までの合計14週間1位を記録。Bobby Womackの「If You Think You're Lonely Now」とDeeleの「Two Occasions」から歌詞を引用しています。
■ Inside Your Heaven / Carrie Underwood 1W
TV番組「American Idol」の4代目Winnerとなったオクラホマ出身のCarrie Underwoodの全米1位曲です。過去のチャンピオンだったKelly Clarkson、Rubben Studdard、Fantasiaと大ヒットを記録しておりこの当時のフィーバーぶりを物語ります。7月2日付で1週間1位でした。デビュー曲こそポップソングだったCarrie Underwoodですが、女性カントリーシンガーとして活躍し、2018年までに6枚のアルバムを全て2位以上を記録。ポップチャートで1位こそないものの「Before He Cheats」は全米8位を記録するなど人気カントリーシンガーとして活躍をしました。
■ Gold Digger / Kanye West f. Jamie Foxx10W
アトランタ出身のラッパーKanye Westの全米1位曲です。Kanye Westがその名を知られるようになった最初はJay-Zの2001年のアルバム『The Blueprint』でした。このアルバムで4曲を作曲し、その1曲は全米チャートで8位のヒットとなった「Izzo」でした。この曲によりJay-Zはポップチャートの常連となっていき、Kanye Westは作曲家として活躍が始まります。2002年には初のソロアルバム『College Dropout』をリリースして3曲をTop40に送り込みます。2003年から2004年にかけては作曲家としてLudacrisの「Stand Up」(全米1位)、Alicia Keysの「You Don't Know My Name」(全米3位)、Twistaの「Slow Jamz」(全米1位)といったビッグヒットを生み出します。そして2005年に2ndアルバム『Late Registration』をリリースすると初週で86万枚を売り上げて1位を獲得し、一気にトップスターとなっていきました。そこから2ndカットとなったのが「Gold Digger」で、9月17日付から11月19日付まで10週間1位を記録しています。Kanye Westはサンプリングした曲をまるで楽器のように操る天才でした。「Gold Digger」もRay Charlesの「I Got A Woman」をサンプリングしているのですが、映画『Ray Charles』でRay Charles役をしていたJamie FoxxにRay Charles風に歌わせて、それを曲に取り入れています。Kanye Westの天才ぶりが伝わるナンバーです。
■ Run It / Chris Brown 5W
バージニア出身のR&BシンガーChris Brownの全米1位獲得曲です。Usherの大ヒットにより男性ソウルボーカルが注目を集めていた中で、16歳の若き青年がScott StorchとSean Garrettの作プロデュースによりデビューを果たし、11月26日から12月24日付までの5週間1位を記録しています。The Waitressesの「I Know What Boys Like」をサンプリングし、Lil Jonを中心としたCrankの音を取り入れたダンスナンバーで、Usherの大ヒット「Yeah」と近いところにあります。Chris Brownは鮮烈なデビューで登場しますが、その後もシングルヒットを連発しながら独自に進化をしていき、ついにはUsherを超えるような活躍を見せるR&Bシンガーへなっていきます。
■ Don't Forget About Us / Mariah Carey 2W
Mariah Careyの17曲目の全米1位曲です。12月31日から1月7日付けまで2週間1位を獲得しまています。「It's Like That」などMariah Carey復活の立役者でもあるJermain Dupriの手によるメディアムテンポのヒップホップナンバーで、アルバム『Emancipation Of Mimi』の追加収録曲ということで、I Tunesのダウンロードが解禁になってからチャートでは一気に1位獲得となりました。