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Favourite Worst Nightmare / Arctic Monkeys Review
デビューアルバムで衝撃のデビューを飾ったUKシェフィールド出身Arctic Monkeysの2ndアルバムです。デビューアルバムにしてUKのロック雑誌NMEで★5(満点)の評価は過大評価かなと正直思いましたが、私もかなり聞き込んでいて去年のMy Bestに選びました。既にデビューアルバムにしてArctic Monkeysの音が完成しているなという印象でしたが、同時にデビューアルバムの評価は2nd以降の活躍にかかるのだろうなとも思いました。
この2ndアルバムは「Brianstorm」がシングルヒットしていますが、シングルヒットを全く考えてないようなアルバムです。UKで1位になった「I Bet You Look Good On A Dancefloor」や「When The Sun Goes Down」のようないわゆる”整ったポップソング”を敢えて入れずに、1stアルバムに収録されていたArctic Monkeys独特の展開の読めない曲が大半を占めます。アレックス・ターナーの今の時代を切り取ったストーリーの歌詞は素晴らしく、それををまくしたてるように曲に詰め込みます。曲と曲の流れは計算されていて、「Brianstorm」から2曲目「Teddy Picker」3曲目「D Is For Dangerous」の息もつかせない展開や、スローな6曲目「Only Ones Who Know」からB Sideに入る「Do Me A Favour」の躍動感のある展開は見事です。7曲目からラストの12曲目まではまるで1曲かのような繋がりですが、特に9曲目「If You Were There Beware」は単独でプログレッシブロックのような曲に仕上がっています。あと、面白いと思ったのは隠れた仕掛けで、2曲目「Teddy Picker」ではDuran Duranの「Save A Prayer」のフレーズが曲の途中で入ったかと思うと、そのアレンジで曲が展開します。4曲目の「Balaclava」では曲の最後でDuran Duranの「Union Of The Snake」のメロディで曲が終わります。曲の途中の「Crime !」と叫ぶあたりも多分何かのパロディのような気がしています。
このアルバムで評価したいのはアルバムの大半を占めているアップテンポのロックナンバーではなくて、数少ないスローまたはミドルテンポのナンバーです。2ndカット予定の「Fluorescent Adolescent」は1stに収録されていた「Mardy Bum」路線のメロディアスなナンバー。このアルバムで唯一のシングル向けの曲らしい曲です。続く「Only Ones Who Know」はArctic Monkeysでは初と言っていいスローバラード。Beach Boysのような懐かしさも感じさせます。そして最後の12曲目のナンバー「505」。オルガンのメロディから始まる切ないラブソングはこのアルバムのハイライトです。徐々に音が増えてきて盛り上がる展開は前作の大曲「A Certain Romance」を彷彿とさせますが、同じようなメロディをアレンジを変えながら繰り返すシンプルなものです。個人的にはCulture Club の「Victims」をロックバージョンにしたような印象を持ちました。
1stの衝撃は無いものの、質の高いアルバムだと思います。ポップなものを消化しながら、あえて表には出さない、Arctic Monkeys流のポップサウンドを感じました。
★★★☆