7月1日、フォルテピアノ奏者の小倉貴久子さんのフォルテピアノ講座に参加いたしました。

 

第一線で活躍されている小倉さんの美しい演奏にいつも心打たれている私には、本当に贅沢で夢のような時間でした。モダンピアノを弾き、生徒に指導する立場の私たちにとって、ピアノという楽器の歴史や変容の経緯を知ることや、演奏法を学ぶことは非常に重要だと常々感じています。

しかも、いかにしてその楽器の良さを引き出すかをどなたよりもご存じでいらっしゃる小倉さんから直接お話を伺えるなんて…!もったいなくもご自宅にて、ピアノの歴史と奏法について(18世紀~19世紀前半)の講座とミニレッスンを。さらには生演奏を間近で聴かせていただきました。

 

中嶋恵美子先生の呼びかけでスタートした、Facebook「フォルテピアノ(ピアノ指導者限定)」。このグループは、チェンバロ、クラヴィコード、フォルテピアノなど、楽しくワイワイ、ともに学び合える仲間が欲しくて立ち上げました。 「よく知らないけれど興味があるわ!」という方も大歓迎!ピアノ指導者限定非公開グループです。

 

フォルテピアノの魅力とはどういうものなのか、私は小倉さんの演奏から知りました。私は浜松市楽器博物館が大好きで、まだ若くて自由な時間があり静岡の実家に住んでいたころ、車で良く通っていました。ここはとても珍しい博物館。何故かというと、歴史的な価値のある楽器をただ展示してあるだけではなく、動態保存(つまりいつでも演奏できる状態に修復&管理)されているから。「ただ鑑賞する」博物館はあるけれど、それらを演奏可能な状態にしている場所は無いに等しい。しかも膨大な数の楽器をです。これは本当にすごいことです。動態保存するのはとても手もかかるしお金もかかります。まずその時代の楽器をよく知る人でないと修理できないし、その当時の部品も現在入手できるとは限らないですしね。古楽器に精通する専門家による修復作業、その修復に使うための適材を準備する手間、定期的な手入れなど、それはそれは気の遠くなるような作業なのではないかと想像できます。

 

そしてその博物館のコレクションシリーズ(所蔵の楽器を使用し一流の演奏家に録音を依頼、音源にしたCDやDVDなど)の中に、小倉さんのものがたくさんあるのですが購入して聴いてみたらこれが素晴らしくて。まだ生演奏を聴いたことがなかったのですが、勝手にファンになりました。なんと生き生きと輝いている音色だろうか、と。そして時は流れ、ますます小倉さんの演奏は深みを増して、私はさらに大ファンになりました。コレクションシリーズだけではなく、気が付いたら小倉さんが出していらっしゃるCDやDVD、ご著書等々、全て集めておりました。

 

年とともに艶と深みと広がりを増している小倉さんの音色。最新のCDを毎朝聴きながら、同じ時代に生まれてよかった~と嬉しいひとときを過ごしています。

 

さあさあ、そこで♪みなさま。

むかしむかしのピアノだと…侮るなかれ。フォルテピアノは素晴らしい魅力にあふれています。この魅力を言葉で説明するのはとても難しくて、奏者にもよるのですが、その魅力を引き出せるピアニストは…もしかしたら多くないのではないかと私は感じます。つまり大げさに言うと、本当にフォルテピアノの良い鳴らし方や響かせ方を知っている奏者は限定されるのではないかと。

 

一方、現在私たちが弾くモダンピアノが完成品のような意識を世の人々は抱きがちかも知れませんね。しかしモダンピアノが完全で万能とは…言い切れないのではないでしょうか。ピアノという楽器の存在そのものがすでに尊いのですが、なにが一番かとか、優劣を簡単につけられるものではないです。クリストーフォリが発明し、その後大勢の楽器製作者たちとピアニストがタッグを組んで改良し、試行錯誤し、苦労を重ね、長い年月をかけて生み出してきた芸術品がピアノという楽器です。それも生きた芸術品。モダンピアノの前に存在していたフォルテピアノは、より多彩な演奏技術を持って演奏されていました。そこにはモダンピアノでは簡単に得られない難しい技術が必要です。モーツァルトやベートーヴェン、シューベルトやシューマン、ショパンなどが使っていた時代のフォルテピアノの世界を知ることは、モダンピアノを演奏する際にとても役に立つものだと感じます。

 

(…おっと、このまま語り続けるとどこまでも行ってしまいそうなので(^_^;)、話を元に戻します。)

 

フォルテピアノの魅力と秘密の一端を知る貴重な機会となった、小倉さんのご自宅講座。

今回は13名の先生方が参加されました。

 

 

ご自宅に所蔵されているチェンバロ、クラヴィコード、フォルテピアノたち。

オリジナルを修復されたものもあり、復元楽器もあり。

そしてどの楽器の音色も、小倉さんが弾かれると本当に生き生きと美しく響きます。

このように貴重で素晴らしい楽器たちを、出し惜しみすることなく弾かせてくださる小倉さんの懐の深さにも感動です。

(ただし、ミニレッスンで一人一人弾く時には、小倉さんが必ず横についてです。決して勝手に好きに弾いたり触ったりしてはいけません。)

 

 

 

Facebookのフォルテピアノグループのメンバーは、現在61名。今回この講座に参加できたのはそのうち13名。

 

 

 

わくわく♡

 

 

まずはチェンバロから。

タイトルにもありますように、ピアノの歴史と奏法について語りながら演奏もしてくださいました。

J.クリンクハマー製作(作者不明 アルザス地方)のチェンバロです。

 

 

参加した私たちのための講座でしたので、ここで全てを語ることはできません。でも、現代のピアノ=モダンピアノでは決してできない表現を学ばせていただき、目からうろこがぼーろぼろ落ちました。まだほんの入り口、ほんの一部だけれど、その一部でさえ私たちには簡単に真似できない奏法。難しいけれど少しでも小倉さんのように弾いてみたい、もっと音の魅力を引き出す演奏を目指したいと思いました。

 

 

小倉さんの演奏を友人と良く聴きに行きますが、それは何度聴いてもいつ聴いても心地よいから。でもただ心地よいのではないのです。小倉さんの紡ぐ音色は、その楽器の持つ魅力を最大限引き出しています。そのためにどれほどの試行錯誤をされたのだろうと思いますが、聴かせてくださる音色はいつも自然で心にすっと入ってきます。難しいことをやっていますよと聴き手に微塵も感じさせないで、みずみずしい演奏ができるって本当にすごいと思うんです。聴き手の心には、感動とすがすがしさだけが余韻として残ります。

 

小倉さんのご著書に、フォルテピアノから知る〈古典派ピアノ曲の奏法〉・現代ピアノで「らしく」弾くためのヒント(ONTOMO MOOK・ムジカノーヴァ編)がありますが、その中でも語られている「ノート・イネガル」の大切さを、今回の講座であらためて感じさせていただきました。

 

 

クラヴィコード。深町研太製作(Ch.G.Hubert 1770年代 ドイツ)の復元楽器です。

クラヴィコードは、14世紀頃に発明され、オルガンやチェンバロ、ピアノなどと並行して、16世紀から18世紀にかけて広く使用されました。弦の長さや構造の違いにより大きさには差がありますが、机の上に置けるようなコンパクトさ。モーツァルトは演奏旅行に行く際必ず持ち歩いていたそうです。バロック・古典派の音楽家のみならず、メンデルスゾーン、リスト、ブラームスなどロマン派の音楽家たちもクラヴィコードを愛しました。J.S.バッハはクラヴィコードを、「練習や個人的楽しみのためには最上の楽器」とし、息子のC.P.E.バッハも「クラヴィーアのよい演奏表現を身につけるためには、クラヴィコードが不可欠」と述べています。


鍵盤を押すとタンジェントと呼ばれる真鍮片が弦を押し上げて音を出す、シンプルな構造。 音量はとても小さく、タッチの微妙な変化がダイレクトに弦に伝わるため、繊細で自在な感情表現が可能で、最もカンタービレな演奏が可能な鍵盤楽器であると言われています。また、鍵盤楽器で唯一ヴィブラートをかけることができます。

 

 

このクラヴィコードが一番演奏が難しそうな気がしたので、ミニレッスンを受ける際に私はこの楽器を選びました。

ネーフェの小品を弾かせていただいたのですが、なんと全く「音色」にならない。色がない!私の音ってこんな程度?!とビックリ仰天したのでした。でも小倉さんが弾くと、ピーン!と音が立って美しく響きます。

私がただ弾くだけではクラヴィコードの魅力など出るはずもなく。…そこに”拍節感”を感じ、音の優劣関係を考慮した上で手指を繊細に操作して「音」にしないと、ダメなんですね。本当に。小倉さんのおっしゃることが少しは理解できた気がしたのですが、自分で演奏すると全く実現できないことに愕然としました。モダンピアノで弾けてるからという感覚で、クラヴィコードに向かうとその感覚は通用しないということがわかりました。

でも、なんと素敵な楽器なのでしょう。

弾きこなすのは難しいけれど、ずっと弾いていたい、もっと楽器と一体になりたい。この楽器と自分の可能性をいろいろ試してみたい気持ちで一杯になりました。

 

 

次はヴァルター。Ch.マーネ製作(Anton.Walter 1795年 ウィーン)フォルテピアノ。復元楽器です。

 

 

小倉さんの演奏会や録音で大活躍のヴァルターが。

 

 

一口にフォルテピアノと言っても、製作年代、作られた国や地域、そして製作者の個性も反映していますから、音色や音の出し方は通り一遍ではないんですね。小倉さんは、個性豊かな一台一台の演奏法を熟知しておられます。

 

 

特性の違いの一つに、アクションもあります。

ウイーン式(跳ね上げ式)とイギリス式(突き上げ式)があり、ヴァルターは跳ね上げ式。小倉さんは、私たちの目の前でアクション部分を引き出して、実際にどう弦に作用するかをわかりやすく説明してくださいました。

 

 

 

参加者一同、みんな揃って

「わぁ~!」

「ほ~うぅ♡」

「へぇ~~っ!」

「おぉ~!」

「ほわ~っ。」

といちいち、感嘆のため息をつき、目をキラキラさせながら聴き入っていました。

 

 

後半はロマン派。その前に休憩が数分ありましたが、みんなもう興味津々。現代のピアノの構造は画一化されていて弾きやすいけれど、昔の楽器は個性的で奏法も一台一台違うくらい難しい。でも小倉さんが弾くとどうしてあんなにふっくらした音が出るのか、ずっと語り合っています。

 

 

シュトライヒャー。J.B.シュトライヒャー製作(1845年 ウィーン)フォルテピアノ。オリジナルです。

 

 

フォルテピアノは平行弦。モダンピアノでは出せないクリアな音色を出すことができます。

 

 

先ほどのヴァルターの時代より数十年くだりまして、かなり太い弦を使用するようになってきています。太い弦を強い力で張っているので、本体を補強するために一部金属のフレームが入っています。

 

 

小倉さんの弾くシューベルトとシューマンに…涙している先生もいらっしゃいました。

 

 

 

最後に、プレイエル。プレイエル製作(1848年 パリ)のフォルテピアノ。オリジナル。

 

 

シュトライヒャーと、プレイエルの調律は、平均律。私たちが日々触るモダンピアノと同じ調律法です。

 

 

プレイエルは、19世紀のピアノの詩人フレデリック・ショパンが愛用したことで知られています。ダブルエスケープメント(現代のピアノ=モダンピアノに採用されているアクション)を使用しているエラールと、シングルエスケープメントのプレイエル。ショパンは、「疲れているとき、気分のすぐれないときにはエラールのピアノを弾く。気分が良く体力があるときは、プレイエルのピアノを弾く。」と弟子に語っていました。プレイエルのピアノはコントロールするのが難しい反面、音色が美しく、「シンギングトーン」と呼ばれる歌声のような伸びのある響きが特徴です。

 

 

また、この時代のフォルテピアノには第二響板がついていたそうです。

響板と言えば弦が張られているすぐ下の部分に見えるものを言いますが、この時代のピアノには、通常の響板の上に取り外し可能なうすい板が設置されていました。この響板の効果は、少し曇ったような感じだけれどやわらかで絶妙な響きを得られるところにあるようです。さらには、ふた(=大屋根)自体も閉じて演奏するなど。

当時は、現代のように「大きな会場で、遠くに座るお客さんまで届くよう大きな音量を求めて」大屋根を全開にする、という発想は無かったようです。そういう方向性で音色を楽しむのではなく、もっと聴き手の琴線に触れるような響きを生み出したかったのですね。

 

それにしても…小倉さんのショパンは…これまた繊細で幻想的で美しかったです。

 

 

 

小倉さんの講座と演奏を聴き、みんなそれぞれ希望する楽器でミニレッスンを受け、最後に集合写真を。

上の画像、わかりますか?今回登場した全ての楽器も一緒に写していただきました。撮影は小倉さんのご主人さま、素晴らしいホルン奏者でいらっしゃる塚田聡さんです。

 

小倉さん、塚田さん、貴重な機会を与えていただき本当にありがとうございました。

参加者全員、目からうろこが落ちまくりましたので、ご自宅の床には私たちのうろこがまだいっぱい残っているかも知れません。

 

興奮冷めやらぬ次の日、えみちゃん(中嶋恵美子先生)が今回の講座の動画を作ってくれました。みなさま、ぜひご覧くださいませ。

 

 

みなさん、思い通りに弾けない驚きと、もっと良い音を出したいという意欲で胸がいっぱい。

とっても良い笑顔。

 

 

フォルテピアノの世界のまだほんの入り口に立った私たちです。

これからますます夢中になりそうです。

第二弾もすでに決まり、期待に大きく胸を膨らませています。

 

 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 

いつもお読みくださいまして、ありがとうございます。
一日一回クリックしていただけると嬉しいです
  下矢印下矢印下矢印

にほんブログ村 クラシックブログ ピアノ教室・ピアノ講師へ
にほんブログ村

  上矢印上矢印上矢印

ニコニコ ブログランキングに参加しておりますキラキラ
星応援ありがとうございます星

 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

 こちらはレッスン教具のNETSHOPです。

 おかげさまで取り扱い数は16種類となりました。
 講師のみなさまのお役に立てましたら幸いです。

 

  

ふんわりリボン やすこ先生のお店  ふんわりリボン
  音符ぜひ一度お訪ねくださいね音符

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚


クローバー教室についてのお問い合わせはHPからどうぞクローバー 

   YASUKO音楽教室



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚