慶応大学医学部教授、坪田一男さんの本「ごきげんな人は10年長生きでいる」からです。



「笑う門(かど)には福来(ふくきた)る」というのは、科学でも立証されている事実だ。

笑うと脳に「楽しい」という信号が送られ、ポジティブな思考回路がより強化され、同時に全身にもさまざまなよい変化が生まれる。

そもそも、笑っているときは、必ず「副交感神経」が優位な状態になっている。

そのため、笑いには血糖値の上昇を抑えて動脈硬化を防いだり、血圧の上昇を防いで脳卒中や心筋梗塞を防ぐ力がある。


また、笑うとガンやウイルスと闘うインターフェロンというタンパク質が増える。

そのため、免疫力が高まり、風邪をひきにくくなるし、ガンのリスクも減る。

一番いいのは、友達とおしゃべりしたり、面白いテレビを見たりして、心から思いっきり笑うことだ。


しかも最近では、意識的に笑顔を作るだけでも、ポジティブな感情が高まることがわかってきた。

世の中には面白いことを考える人がいるもので、笑った表情を被験者に作ってもらい、その状態でマンガを読み、面白さに得点をつけてもらうという実験をした人がいる。


その結果、同じマンガを読んでも、笑った表情で読んだときのほうが高得点がついた。

つまり、笑顔は楽しいときに生まれる表情というだけでなく、楽しさを増幅させる力もあることがわかったのだ。


人間は、進化の過程で、どんな表情がどの程度の危険を知らせるものか、どの程度の安全を伝えるものかを学んできた。

その結果、笑顔は最大級の安全だということを、見る者も、脳も学んでいった。

そのため、笑顔の表情が作られると、その筋肉の動きが再び脳にフィードバックされて、「楽しい」という情動を感じる部分が刺激され、楽しいという情動が生まれる。

すると、その信号が再び筋肉に伝わって、笑顔の表情筋がさらに動かされる。

こうして、笑顔はどんどん増幅されていくというわけだ。


また、異常な恐怖を感じたとき、なぜか笑ってしまったという経験はないだろうか。

これは、笑顔には肉体的・精神的な痛みやストレスを緩和する働きがあるためだと言われている。

だから、ネガティブな気持ちのときほど、作為的に笑顔を作ってでも笑うようにしよう。


楽しいときは、大口をあけて大きな表情で笑ってしまおう。

そのほうが幸福度も高まるし、ストレス解消にも、健康にもいいのだ。