片側二車線のコンクリート舗装路、マッカーサー・ハイウェイ、
みんなは、ただ「ハイウェイ」と呼びます。
日本では、既に走ることが許されないほど古い大型トラック、
年型式全て不明のジプニー、流行りの大型四駆の新車、
人の数ほどありそうな小型バイクが行き交います。
アグトン・ストリートはハイウェイと交わる、
トリルで唯一、信号がある交差点。
パブリック・マーケットに面し、
ローカルファストフード店、銀行、怪しい携帯電話売り、
質屋(ポーンショップ)、ニセモノ衣類、中古衣類、
そして歩道を勝手に使うバナナやマンゴー露天商たち。
質屋はフィリピンでは一般的で、質種(ぐさ)もありますが、
日本でなじみのない「小口送金窓口」がメインのようです。
人口1億2千万人の10%が「出稼ぎ」の国ですから。
通り沿いにある個人経営のドラッグストア、
間口はシャッター三枚分。
その端に年配のお父さんとお母さんの二人、
お父さんはスピーカーボックスに腰掛け、エレキギターを弾き、
お母さんはしゃがむ格好の低い木の椅子、
右手にマイク、左手にブリキのカップ。
お父さんの足元、バイクから外したバッテリーが電源、
二人とも、目が見えません。
脚を軽く組み、腿にギターを立てるようにおき、
右手が弦を追うお父さん、
そのお父さんに、そっと寄り掛かかり、
孫にでも語りかけるように歌うお母さん。
日に焼け、それとは反対に髪の毛は白くなった二人、
もうどのくらい、ここにいるのでしょう。
スパッツ姿のお婆さんが、ドラッグストアで買い物を済ませ出て来ます。
タスキに掛けたナイロンバッグからコインを、ブリキのカップへ。
通りがかりの、帽子を後ろ前にかぶった若い兄ちゃん、
ジーンズのポケットに手を入れ、コインをブリキのカップへ。
ボクが思ったより、多くの人がコインをカップへ入れ、
「カップへ入れる」というより、
「ただ、そこへ置いた」そう見えます。
そして、みんな「置き慣れて」ます。
お父さんは弦を追い、お母さんは歌い続け、
その前を、途切れることのない人が行き交います。