赤字会社の立て直しを依頼されたら、まず初回面談の前に、最低3期分の決算書を送ってもらいましょう。

ただし、最初に見るべきものは「利益」ではありません。


最も注意すべきなのは、資金ショートです。

今月、来月の支払いや返済ができない。手形や小切手の不渡りが起きそう。
このような状態であれば、事業の立て直し以前に、会社が持ちこたえられない可能性があります。

 

特に資金繰りが厳しい会社の決算書は、そのまま信用してはいけません。

通帳の預金残高は正しくても、つじつまの合わない金額が「現金」「未収入金」「短期貸付金」などの科目で調整されていることがあります。


つまり、決算書上は何とか形が整っていても、実際の資金繰りはかなり危ないということがあるのです。

だからこそ、最初に確認すべきは、この先3カ月から半年の資金繰りです。

資金が不足する見込みであれば、すべての支払いを確認します。
削れる支出は削る。遅らせられる支払いは遅らせる。銀行へのリスケ依頼、親族からの借入、保険の解約、遊休資産の売却など、使える手段を一つひとつ洗い出します。

この段階での目的は、きれいな再生計画を作ることではありません。
まずは会社を倒さないことです。

 

資金繰りに一定の余裕があると確認できたら、次に大切なのは、経営者との信頼関係づくりです。

コンサルタントは、つい早く現状分析をしたくなります。
事業デューデリジェンスを行い、問題点を整理し、改善策を提示したくなる。

 

しかし、事業再生の現場では、いきなり問題点を突きつけると、経営者が心を閉ざしてしまうことがあります。

特に赤字会社の経営者は、すでに多くの不安や孤独を抱えています。
その状態で「ここが悪い」「これが問題だ」と言われても、素直に受け止める余裕がないことも多いのです。

だから初回のヒアリングでは、まず話しやすい雰囲気をつくります。

 

子どもの頃の夢、創業時の想い、これまでの成功体験、苦労して乗り越えてきたこと。
そうしたテーマから、経営者に大いに語ってもらいます。

これは単なる雑談ではありません。


経営者の本音、価値観、守りたいもの、もう一度取り戻したい姿を知るための大切な時間です。

事業再生が本格的に始まると、どうしても資金繰り、借入返済、人員体制、不採算事業など、厳しい話が中心になります。
だからこそ、最初の段階で「本当はどんな会社にしたかったのか」「何を大切にして経営してきたのか」を聞いておくことが重要です。

 

もちろん、経営者の話をすべて正しいと認める必要はありません。
しかし、まずは否定せずに受け止めることです。

「この人には話しても大丈夫だ」
「自分の会社を本気で理解しようとしてくれている」

経営者にそう感じてもらうことが、信頼関係の第一歩になります。

 

赤字会社の初動対応で大切なのは、順番を間違えないことです。

まず資金繰りを確認する。
会社が持ちこたえられる状態をつくる。


そのうえで、経営者との信頼関係を築く。
そして初めて、本格的な現状分析や改善策の検討に入る。

事業再生は、数字だけを見て進める仕事ではありません。
資金を守り、経営者の心を開き、会社がもう一度前を向ける状態をつくる仕事です。

独立して中小企業向けコンサルタントを目指すなら、この初動対応の順番をぜひ覚えておいてください。