今のカウンセリングルームをオープンしてからの16年間、トラウマ治療と向き合う中でさまざまな心の傷を見て、その回復していく姿にも立ち会わせていただきました。
人間ってすごいですよね。
時間は巻き戻せないから、人はみんな明日に向かって生きていって、過去に戻ることは出来ません。
それなのに、過去の自分を癒すことができる。
過去の痛みを、現在の自分が癒してあげることが出来るんです。
トラウマ治療をすると気持ちが楽になるから、みんな「今の悩みが消えた」と感じるけれど、それはその通りだけどその通りではありません。
過去を引きずった私を癒したようにみえるけれど、過去の私そのものを癒してあげることでもあります。
それがトラウマ治療の根幹的な部分だと私は思います。
人は、今を生きながら過去の自分を癒してあげることができます。
しかも驚くべきことは、それが他人によって付けられた傷であってもそうであるということ。
人は他人に付けられた傷も、その後遺症さえ、自らの手で癒すことが出来てしまう。
でも、もちろんそれを望まない人もいます。
傷が癒えるということに恐れを抱く人もいるし、
他人に付けられた傷をなんで自分で癒さないといけないのかと思うこともあります。
そこにはきっと大きな傷があるのでしょうね。
心の傷を「癒す」というのは何かを塗り重ねて見えなくすることではなくて、本来の状態に戻していくということ。
未来を変えるために、過去に戻ってやり直す、なんていうアニメやゲームがよくありますが、あながちそれは二次元的な話ではないのかもしれません。
過去の私へ心の痛みや怒りを返し、癒していけば、今の私が変わっていく。
それは本来の私に戻るということもでもあるし、過去の悲しみを消化した、新しい私の姿でもあります。