「かのごとくふるまえ」
「将来成功者になりたいのなら、今からそのようにふるまいなさい。成功者になってからではなく、なる前からそんな風格を漂わせなさい」。19歳のころ、そのように上司から教わりました。まだまだではありますが、その言葉のおかげもあり、現在キャリアコンサルティングを16年経営できていると思います。若者のヒントになればと思い、当時を振り返りたいと思います。
平成元年3月に上京して、スーパーマーケットの店員を1年務め退職。19歳でリーダー育成を掲げる会社に入社しました。見た目も幼く、指導対象の学生や社会人からは見下される日々。当然、仕事はなかなかうまくいきません。同期の中には連続目標達成や、月間MVPを獲得する者もいて「自分には、この仕事は向いていなかったのか。スーパーを辞めたのは間違いだったのだろうか」と悩んでいました。
見かねた上司から、低迷していた社員たちに対して厳しい指導が。中でも私を変えた一言は「君たちは覇気が無くていかにも普通のサラリーマンだ。そんな人からリーダーシップを教わろうと思うか?」。普段はつい心の中で反発していましたが、この時ばかりは「確かにその通りだ」と反省しました。最後に一言「かのごとくふるまえ」と。最初は意味がわかりませんでした。
「世の成功者と言われている人は、成功してから成功者になったと思うか。違う。成功する前から、自分は成功すると固く信じ、行動していたんだ。君たちは若者に憧れられる人間だろう。成功者かのごとくふるまい、若者を育てる存在としてふさわしいオーラを纏いなさい。魅力がある人からなら、誰だって教わりたくなるものだ」
たとえ凡人でも、かのごとくふるまい、その風格を身につけようと決意しました。
決意してからは成績が低迷しても、絶対に愚痴は吐きませんでした。すると次第に良い人に囲まれるようになり、いつも好印象だと言われるようになりました。
私は、様々な本や資料から、理想の青年実業家のイメージを描きました。髪を短髪に切り、眼鏡をコンタクトに変え、スーツはブリティッシュ系に。鞄や靴、財布、名刺入れにもこだわりました。声質も鍛えることでガラリと変わりました。体も鍛え、空手の稽古に2年通い、10キロ増量に成功。理想とする強くて優しいリーダー像に近づいていく中で、念願のトップ営業マンになったのです。
話し方も、若者言葉はやめて大人の話し方を研究。新聞にも目を通し、若者が敬遠しそうな情報誌も読みました。経済や世界情勢などが話せるようになると、20代後半はより手応えのある仕事ができました。
年齢を重ねると共に、会社を発展させるだけではなく、国内外の諸問題に対して自分も貢献したいと考えるようになりました。そして30代半ばに、学びのギアをもう一段上げました。一流の方々と対等に話すためにも、徹底的に読書、セミナー、先輩方からの指導を受けなおし、歴史観、世界観、理想、実行力の4つの軸の幅を広げていきました。
今では一流の方と接する機会も増え、教わるどころか教えることも増えました。それもこれも当時「かのごとくふるまえ」の一言を大切にしてきたからだと思います。
若い方に言いたいことは、自分を信じて正しい努力を続ければ、理想の自分に近づけるということです。変化を恐れず、進化を楽しみ、かのごとくふるまってください。
一朝一夕では変わりませんが、何年もじっくりと積み重ねれば、きっと理想の自分になれると思います。