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出会いもご縁、別れもご縁
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家族関係、友人関係、恋人関係、
そして上司・部下関係。
どのような関係においても、
人はたくさんの人と出会い、
出会いと同じくらいの別れを経験します。
別れをどのように捉えるかは、
その後の人生に少なからず影響を
与えるのではないでしょうか。
今回は、私が仕事で経験した大きな失敗談から、
別れの捉え方について考えてみたいと思います。
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20代前半、
トップマネージャーでありながら
給料が止まっていた時代の話です。
今思い出しても、非常に苦しい時代でした。
そんな中、給料が出なくても
「トップ営業マンになりたい」
とついてきてくれた部下たちは戦友同然です。
春先のある日、とある部下と出先で
終電が無くなる時間まで仕事をしていました。
ファミレスに入って
朝を待つこともできたのですが、
給料が止まっている身としては
数百円すら正直苦しい。
部下に「武勇伝を作ろう」と言って、
私達は駅の近くの公園で、
半ば野宿のような形で夜を明かしました。
「こんな貧乏生活が、将来語れる武勇伝になるんだ」
と笑い合っていました。
明け方はまだ少し肌寒い季節でしたが、
私は体が丈夫なこともあり、
次の日もばっちり出社しました。
しかし、彼が出社してきません。
3日目に電話がありました。
「仕事を辞めさせてください。
給料が止まっていても頑張ろうと思いましたが、
室舘さんのような体力もないし、
体調を崩してしまいました。
もうついていけません」
と、彼は辞めてしまいました。
私は自分のレベルの低さを痛感し、
リーダーとして非常に情けない、
と猛省しました。
彼の「トップ営業マンになりたい」
という言葉を鵜呑みにして、
ずっと過酷なトレーニングを課していましたが、
彼はそこまでは求めていなかったのです。
トップ営業マンには
生半可な努力ではなれません。
本人が「目指したいです」と
言っていたとしても、
本心ではそこまでの努力や逆境を
求めていないこともあるのです。
この別れは、
部下を抱える人間として
私を大いに成長させてくれました。
部下育成で大切なことは、
部下の夢や目指す姿を、正しく捉えることです。
本人の言葉を鵜呑みにするのではなく、
本人の本当の価値観を捉えて、
それに合ったメニューを
用意してあげるべきです。
人によっては、
欠勤せずに1カ月出社できただけでも
褒めてあげるべきですし、
上を目指している人には、
たとえ能力や成果が上がっていたとしても
厳しく叱ることが必要な場面もあるのです。
人生には別れがたくさんあります。
多くの反省もありますが、
囚われすぎずに切り替えなければなりません。
「傷つけるのが怖い」
「別れるのが怖い」
と言っていたら、
部下育成はできないのです。
別れの捉え方は、
半分は反省して学びとし、
もう半分は「ご縁がなかった」と
潔く捉えるようにしています。
そうしなければ、
当時も今もリーダーとして
タフに生きることができないからです。
過去、私のもとから去っていった部下たちには
迷惑をかけたかもしれません。
逆に感謝されているかもしれません。
すべての別れの理由を
伝えてくれるわけではありませんし、
私の知らない、彼らの次のステップや、
次の人生があります。
別れることや離れることを
必要以上にネガティブに捉えるのではなく、
お互いの良いご縁として
ポジティブに捉えることも大切だと思います。
「終着駅は始発駅」(北島三郎)。
人生、出会いと別れの連続です。
別れもご縁だと捉えられれば、
自分にとっても相手にとっても
良い転機になるのではないでしょうか。
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