中村天風師さんのお話です。


ここに面白い話があります。

古代神話です。


昔、悪魔がある町に現れて、

「今日から、お前たちのものをすべて俺は奪い取ることにする。

しかし悪魔にも情けはある。

明日までに残しておいてほしいものを一つだけ書き出せ。

それ以外のものは一切、俺が奪い去るからな」

と言い残して、悪魔はひとまず立ち去った。


さあ、町の人はてんやわんやの大騒ぎ。

「俺はお金だ」「俺は食いもの」「私は家だ」「いや、私は名誉だ」「私は宝石よ」
と、それぞれいろいろなものを書き出した。


あなた方だったらどうする?

悪魔はたった一つだけしか見逃してくれないんだぜ。

さてさて、一夜明けてみると、その町にはなんと、たった一人の人間だけしかいなく
なっていたとさ。


もうわかったね。

金だ、家屋敷だ、やれ宝石だ、やれ何だと書き出した人々は、もっとも肝心な「命」
を忘れていたんだね。

たった一人だけが「命」と書いていたので生き残ったというお話です。


金だ、家だ、仕事だ、名誉だ、愛だ、って、確かにみんな大切なものではあります
が、命あってのものでしょう。

それ以外は所詮は人生の一部でしかないんですぜ。

罰当たりな現代人よ、人生の一部が手に入った入らないで、悩んでいないか…。




死ぬことと比べたら、どんな大変なことでも、万が一怪我や病気をしても、すべては
「カスリ傷」のようなもの。


死ぬとわかったら、多くの人が、今ある何げない当たり前のような幸せに感謝するこ
とでしょう。


歩けること、空気が吸えること、友や家族と語らえること、大喧嘩(おおげんか)し
たことでさえ、愛(いとお)しくなる。


金も、家も、名誉も、宝石も、いかに大切なものであろうと、死んだらこの世に置い
ていかなければならない。


それなのに人間は、目の前のモノや金や名誉をもっともっと、と欲しがってしまう。


もっとも肝心な、「生かされている」ということに比べたら、すべてはちっぽけなこ
と。


今あることが当たり前じゃなく、すべてのことに感謝の気持ちを大事にしていきま
す!