昨日は、銀座のヤマハホールにて小倉貴久子先生の演奏を聴きに行って参りました。
ベートーヴェン 孤高の後期ソナタを シュトライヒャーで
L.v.ベートーヴェン
ピアノソナタ 第30番 ホ長調 作品109
ピアノソナタ 第31番 変イ長調 作品110
ピアノソナタ 第32番 ハ短調 作品111
フォルテピアノ:小倉貴久子
使用楽器:シュトライヒャー J.B.Streicher(Wien 1845)
正直私にとってこれまで、ベートーヴェンの後期のソナタは、えらく難解で理解しにくいものでした。どう捉えたらいいのか、さらにはその魅力を受け取るのが下手すぎて(←自分が)、近づき難い存在だったのです。
ベートーヴェンの孤高で崇高な魂が、私たちの手の届かない場所まで行ってしまって、その芸術を宝物にするにはあまりにその存在が遠すぎて。
しかし、小倉先生の演奏を聴いたとたんに、このソナタたちの魅力に気づかされました。
夢中になって聴き入りました。
なんとダイナミックで、繊細で、情熱的で、歌心に溢れていることか。言わずもがなレベチのテクニックが必要とされるこの難曲の、その難しさを微塵も感じさせない音の紡ぎ方と言ったら。
これら後期のソナタのいわゆる名演を、自分なりに聴いては来ましたが、これほど”腑に落ちる”演奏に今まで出会ったことがありませんでした。
まさに魂の演奏。
ベートーヴェンの魂が小倉先生の魂と溶け合って、喜びも悲しみも愛しさも苦しみも…すべてが音になってあふれ出ているようでした。感情のすべてを内包しているその音たちは、不思議なことにどこも苦しさを感じさせず、どこまでも美しく輝いていました。
もしベートーヴェンがこの場にいたら、どんなに喜ぶだろうと遠い世界に思いを馳せました。
さらには、聴いている私たちの魂が何か見えないものに救い上げられて、ふわふわと昇っていくような感じがしました。
とても幸せでした。本当に美しかった。
大げさかも知れませんが、まさか自分が後期のソナタを「美しい」と感じる日がくるとは思いませんでした。
☆今回のコンサートは、先月発売されたCDの発売記念コンサートなのでした。
2023年2月ニューリリース
nuovo viventeベートーヴェン:クラヴィーア・ソナタ 作品109, 110, 111
※「nuovo vivente」とは、ソナタ31番の第3楽章内のト長調のフーガ部分に添えられた「次第に元気を取り戻しながら(Poi a poi di nuovo vivente)」という言葉を引用してタイトルにしたとのこと。
いつも私たちに、作曲家の魅力や作品の素晴らしさ、音楽の楽しみ方を教えてくださる小倉先生。
今回のこのコンサートは小倉先生が本当に夢見ていたものだったと、アンコール時のあいさつで知りました。
ステージでの演奏は一回きりでも、この孤高のソナタたちを3曲も熟成させるにはどれほどの時間と努力があったのでしょう。
少なくとも私が真似できるようなことではありません。
その”一回きり”の渾身の演奏に立ち会えたことは、私にとってとんでもなく嬉しい経験です。
きっと先生ほどの演奏家にとって、作曲家の意図することを理解し、想像を深め、納得できる音色を模索し続けることは、どんなに大変であってもその道を歩まずにはいられないのでしょう。
それが誰もが到達できない場所であっても。その苦労の先に真に求める喜びがあることを知っているからこそ、迷いもなく突き進んで行くのでしょう。
…私の勝手な想像ですが…。
でもそれは本当に、すごいことだと思うんです。その努力は私たちとはそれこそレベチです。いや、比べることも烏滸がましいのですが。
だからこそ憧れるし、心から尊敬します。
今回の演奏会は特別な宝ものになりました。
小倉先生、本当にありがとうございました。
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