先月のことになりますが、7月20日~22日の3日間、第1回フォルテピアノアカデミー・SACLAに、聴講生として参加して参りました。

むかしむかしのピアノ、フォルテピアノ。

しかし、昔のものだからとモダンピアノと比べることはナンセンスかなと思います。現代の楽器こそが全てとは言い切れない何かがそこにあります。その世界は非常に奥深く、発想が柔軟で、多彩な音色で満ちています。

感動の3日間。…もしかしたら、行ってみないとこの感動は伝わりにくいのかも知れません。けれど、私たちピアノ指導者が知っておくと役立つことばかりの内容でしたので、今回は少々長くなりますが(←先に言っておきますね)、お付き合いくださいましたら嬉しいです。

 

クラヴィシンバルム、クラヴィコード(2台)、クリストーフォリ、タンゲンテンフリューゲル、ヴァルター、デュルケン、ブロードウッド(スクエアピアノ)、総勢8台のフォルテピアノに囲まれて、充実した一日を過ごしました。(※内2台は受講生用の練習室へ)

 

 

初日は、フォルテピアノ奏者の小倉貴久子さんのミニコンサート、受講生によるレッスンを聴講。
内容が濃くて深くて、素晴らしい時間でした。これだけのフォルテピアノが一堂に会することってあるでしょうか?それもこんなに多様で最新の作まで揃っているなんて。さらには製作者(チェンバロ製作家・久保田彰さん、日本でただ一人のフォルテピアノ製作家・太田垣至さん)の生の声まで聴ける機会なんて。

 

 

 

(フォルテピアノ製作家・修復家でいらっしゃる、太田垣さん。毎日調律や調整に大忙しでした。)

 

 

↑受講生8名のみなさんが、レッスンで演奏した曲。登場した楽器の製作年代が幅広く、その時代や楽器に合う曲を選ばれてレッスンを受けておられました。

主に首都圏内の方が多いようでしたが、ずいぶん遠方から泊まり込みで受講された方もいらっしゃいました。愛好家の方から指導者、現役のピアニストの方までさまざま。聴講生も全国各地から集まりました。

 

さあ、みなさま。

私のブログをお読みくださっているみなさま、特に。

私の性格はある程度お分かりだと思いますが、楽器大好き、フォルテピアノ大好き、そして何より小倉さんが大好きな私ですので、今回はご覚悟を。かなりコアでマニアックな画像が多いですが、そして説明や感想も長いですけれども、お付き合いのほどをm(__)mよろしくお願いいたします。また、画像は他の受講生のみんなからいただいたものも載せさせていただきました。

 

①クラヴィシンバルム

 

私は体験コーナー(要予約)で、この日はクラヴィシンバルムとクリストーフォリを弾かせていただきました。ものすごーくへたっぴでしたが(^_^;)、楽しかった。難しいけど楽しい♪普段弾いているモダンピアノとは全然違う弾き心地に、弾きながらうろたえ(笑)、こんな音を出したいんじゃないのに~あれ~っ?…と身もだえる間にミスタッチをし、更にあわあわしてしまう感覚。わかりますでしょうか?それだけ、一台一台の個性に合わせて弾くのが難しいんです。

 

クラヴィシンバルム
打弦タイプのクラヴィシンバルム(久保田彰製作)c~c3    
15世紀ズヴォレのアルノーの記述図を元に、詳細については久保田彰氏の想像と経験で補い製作した楽器。当時、本当に製作されていたとしたら、ピアノの最も古い祖先となる。

 

久保田彰さん製作のクラヴィシンバルム(打弦タイプ)。私は昨年、藝大の奏楽堂でこの打弦タイプのクラヴィシンバルムと、撥弦タイプのクラヴィシンバルムの両方の演奏を聴きました。
1440年、ヅヴォレのアンリ・アルノーという人物が著した手稿にこのクラヴィシンバルムが図面として登場しているそうですが、楽器そのものは現存しないとのこと。久保田さんが図面を詳細に読み取り、オリジナルの工夫も加えて製作したもの。
ダンパーはなく、竪琴のようなダルシマーのような音色が魅力的♡

 

設計図だけで現物がないのに、楽器製作者のプロといふものは…なんとすごい技をお持ちなのでしょうか。

 

揃った木目も、ローズも繊細で美しいこと。

※ローズとは、楽器のサウンドホールのことで、美しい彫り物です。

(ここでふと疑問に思ったことが。ローズの中つまり楽器内部が全て塗料で全て黒く塗られていました。どうしてかな~と3日間ず~っと考えていました。)

 

クラヴィシンバルム(打弦タイプ)は、鍵盤を押し下げると木片が弦を下から突き上げて発音させます。ダンパーがないので弦の響きがほわ~んと残り、幻想的に音が溶け合います。

 

片手で持てるくらい小さな楽器。でもこの一台を作るのに、いったいどれだけの研究と材料集めと製作に時間がかかったのでしょう。

 


15世紀に設計図だけが残っていた、最古と言われる打つタイプの鍵盤楽器。当時は金属の鉄骨(弦の膨大な張力を支えるための)は存在しなかったと思われるため、その張力の強さに耐えきれずにすぐ壊れてしまったようです。(久保田さん談)
しかし、これを作った時久保田さんは内部に鉄骨を仕組んで丈夫にしたため、ボディの歪みもなく、こうして綺麗な状態で演奏が可能になっています。

 

 

トリスタンの嘆きを弾いてみました。カワイ出版「ピアノのステージB」より。

 

お友達の先生に太鼓係をお願いして、アンサンブル。…のつもりが、私自分の演奏に必死で全然アンサンブルにはなりませんでした。ごめんなさい~A先生。

 

体験コーナーは、毎日のレッスンやコンサートの後の時間。小倉さんがすぐそばで楽器と私たちの演奏を見守ってくださっています。

 

 

②クリスト―フォリ

B.クリストーフォリ
Bartolomeo Cristofori(1726年の復元楽器 久保田彰製作)
ピアノの発明者クリストーフォリのピアノ。ハンマーで弦を打つ新楽器はGlavicembalo col piano e forte(弱音と強音をもつチェンバロ)と名付けられ、長い名前が短縮されて「フォルテピアノ」「ピアノ」という呼称になった。タッチによって強弱の変化や多彩な表現が可能となったクリストーフォリの発明は、現代のピアノへと継承されている基本的構造が多数。18世紀初頭のイタリアの作品は、クリストーフォリの音色によってその真価が輝く。

 

久保田さんが2005年に製作したクリストフォリ・ピアノフォルテ(ライプツィヒ、1726)の拡大レプリカ(久保田チェンバロ工房所蔵)。4オクターヴと6度/58鍵GG-e3、全二重弦、手動式ウナ・コルダ付き。
言うまでもなく、現代のピアノのご先祖さまと言われています。このクリストーフォリは、前出のチェンバロ製作者・久保田彰さんが製作した復元楽器。現在、クリストーフォリが制作し現存する楽器は世界で3台しかない。そのうちの一台のオリジナルを元に、久保田さんが作られました。アクション部を移動させて、ウナ・コルダで演奏することもできます。(演奏の手をとめて、手動で)

 

 

 

えみちゃん(中嶋恵美子先生。今回は受講生として参加)が、「これ、ほんっとうに”木”を弾いてるって感じですね!!」と、弾いた後に思わず大きな声で言っていました(笑)。そう、確かに。だって、幹音部分は黒檀なのはよくあるけれど、派生音部分はまんま白木でしたから。白木が何の木なのか、久保田さんに直接質問してみたかった私です。

 

チューニングハンマーが楽器内部に装備されています。これも久保田さんならではのアイデアだとか。こういう一つ一つの心遣いに、私はこれまた一つ一つ感嘆のため息が出るのです。

 

木を扱うことに長けていないともちろんこうした楽器はできないわけで。

 

クリスト―フォリの弦は、一つの音に対して2本。奥にハンマーが見えます。

 

いくら弦が細くても、鍵盤数が今より少なくても、打弦して発音させるために必要な弦の張力はかなりなものです。金属製のフレームなしにこの形状を維持できているって、本当にすごいと思います。

 

高音部にはフエルトのような生地を巻きつけてありました。発音に直接関わる部分ではないけれど、ここを布で押えているのは、きっと共鳴りとか雑音とかしてしまうからなのかな?

 

ついつい…構造や材料に目と心がいってしまう私ですが、その音色はこれまたまろやかで。タッチはしっかりめに弾いた方がよさそうでした。

 

 

 

アクションモデルも、各種ありました。これはクリスト―フォリのアクション機構。奥に見えるハンマーが現代のピアノのものですから、中央に見えるクリスト―フォリのハンマーの小ささがわかると思います。

 

バッハのインヴェンションから13番を。

もう、さっぱり良い音が出なくて四苦八苦しながら弾いてます。

 

 

③タンゲンテンフリューゲル

タンゲンテンフリューゲル
Tangentenflügel(Ch.G.Schröter考案のアクションによる復元楽器 久保田彰製作)G1~e3
タンゲンテンフリューゲルの発音の仕組みは、キーの後方の加速レバーにのった木片を飛ばして弦を打ち、自然落下させるというシンプルなもの。タッチによって強弱もつけられ美しい音色が魅力。モーツァルトがザルツブルク時代に弾いていたことでも知られる。

 

久保田彰さんが昨年2017年末に完成させた、シュペートの設計図による復元楽器。
音色はチェンバロに似ているが、木片で下から突き上げて弦を打つため、キーを押し下げるスピードを指先で調節することによって音に強弱がつけられる。

2017年の大みそかに完成させたという、タンゲンテンフリューゲル。シュペートが製図だけ残し実際の楽器製作まで至らなかった経緯を知った久保田さんが、その無念さを酌んで作ったもの。楽器製作者としてシュぺートの気持ちが良くおわかりだったのでしょう。

その音色はチェンバロに似ているけれど、強弱が付けられる不思議な楽器。豊かでふんわりと柔らかい。

 

 

 

 

 

 

この穴の下から木片が飛び出してきます。

 

 

私にとっては、どこをどう見ても美しくて。。

楽器として実際に演奏できることも素晴らしいけれど、こうして間近で観察できるのも滅多にできない経験です。

もう幸せ過ぎて鼻血が出そうです(爆)。

 

 

この↑丸くカーブから~のきゅっととめてある部分。角を付けて四角っぽく仕上げるより難しそうです。(あくまで素人目線)

合板を曲げて楽器のケース(画像左側面のこと)を作っているわけではないですからね。一枚板を曲げているって一体どうやって?、しかも木目を見せた状態で仕上げてるって…。こんなにきれいに。信じられない。

 

 

時間は少し先に行ってしまいますが、これは最終日。タンゲンテンフリューゲルを弾かせていただきました。クリスト―フォリよりは弾きやすい感じがしましたが、とにかく一台一台全部音の出方が違うので、もう必死です。

 

 

聴講生である私にも、少しアドヴァイスをくださる小倉さん。

クリスト―フォリを1日目に弾いたときに、アーティキュレーションを指摘していただいたので、極力気を付けてみました。

 

↑もう必死。良い音を出したいのに予想外な音ばかり出るので、頭の中は大混乱なのですが、なんとかこの楽器と仲良くなりたくて。タイムスリップ感を存分に味わう余裕もないです。

 

小倉さんは、こうした個性豊かな楽器たちを見事に弾きこなされているのです。そこには微塵もその演奏の難しさを感じさせないので、私たちは心地よく作曲家ごとの世界感の中にどっぷり浸かれるわけです。それって、当たり前のようで当たり前じゃない…。小倉さんの音色の引き出しは無限なのかも知れません。どこまでも多様性と楽器の可能性を感じさせてくださる、小倉さんの演奏のひみつ。

こうして毎日ご一緒させていただく間に、少しそのひみつがわかったような気がしてきましたが…いや、まだ全然なのでしょう。

 

…と、ここで文字数限界に近付いて参りましたので、次回に続く!

 

☆フォルテピアノ・アカデミーSACLAのHPは、こちらから♪

 

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