
大阪教育9月号
子どもと絵本を結ぶ
VOL.173
VOL.173
にて絵本紹介させていただきました。
『アンジュール
ある犬の物語』
ある犬の物語』
ガブリエル・バンサン作
BL出版
文字のない"絵"の本
ある犬が車の窓から捨てられてしまいます。走り去っていく車を追いかける犬。犬はずっと車を追いかけていきますが、車は見えなくなってしまいます。野から浜へ、汀(みぎわ)から道へ、頭をうなだれて歩き続けます。行きついた先で出会ったのは⋯⋯。
ある犬が車の窓から捨てられてしまいます。走り去っていく車を追いかける犬。犬はずっと車を追いかけていきますが、車は見えなくなってしまいます。野から浜へ、汀(みぎわ)から道へ、頭をうなだれて歩き続けます。行きついた先で出会ったのは⋯⋯。
一九二八年にベルギーのブリュッセル郊外ウルックで生まれたモニック・マルタンは音楽好きの両親のもと四人姉妹の三番目として幸せに暮らしました。美術学校に進み、大好きなフェルメールの作品を観ることを楽しみ、自身は独自の技法として色鮮やかな色彩と光を使った作品を最後の試験に提出しました。学校を卒業してからも、色彩を使わないデッサンで、日常的なテーマを描き続けていました。一九八〇年代に絵本作家ガブリエル
・バンサン(ペンネーム)として世に知れ渡りました。
・バンサン(ペンネーム)として世に知れ渡りました。
本書は一九八二年に出版されたガブリエル・バンサンの処女作です。文字が一切なく、炭で描かれた力強いタッチのデッサンで物語が進んできます。タイトルの「アンジュール」はフランス語では「Un jour」(ある日)という意味です。知人の紹介で本書を手にしましたが、迫力ある画と犬の繊細に変化する表情に心打たれ、最後のページをめくるときには目頭が熱くなっていました。
BL出版三十周年記念の書籍『絵本作家ガブリエル・バンサン』では、バンサンの絵本について語らう、もりひさし氏、今江祥智氏、石井睦美氏の対談が掲載されています。生涯四十冊以上の絵本を制作し多くの人を魅了したバンサンの魅力をより深く知ることができます。"絵"の本のすばらしさを体感できる一冊です。

