仕事から帰ってきたお母さんの腕が
傷だらけ、痣だらけで腫れ上がっていた

クラスの子が
パニックを起こしてしまったそうで
何度も噛みつかれた腕は
思わず顔を顰めてしまうほど痛々しかった


今年度から再び
特別支援学級を受け持ったお母さん

それより前にも
怒ったその子に噛み付かれた、と
噛み跡の付いた手で
帰ってきたことがあったけれど
その時とは比にならない酷さで
私の方が涙が出そうになってしまった


仕事だから、と笑っていたけれど
家族からしたらそういう問題じゃない

彼女は
小学校の先生である前に
私のお母さんだ


私も違う特性とはいえ
障害を抱えている身だから
本人の意思ではどうしようもないところで
暴走してしまうことがある気持ちは
私なりに理解はできるし
ましてや相手は小学生だ

おまけに今回は
ほかの先生が見かねて間に入ってくれたものの
暴れるその子の首根っこを掴んで
頭を押さえつけたもんだから
火に油どころの話じゃない大炎上になったのも
あるようだ


だけど、なんにせよ
先生はスーパーマンじゃない

仕事だからと腹を括って対峙したって
怪我をしたら痛い
なんでもできるわけじゃない


彼らに対して
ダメなものはダメ、と教えるためには
一度折れたら終わりだ

一貫性がないと混乱してしまって
きちんと伝わらないことが多いからだ

思い通りにいかなくて
怒っても、暴れても、癇癪を起こしても
ダメなものはダメ

怒っても、暴れても、癇癪を起こしても
通用するものじゃないと
伝えなきゃいけないから

どこかで、誰かが教えなきゃいけない
これから彼らが生きていくために

それに腹を括って対峙するのは
ある意味“仕事だから”できることな部分が
大きいのも分かる


お母さんにとってはそれが今の仕事だ

だから、仕事を終えて
変色してボコボコに腫れ上がった腕で
家へ帰ってくることもある


誰が悪いわけじゃないことは分かってる
誰かを責めたいわけでも
誰かに責任を求めたいわけでもないけど

学校の先生だから
お金を頂いているから
なんでもできるわけじゃないことを
もう少しだけ理解して欲しい