中小企業向けのコンサルタントとして活動していると、顧問先の経営会議に同席することがあります。

その場で意見を求められたり、会議の進行役としてファシリテーションを任されたりすることもあります。

経営会議は、本来であれば会社の重要な課題を共有し、今後の方針や具体的な行動を決める場です。

 

しかし、実際の中小企業の会議では、必ずしもそうなっていないことがあります。

特に社長の存在感が強い会社では、会議が社長の独演会になってしまうことがあります。

 

社長が話し続け、幹部や社員は黙って聞いているだけ。

意見を求められても、当たり障りのない返事しかしない。

本音を言えば、社長に否定されるかもしれない。

そんな空気があると、会議は「考える場」ではなく、「社長の話を聞く場」になってしまいます。

 

このような場面で、コンサルタントが果たすべき役割は非常に重要です。

もちろん、コンサルタントが社長に代わって結論を出す必要はありません。

また、外部の専門家として一方的に正論を述べるだけでも不十分です。

大切なのは、会議の場を整え、参加者が考え、発言し、行動につながるように支援することです。

 

そのために、まず確認すべきことがあります。

それは、会議の目的とゴールです。

この会議は何のために開かれているのか。

今日、何を決める必要があるのか。

参加者は、会議が終わった後に何をすればよいのか。

これらが曖昧なまま会議を始めると、話は広がるばかりで、結局何も決まらないまま終わってしまいます。

 

そこで、コンサルタントは会議の冒頭で、次のような質問を投げかけるとよいでしょう。

「本日の会議で、必ず決めたいことは何でしょうか」

「今日は、情報共有の会議でしょうか。それとも意思決定の会議でしょうか」

「会議が終わったとき、どのような状態になっていれば成功と言えますか」

このような質問をするだけで、会議の焦点が定まりやすくなります。

 

次に大切なのは、社長だけでなく、幹部や参加者にも考えてもらうことです。

社長が強い会社ほど、幹部は「社長の正解」を探そうとします。

しかし、それでは幹部は育ちません。

幹部に必要なのは、社長の顔色を読む力ではなく、会社全体を見て考える力です。

そのためには、幹部に問いを向ける必要があります。

 

たとえば、次のような質問です。

「この課題について、現場では何が起きていますか」

「数字を見ると、どこに一番大きな問題がありそうですか」

「このまま何もしなければ、3か月後にどうなっていると思いますか」

「現場として、まず何から手をつけるべきだと思いますか」

「社長の方針を実行するうえで、現場で障害になりそうなことは何ですか」

このような質問を投げかけることで、幹部は単なる報告者ではなく、経営課題を一緒に考える立場になります。

また、会議では意見が出ないこともよくあります。

 

その場合、コンサルタントはすぐに自分の意見を言うのではなく、発言しやすい空気をつくることが大切です。

たとえば、次のように聞くことができます。

「正解でなくても構いません。現場感覚ではどう感じていますか」

「少し気になっていることでもよいので、何かありますか」

「反対意見というより、心配な点として出すなら何がありますか」

「今の話を聞いて、引っかかった点はありますか」

 

中小企業の会議では、参加者が発言しない理由を「やる気がない」と決めつけてはいけません。

本当は意見を持っていても、発言することに慣れていないだけかもしれません。

過去に意見を言って否定された経験があるのかもしれません。

あるいは、何を基準に考えればよいのか分からないだけかもしれません。

 

だからこそ、コンサルタントは問い方を工夫する必要があります。

さらに、会議を行動につなげるためには、最後の確認が重要です。

せっかく良い議論ができても、誰が、いつまでに、何をするのかが決まっていなければ、会議は成果につながりません。

会議の最後には、必ず次のような質問をします。

「今日決まったことは何でしょうか」

「誰が担当しますか」

「いつまでに実行しますか」

「次回の会議では、何を確認しますか」

「実行するうえで、支援が必要なことはありますか」

 

この確認をするだけで、会議は単なる話し合いではなく、行動を生み出す場に変わります。

大企業出身で中小企業向けコンサルタントを目指す方に意識してほしいことがあります。

中小企業の経営会議では、立派な資料を作ること以上に、場の空気を読み、問いによって参加者の思考を引き出す力が求められます。

社長の話を整理する。

幹部の意見を引き出す。

曖昧な議論を具体的な行動に変える。

決まったことを次回まで継続して確認する。

 

これらは、伴走支援型のコンサルタントにとって非常に重要な役割です。

経営会議を変えるのは、コンサルタントの正解ではありません。

参加者が自分たちで考え、決め、動き出すための質問です。

良い質問があれば、会議は変わります。

会議が変われば、幹部の意識が変わります。

幹部の意識が変われば、会社は少しずつ自走する組織へと変わっていきます。

中小企業コンサルタントにとって、経営会議を変える質問力は、非常に大きな武器になるのです。