中小企業診断士として独立したばかりの頃は、「いかに優れた提案をするか」がコンサルタントの価値だと思っていました。

時間をかけて情報を集め、分析し、役に立つ解決策を盛り込んだ提案書を作る。そうすれば社長は納得し、行動してくれるはずだと考えていたのです。

 

しかし現実は違いました。

提案の場では「なるほど」「よく分かりました」と言ってもらえても、その後の行動につながらないことが少なくありませんでした。

 

振り返ってみると、原因は明確でした。

社長がコンサルティングのプロセスに十分関わっていなかったのです。

最初に話を聞き、最後に提案するだけ。情報整理、課題設定、解決策の検討という大事な部分は、コンサルタント側だけで進めていました。

 

これでは、どれだけ正しい提案でも、社長にとっては「他人が作った答え」です。

中小企業の社長は、独立心と責任感が強い方が多いものです。外部の専門家から一方的に会社を分析され、「こうすべきです」と言われることに抵抗を感じるのは当然です。

 

だからこそ、社長を最初から検討プロセスに巻き込むことが大切です。

問いを投げかけ、一緒に考え、社長自身の言葉で課題や方向性を整理していく。

 

そうすることで、提案はコンサルタントのものではなく、社長自身のものになります。

もちろん、対話には時間も手間もかかります。論理だけで押し切るより、精神的な負担もあります。

 

しかし、社長が理解し、納得し、前向きにならなければ、どれだけ優れた提案も実行されません。

特に、過去にコンサルタントへ不信感を持った経験がある社長ほど、提案より対話が効きます。

 

信頼関係が深まることで、社長の本音が出てきます。本音が出て初めて、行動につながる支援ができるのです。

中小企業コンサルタントに必要なのは、正解を示す力だけではありません。

社長と一緒に答えをつくり、行動に変えていく対話力です。