病気になってからの年月が
積み重なっていけばいくほど

病気との付き合い方が
少しずつ分かるようになってきて
少しずつ普通の生活を取り戻し始めて

現実に返った時に
今の自分にどれだけのことができないか
目の当たりにして愕然として

また
あれができない、これができない
できていたはずなのに
こんなことまでできなくなってた

と、日々つきつきられる“できない”に
ほんの少しだけ取り戻し始めていた自信が
一本残らずへし折れて

できないことと向き合って
底なしの劣等感と戦う瞬間が
一日に何度も、何度も訪れるようになった


これだけは負けない、負けたくないと
自分を肯定してあげられる
材料だったはずのものが
突然誰よりもできなくなった
あの瞬間の絶望感にまた堕ちる


苦手なことを努力分で必死に埋めて
『なんでもできるね』と言ってもらえていた
あの頃の自分は
時間の経過とともにどんどん遠ざかって

私はどんどん
過去の栄光に縋る人間になっていく

できない自分がどんどん現実味を帯びていく

病気のせいで
できなくなったわけじゃないんじゃないか、
病気を理由に
私が手を抜いてきたんじゃないか、
努力が足りなかっただけじゃないか

病気になったあの時が遠ざかるたび
そこから私は何をしてたんだろう
って話になっていくみたいだ


頑張りたいのに
一定ラインを超えたら
自分が心身はフリーズアウトする

ラインを超えすぎたら
人間らしい生活からかけ離れた
あの時間がもう一度始まって
もう二度とこのレベルにすら
戻ってこられないかもしれない

でも周りとのギャップを埋めるには
今の私の頑張り分じゃ到底足りずに
開き続けるばかりだ


私はこれから死ぬまで
“こんなこともできない”を
追いかけ続けなきゃいけないのかな

“こんなこともできない自分”の時間が
延びていくほどに
“こんなこともできない自分”が
私の価値になってしまうみたいで
怖くてたまらないんだ


人並みの生活が送りたいだけなんだ
人並みってどうしてこうも難しいんだ