初めて精神科の閉鎖病棟へ入院した当時
私は高校1年生、16歳だったのですが
7年経とうとする今でも
同じ病棟に入院していたとある女の子の
とある言葉が忘れられずにいます


その女の子は
綺麗な黒髪が似合う
色白でお人形さんのような
可愛らしい子だったのですが
とても小柄で華奢なちまっとした子で

初めて見かけた時に
てっきり歳下の子だと思っていたのですが
あとになって話してみたら
私より2つも年上でした


当時病棟には割と歳の近い女の子達が
何人か入院していて
ホールで顔を合わせては
時々みんなでお話していて
その女の子とも
そこでお話したりしていたのですが

週一回、水曜日の体重測定の日に
その女の子が輪の中で、神妙な面持ちで
朝食後購買のパンをかじっていたんです


その女の子は摂食障害で入院していたので
体重増加が見込めないと
なかなか退院へ繋がらなかったそうで

『1日に食べていい間食の量が決まってるから』
と、その目いっぱい分のパンを
測定前に食べていました


入院中はどうしても管理された生活になりますし
閉鎖病棟のため
基本的には許可なしで病棟から出られず
限られたスペースで
味気ない日常を繰り返すだけになりがちで
自由もきかず、毎日がとてつもなく暇なんです

だから、あそこへ入院していた人で
退院したいと望んでいた人は
大勢いたと思いますし
勿論私も思っていました


でもその子の理由は違ったんです

死にたいから食べてなかったのに
ここに居ると死なせてもらえない…と

この言葉で私は色々なことを考えましたし
今でも時々思い返して考えることがあります

普段顔を合わせると
ニコニコと声をかけてくれるその子が
私の中での彼女の印象だったので
その言葉はますます衝撃的でした


拒食症による極度の栄養失調で意識がなくなり
いつ心肺停止してもおかしくない状態で
救急搬送されてきた彼女は
あまりに痩せ細って骨が浮き
腕では点滴のルートがとれず
肋骨の間に点滴を打ったそうです

入院してしばらくは常時心電図を付け
自由な出入りが禁止された個室の病室で
過ごしたと言っていました


病院は人を生かすための場所です

それが本人の意図とは
異なってしまうことがある現実に
初めて巡り会った私は
色々なことが頭をぐるぐるして

結局彼女には何も言えませんでした


生きるってなんだろう

その人がその人自身の人生を生きるのに
最後は生きていかなきゃいけないのに
そうして生かされることに
彼女は意味を見出せただろうか

今彼女がどうしているのかすら
私には分かりませんが
彼女のその言葉は私の人生に
とても大きな課題を投げかけてくれました