トリル
10:00
セブンイレブンのステンレスマシンから、
セルフサービスで注いだ、Sサイズのコーヒー。
その紙カップの縁に留まろうと飛び回る、
うっとうしいハエを、手の甲で追い払いながら、
どこからこんなに入って来るんだろう、と。
そして昨日、日本人の今井さん(仮名男性40代)が、
彼の家でご馳走してくれた、玉子かけご飯を思い出します。
今までに、たこ焼き、自作した小アジのみりん干し、
お好み焼き等々、食材集めに苦労しつつも、
「試作ですが、どうですか?」と誘ってくれ、
どれも、口からノドを通る時には、
マンガのようにノドが鳴り、
ため息気味に「ぁ、ぉぃしぃ~」(笑
先に味噌汁をだしてくれ、
フィリピンでよく見かける、メラミンの浅いどんぶりに、
盛り上がるほどの野菜がのったモノ、
添えられた割り箸をパチンと割り、
切りそろえられた白菜、ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎを、
一つ一つ口へと、ゆっくり噛みながら、
頭の中で「白菜だよなぁ~、ニンジンだよなぁ~、」と、
一つ一つ味噌汁の具を、
確かめるように食べていき、汁をすすります。
今井さん「味噌汁、ちょっと薄すぎたかも」
ボク、首を大きく振り、
「ぜんぜん、そんなこんなないよ、オイシイ、オイシイ」
そしてまた、具だくさんの味噌汁に集中します。
次は、やはりメラミンの浅いどんぶりに、
ご飯を盛ってくれ、ダウンタウンにある、
会員制スーパー「S & R」で買った、
赤茶で「生食可」の玉子を手渡してくれます。
玉子かけご飯の「まぜまぜセレモニー」は、
自分で楽しんでくださいね、ということです (笑
今、冷蔵庫から出してきた玉子は、
うっすら結露しています。
ビニールのテーブルクロスの角で、
玉子に 軽くヒビをいれ、
両の親指で開くように玉子を落とし、
昨年9月の一時帰国の際、
オレンヂ看板の牛丼屋さんで食べた時以来、
湯気立つご飯上の、生玉子を見つめます。
一粒一粒がしっとりした黄色に光るご飯、
口の中で、その黄色い色を味わうと同時に、
無意識に目を閉じ、
さらにその目蓋を、グッと目に押しつけ、
そうすれば、もっと、もっと味わえる、とでもいうように。
このきれいで、柔らかい歯ごたえ、
包みこむような舌ざわり、そして純な風味、
大げさな言い方をすれば、
ボクはこういうモノを捨てて、
ここフィリピンへ来たのです。
それに見合う、
いいえ、それ以上のモノを、
どうにかして、探し出します。
そんなこんなを考えながら、
冷めたコーヒーを飲みほします。