「お茶を一服、差し上げます」
諸先輩方のご指導により、12月で創立15周年を迎えることができ、関係者の皆様には心より感謝しております。社員165名中、勤続10年を超える社員は50名を超えました。平均年齢31歳、既婚者53名、持ち家29世帯、先月には50人目の子どもが誕生しました。今のところ離婚者は0です。社員は会社の宝です。これからも共に成長していく所存です。
社員の定着率が高いですね。年に数名の退職はありますが、勤続10年を超える社員が全体の三分の一ほどになり、周りの経営者仲間やコンサルタントの方に、そう言われるようになりました。設立して数年は、退職する社員に対して何をするわけでもなく、事務的な退職手続きだけで終わっていました。ときには退職した社員を非難するような話をしたこともあります。辞めた人を認めると、頑張っている社員に示しがつかないと考えていたからです。そんなあるとき、辞めた元社員同士で時々集まっては、弊社の悪口を酒のつまみにして飲んでいると聞き、本当にショックでした。 しかし、数日後にふと思いました。在職中、その社員一人ひとりに対して、私は感謝をしていただろうか。最後の挨拶のとき、自分の心はどうだったのだろうか。人生において、かけがえの無い大切な時間を使って頑張り、会社に貢献し、発展させてくれていた。それをどう思っていたのか。振り返ると自分が情けなくなりました。
心を入れ替えました。退職する前に社員と食事をしながら、これまでの仕事のことや頑張りを聞いていくと、自然と感謝の気持ちが湧いてきました。社員の前で、退職者のことを悪く言うこともなくなってきました。気づけば、退職した社員から悪口を言われているという話は聞かれなくなっていました。
遠州流茶道の兄弟子の野倉幸男さんからのアドバイスで、現在は食事会から、お茶会を開いて感謝と激励の言葉を伝えるようになりました。お茶会と言っても、一対一でささやかな和菓子とお抹茶を差し上げるものです。一生懸命に努力し、会社の発展のため、自分のチームのために頑張ってくれたこと、今後お世話になる企業での活躍、これからの人生に対して、激励の気持ちを込めてお茶を点てます。
言葉は少なくとも心は伝わるのでしょう。途中から涙がこぼれる方、嗚咽が漏れる方、私も出会ってからのことを思い出すと、こみ上げるものがあり、目の前がぼやけます。なかには「ここまで思っていてくれたことに、いま気づきました。力不足ですみません」と言う方もおりました。互いに過ごした時間を大切にしながら別れますが、最近は弊社主催のセミナーに参加したり、メールや手紙で近況を知らせてくれたり、クライアントを紹介してくれたりと、退職後も連絡を取り合うことが多くなりました。
誰しも未熟で至らないところから、至らなさに気づき、人のせいにせず、自分を改める機会にしていくことで、幸せは必ず訪れるのです。ときには考えられないような辞め方、心を静めることが難しい状況もあると思います。どう捉え、向き合っていくのか。人生の修行なのだろうと思います。
創立15周年を記念して、全社員で半期の報告会を兼ねた温泉旅行にいきました。私が15年を振り返る中で、過去、一緒に会社を作ってくれた人たちの名前も多く登場しました。会場も和やかな空気になりました。20周年のときに完成する社史には、支えてくれた社員の名前を掲載し、一人ひとりの想いを会社に刻んでいきます。少しでも関われたことが、誇りと思えるように。