2019年の全米1位曲 | ver.5 - 洋楽チャートをデータと共に

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過去と現在の洋楽シーンをチャートデータをもとに紹介するページ(週一更新予定)

2019年の全米1位曲(15)




■ Without Me / Halsey (1/12,1/26) 2W


withoutme


  1994年ニュージャージ生まれの女性シンガーソングライターHalseyのソロとしての初の全米1位獲得曲です。Halseyは2015年に『Badlands』でデビューを果たし「New Americana」が全米60位のヒットを記録します。2016年にはThe Chainsmokersの「Closer」でフューチャーされて全米1位を獲得。2017年の2ndアルバム『Hopeless Fountain kingdom』からは「Now Or Never」が17位、「Bad At Love」が5位と着実に順位を上げてきて、今回のシングルで全米の頂点に立ちました。1月12日付でStreamingsが32.4Mで4位、Digital Salesが39,000回で2位、Radio Airplayが95.5Mで3位でした。1週間1位を譲りますが、1月26日付では新しいバージョンのPVが到着した影響で再び1位を獲得して通算2週間1位を記録しました。
 「Without Me」はJustin Timberlakeのヒット「Cry Me A River」を使ったバラードでサビメロの美しさは一度聴いたら忘れられない魅力があります。Halseyの体を張ったPVも印象的で最終的には29週間Top10、52週間Top40入りするロングヒットを記録しました。



■ Sunflower / Post Malone & Swae Lee (1/19) 1W


sunflower


  ニューヨーク出身のヒップホップシンガーPost MaloneとRae SremmurdのSwae Leeによる全米1位獲得曲です。映画『Spider Man Into The Spider Verse』からの曲で、Post Maloneにとっては3曲目、Swae LeeにとってはRae Sremmurdの「Black Beatles」以来、ソロとしては初の1位獲得でした。1月19日付でStreamings Songsが47.6Mで1位、Digital Salesが48,000回で1位、Radio Airplayが60.8Mで10位でした。
 「Sunflower」はヒップホップ出身の二人が組んだだけにヒップホップな感じは残るものの映画の感じに合わせたポップナンバーで、美しいメロディのサビが魅力的です。特にPost Maloneにとってはポップシンガーとしての道を開いたナンバーとなりました。最終的には33週間Top10、53週間Top40入りするロングヒットとなっています。



■ 7 Rings / Ariana Grande (2/2~3/2、3/23~4/6) 8W


7rings


 2017年に「Thank U, Next」で初の全米1位を獲得したAriana Grandeの次のシングル「7 Rings」も全米1位を獲得しました。2月2日付でPVが公開されたこともありStreamings Songsが85.3Mで1位、Digital Salesが96,000回で1位、Radio Airplayが27.5Mで39位記録しました。アルバム『Thank U, Next』が発売された2月23日付では1964年のBeatles以来となる1位「7 Rings」、2位「Break Up With Your Girlfriend, I'm Bored」、3位「Thank U, Next」という上位3曲を独占する出来事がありました。2月2日付から3月2日付まで1位を記録した後、Lady GagaとBradly Cooperに1週間、Jonas Brothersの「Sucker」に1週間1位を譲り、3月23日付から4月6日付まで1位を記録してAriana にとっての最高記録となる通算8週間1位を記録しています。
 「7 Rings」は映画『Sound Of Music』の「My Favorite Things」を下敷きにしたヒップホップナンバーで、7つの指輪というタイトルは婚約解消後に友人と買ったリングに由来するようで「Thank U,Next」とある意味裏表のようなナンバーになっています。PVはNicki MinajのPVのようなお尻ダンスがあって、これまでのコケティッシュなArianaとは違ったアダルトな雰囲気を漂わせています。



■ Shallow / Lady Gaga & Bradley Cooper (3/9) 1W


shallow


   ニューヨーク出身のポップシンガーLady Gagaが主演した映画『A Star Is Born』サントラから「Shallow」が1位を獲得しています。映画監督でLady Gagaの相手をしたBradley Cooperとのバラードで、曲がアカデミー賞の賞を受けたことで前週の21位から一気に全米1位獲得となり、Lady Gagaにとって4曲目の全米1位獲得となりました。3月9日付でStreamings Songsが27.3Mで9位、Digital Salesが115,000回で1位、Radio Airplayが34.8Mで27位でした。
 ここ最近のアップテンポのヒットの中で珍しいサントラらしいバラードナンバーで、曲が発表された昨年でも高い評価がありました。Lady Gagaにとっても女優、また次のステージに向けての転換点となる大ヒットとなりました。



■ Sucker / Jonas Brothers (3/16) 1W


sucker


 ディズニーチャンネルから登場したニュージャージー出身のポップバンドJonas Brothersの初の全米1位獲得曲です。Jonas Brothersは2007年の2ndアルバム『Jonas Brothers』が5位に入りブレイクすると、2008年に3rdアルバム『A Little Bit Longer』で全米1位を獲得し、シングル「Burnin Up」が5位に入るなど人気ポップバンドとなります。しかし2013年にバンドは解散、各メンバーはソロ活動に入り、Nick Jonasは「Jealous」で7位のヒットを、Joe JonasはDNCEを結成して「Cake By The Ocean」が9位のヒットを記録します。そして2019年に再結成を行い、発表されたシングルで1位獲得となりました。3月16日付でStreamings Songsが43.7Mで1位、Digital Salesが88,000回で1位、Radio Airplayが22.6Mで46位でした。その後ラジオエアプレイで1位獲得するようになりTop10内を22週記録するなどロングヒットとなります。
 曲はMaroon 5のような、またはJoe Jonasの参加したバンドDNCEのようなファンキーなロックトラックです。クラップが途中からずっと入るなどメロディアスでライブで聞きたいと思わせます。作曲にはJonas Brothersに加えてヒットメイカーRyan Tedderが関わっています。



■ Old Town Road / Lil Nas X f. Billy Ray Cyrus (4/13~8/17)19W


oldtownroad


 アトランタ出身のラッパーLil Nas Xの初の全米1位獲得曲です。カントリーのバンジョーのリフのメロディが印象的なラップナンバーで、これが動画投稿サイトTik Tokで使われるようになり爆発的なStreamingsを稼ぎました。4月13日付でStreaminsが46.6Mで1位、Digital Salesが22,000回で3位、Radio Airplayが11.9Mでした。4月5日にカントリーシンガーBilly Ray Cyrusをフューチャーしたバージョンをリリースして、PVも公開されると歴代1位となるStreamings143Mを記録しました。フューチャリングされたBilly Ray Cyrusにとっては1992年の「Achy Breaky Heart」以来となる2曲目の善美1位獲得となりました。その後は高いStreamingsをバックに歴代1位最長記録となる19週間1位を獲得して歴史に名前を刻みました。
 ラップのネタにカントリーを使うという発想が素晴らしく、切ないメロディと「Old Town Road」のLyricがカントリーの本場全米以外でもヒットさせました。またこの曲はカントリーだけでなくインダストリアルロックのNine Inch Nailsの「34 Ghost Ⅳ」もサンプリングしていて、Lil Nas Xの聴いてきた音楽の広さがヒットに繋がったと言えます。



■ Bad Guy / Billie Eilish (8/24) 1W


badguy


 ロサンゼルス出身の17歳の女性シンガーソングライターBillie Eilishの初の全米1位獲得曲です。Billie Eilishは2016年に兄Finneasと共に作った「Ocean Eyes」をリリースしてデビューしますが、これが徐々に人気を獲得していきEPアルバム『Don't Smile At Me』はロングヒットを記録していました。そして2019年に同じく兄Finneasと共につくったデビューアルバム『When We All Fall Asleep, Where Do We Go?』は全米1位を獲得し、「Bad Guy」を含む5曲がTop40に入りました。「Bad Guy」はアルバム発売時の4月13日付でデビューしますが、同じ時期に1位を獲得したのがLil Nas Xの「Old Town Road」ということもあり、その後20週間かけての1位でした。8月24日付でStreamingsが39.1Mで3位、Digital Salesが20,000回で6位、Radio Airplayが93Mで6位でした。
 兄Finneasの書くポップなメロディと低いデジタルビートの音はBillie Eilishの独特な世界と相まって独創的なナンバーとなっています。曲そのものはダンストラックですが、曲が発表されるとロック系のアーチストから評価を受けたりロック系のラジオで1位を獲得するなどロック的に評価をされています。また17歳という視点から書かれた歌詞が同世代であるティーンの共感を生み、この年を代表するヒットとなりました。



■ Senorita / Shawn Medes & Camila Cabello (8/31) 1W


senorita


 カナダ出身のシンガーソングライターShawn Mendesにとって初の全米1位獲得曲です。Camila Cabelloにとっては2018年の「Havana」に続く2曲目の全米1位獲得となりました。8月31日付でStreamings Songsが37.5Mで4位、Digital Salesが22,000回で5位、Radio Airplayが102.4Mで3位でした。全米では1週間だけでしたが、UKチャートでは6週間1位を記録しました。また8月31日付では10位に「If I Can't Have You」が入るなど2曲がTop10にランキングされていました。Producerは売れっ子のBennny Blanco。作曲にはShawn Mendes、Camila Cabello、Benny Blancoの他に計8名がクレジットされています。
 曲はタイトル通りにラテンフレーバーが入ったバラードナンバーで、切ないメロディラインの美しさはどの時代でもヒットしたと思わせるぐらいに高い完成度があります。特にサビフレーズの最後に入る「ウーラララ」が耳に残ります。



■ Truth Hurts / Lizzo (9/7~10/12、10/26) 7W


truthhurts


  デトロイト出身の女性R&BシンガーLizzo(Melissa Viviane Jefferson)の初の全米1位獲得曲です。Netflixで放送された「Someone Great」に使われたことで一気に人気に火が付き、同時期にリリースされたLizzoのアルバム『Cuz I Love You』が2019年5月にリリースされて6位デビューを果たしたことでLizzoの名前が一躍知られるようになります。大柄な体というキャラクターとパワフルなボーカル。曲の雰囲気もあってラジオエアプレイを増やし続け、MTV Video Music Awardでこの曲がパフォーマンスされたことで一気にポイントを上昇させて1位を奪取しました。9月7日付でStreamingsが34.4Mで4位、Digital Salesが53,000回で1位、Radio Airplayが98.4Mで4位でした。9月7日付から10月12日付まで6週間1位を記録した後、Travis Scottに1週間1位を譲り、10月26日付で1週間1位に復帰しています。
 大柄というコンプレックスを歌い上げるのはMeghan Trainorを彷彿とさせますが、前向きで共感を生みやすいキャラクターも大きな魅力です。ヒップホップという形で現代の曲でありながら60年代から70年代のクラシカルな雰囲気も持っているのが魅力です。



■ Highest In The Room / Travis Scott (10/19) 1W


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  ヒューストン出身のラッパーTravis Scottの2018年の「Sicko Mode」に続く2曲目の全米1位曲です。突如曲とPVが発表されたことで10月19日付でStreamings が59Mで1位、Digital Salesが51,000回で2位、Radio Airplayが6.9Mでした。
 Trapの独特のダークな雰囲気もさることながらBjorkの「Amy Of Me」を彷彿とさせるシュールな映像が壮観です。最後の終わり方も余韻たっぷりで盛り上がって終わるあたりがまた印象的です。



■ Someone You Loved / Lewis Capaldi  (11/2、11/16~11/23)3W


someone


  スコットランド出身の23歳シンガーソングライターLewis Capaldiの初の全米1位獲得曲です。2019年前半に全英チャートを始め、世界各国で1位を獲得した後全米に人気が上陸し、徐々にラジオを中心に人気を上げていき11月2日付でRadio Airplayが105.6Mで2位、Streamingsが25.2Mで8位、Digital Salesが24,000回で1位獲得となりました。11月2日付で1週間1位を獲得した後、Selena Gomezに1週間1位を譲り、11月16日付から2週間1位を獲得しています。また1位獲得まで24週かかっていますが、これは2000年のVertical Horizonの「Everything You Want」の26週間に次ぐ記録でした。
 アップテンポの曲が主流となる最近のチャートで数少ないバラードナンバーで、歌詞の切なさにマッチするようなLewis Capaldiのボーカルが素晴らしいナンバーです。UK版のPVは不思議なドラマチックなPVで、USバージョンではLewis Capaldiが登場するPVでしたがどちらも好評だったのがさらにこの曲の魅力を増やしました。



■ Lose You To Love Me / Selena Gomez (11/9) 1W


loveyou


 テキサス出身の女優、シンガーのSelena Gomezの初の全米1位獲得曲です。2009年の「Tell Me Something I Don't Know」(58位)で歌手デビューすると、2015年には「Good For You」が5位を記録していました。突如曲とPVが発表されて11月9日付ではStreamings Songsが38.8Mで1位、Digital Salesが38,000回で1位、Radio Airplayが24.2Mで41位でした。
 デビューシングルから10年と10か月の期間を経ての全米1位ですが、曲はかつての恋人Justin Bieberにあてたものとも考えられ、イントロから徐々にサビに向かって盛り上がっていく構成が素晴らしいナンバーです。サビのコーラスの美しさ、パワーはSelena Gomez初の1位に相応しい荘厳な雰囲気を持っています。同時期にリリースされた「Look At Her Now」では新しい旅立ちを連想させるダンサブルな曲でこちらもヒットしました。



■ Circles / Post Malone (11/30~11/7,1/11) 3W


circles


  ニューヨーク出身のヒップホップシンガーPost Maloneの4曲目の全米1位獲得曲です。アルバム『Hollywood's Bleedings』から2曲目の全米1位で、アルバムからはこの曲を含む5曲がTop10ヒットとなっていました。11月30日付でRadio Airplayが91.1Mで3位、Streamings Songsが23.4Mで5位、Digital Salesが14,000回で6位でした。
 ラップというよりは爽やかなギターポップのナンバーで、メロディメイカーとしてのPost Maloneの魅力が発揮されたナンバーです。Post Maloneは作曲は勿論ギターも弾いていて、文字通りロックスターとなりました。



■ Heartless / The Weeknd (12/14) 1W


heartless


 カナダ出身のR&BシンガーThe Weekndの「Can't Feel My Face」「The Hills」「Starboy」に続く4曲目の全米1位獲得曲です。「Blinding Lights」と共に突如リリースされて12月14日付でDigital Salesが58,000回で1位、Streamingsが30Mで2位、Radio Airplayが26.2Mで38位でした。
 The Weekndがトラップサウンドを取り入れたナンバーで、The Weekndのメロディセンスと独特のダークさが光ります。カジノにのめりこむPVはThe Weekndらしい闇があります。



■ All I Want For Christmas Is You / Mariah Carey (12/21~1/4) 3W


mariah


 90年代に女王と呼ばれたMariah Careyのクリスマス定番のナンバーが全米1位を獲得しました。これで通算19枚目の全米1位獲得となりました。
 Mariah Careyは90年にデビューして以来「Dreamlover」や「Hero」「One Sweet Day」など18曲の全米1位を獲得しています。「All I Want For Christmas Is You」はそんなMariah Careyが1994年に発売したクリスマスアルバム『Merry Christmas』に収録されていたナンバーでした。名盤『Music Box』でキャリアのピークにあったMariahが出したクリスマスアルバムでしたが、全米では予想外に3位という順位になります。またこの曲はSingle盤がリリースされなかったことから(当時はシングル盤のリリースがチャートインの条件だった)Hot100にチャートインせず、エアプレイで12位という記録を残していました。どちらかと言えばヒットしていなかった全米でしたが、日本では1994年の秋にドラマ『29歳のクリスマス」の主題歌に使われ、大ヒットしました。日本のオリコンチャートで2位、売上は海外アーチストでは珍しい109万枚を記録しています。
 流れが変わったのはStreamingsがチャートに反映するようになってからでした。クリスマスの時期が近づくにつれて「All I Want For Christmas Is You」がチャートに登場するようになります。2012年に21位を記録して以来毎年クリスマスの月にチャートに登場するようになり昨年はとうとう3位まで上昇。そして2019年には1位獲得となりました。12月21日付でStreamingが45.6Mで1位、Digital Salesが27,000回で1位、Radio Airplayが34.4Mで27位でした。
 ストリーミングがチャートに反映する前からクリスマスにはクリスマスソングが毎年ヒットしていることからもこの流れはこれから先もチャート改変が起こらない限りは変わらないでしょう。場合によっては今後毎年1位クリスマスに1位を獲得していきチャートイン数と1位獲得週を更新していくかもしれません。とはいえ90年の頃に新しいクリスマスソングを出したMariahの決断が25年後に実を結んだわけで、変に流行のメロディでなく60年代のメロディで勝負したというあたりが不朽の名曲を生みました。