Classic Pop Album紹介
Fever / Kylie Minogue (01)
- Kylie Minogue
- Fever
Kylie Minogueは80'sにはお馴染み、80年代後半に世界で大活躍した女性ポップアーチストです。当時人気絶頂だったストック・エイトケン・ウォーターマンのサウンドにTVアイドルだったKylieの人気が合さり、向かうところ敵なしの活躍ぶりでした。しかしストック・エイトキン・ウォーターマン(SAW)の勢いが無くなるとともに自然とKylie自身も音楽シーンの表舞台に登場することが少なくなります。時は流れ2000年、『Light Years』はKylieの転換点となります。SAWサウンドから脱却し、Kylie自身がアルバム全体をプロデュース。ちょうどStepsがUKで活躍していてユーロポップが見直されていた時期というのも良かったと思います。アルバムはこれまでのKylieサウンドから考えられないような世界中のポップサウンドを詰め込んだ傑作でした。アルバムから4曲UKTop10ヒットを放った瞬間、MadonnaやJanetと肩を並べるほどのKylie Minogueというスターが誕生しました。
『Fever』は前作『Light Years』で「So Now Goodbye」を作曲したKylie & Steve Andersonのコンビと「Please stay」(UK 10位)を作曲したKylie & Richard Stannard , Julian Gallagherのコンビを中心に作られています。発売前から伝えられていたようにアルバムは80年代前半のNew OrderやHuman Leagueのようなニューウェーブ、テクノポップミュージックのスタイルで統一されています。一方で前作からのワールドワイドポップの要素を持ったメロディアスな部分もしっかりと残しています。アルバム全体にバラードが一曲も入らない思い切った構成ですが、結果としてトータルアルバムのような統一感を生み出しています。
- 1曲目の「More More More」からクールなテクノダンスナンバーがスタートします。大ヒットした「Spinning around」を一歩進めたような印象です。2曲目「Love At The First Sight 」(UK 2位、US23位)はDaft Punk『Discovery』を彷彿とさせるテクノポップス。音を突然こもらせたりするようなエフェクトは最新のサウンドをKylieなりに取り込んでいる印象です。3曲目「Can't Get You Out Of My Head 」(UK 1位、US7位)はリードトラックにして全世界で大ヒットを記録したナンバーです。作曲プロデュースを担当しているのがS Club 7のヒット曲を書いているCathy Dennisで、Human Leagueのような冷たいテクノグルーブにサビのメロディアスなパートを上手く組み合わせています。同じくCathy Dennisが担当した7曲目「Come Into My World 」(UK8位)は「Can't Get..」と同じ路線ながら、東洋の歌謡曲のような歌の部分にBeatlesのようなブリッジをつなぐというアイディアが光ります。他にタイトル曲の「Fever 」はエモーショナルなボーカルとテクノグルーブが見事に噛み合った好ナンバーで、2ndカットとなった「In Your Eyes 」(UK4位)は前作のユーロポップのメロディが上手く生きているナンバーです。またEndingを飾る12曲目「Burning」はアコースティックなサウンドとトランスを融合するというチャレンジを見せています。アルバム全体非常に洗練されていて、ポップアルバムとしては稀にみる完成度の高さがあります。
後日談になりますが、このアルバムが出たあたりからDaft Punkの勢いが無くなったというのも頷ける話です。つまりは最新のテクノサウンドをKylieが吸収し、そして自らが切り開く存在になっていったということでしょう。これは次作『Body Language』で証明することになります。
★★★★