「森の中の緑の工房」

カワイ竜洋工場には、緑がたくさん溢れていました。

平成9年に、環境管理システムの国際規格ISO14001の取得を

ピアノメーカーでは世界で初めて取得しました。

私は以前、私が今使っているKAWAIのグランドピアノの選定に

こちらに伺いました。もう…17年ほど前のことです。

竜洋工場は敷地10万平方メートル。

その50%を緑地化し、環境保全に取り組んでいます。

17年前は小さな樹ばかりでしたが、昨日行ったら

まるで森のよう!周囲一帯が緑の森になっていて、

どこが入り口なのか一瞬迷いました。

のろのろ走っていくと、ありました~懐かしい門と建物。



早速、歴史資料室から案内していただきました。




その入り口に、ミニピアノが置かれていました。

戦後迎えた昭和23年、戦争によって失われた工場設備と技術者の

飛散という苦難をのりこえて、ピアノ・オルガンの製作が再開され

ました。物資不足の中、苦労して作られたのがミニピアノです。




また、こんな写真も。

辻井伸行さんが工場にいらしたのですね。

まだ少年のようにも見えました。

グランドピアノのフレームを手で触っている一枚です。

その傍らには工房の方が寄り添っています。




さて、歴史資料室の中は・・・

ピアノの構造、歴史、工房の職人さんたちによる知恵と工夫に

満ち溢れていました。



グランドピアノとアップライトピアノのアクションモデル。


音の体重計。これは面白い発想です。
左側の足の形部分に足を乗せて、体重を掛けるとそのまま
弦を引っ張る張力に変わり、打鍵すると音程が上がります。



初期のものから近代のものまでアップライトがずらり。

時代によって創意工夫が変化していて、興味深いです。

アップライト工場もこの竜洋工場の中にあります。

むかしは別でしたが今はこの場所でアップライトもグランドも

作っています。



河合小市(こいち)の手による、カワイグランドピアノ第一号。

小市は、山葉寅楠に弟子入りして技術を学び、のちに独立しました。

また、ピアノのご先祖さまたちもたくさん。

クラヴィコード




ハープシコード





ハンマーフリューゲル



驚いたことに、一台のピアノを除いてこれらすべて試弾させて

もらえるのです。もうね…目がハートだらけになりました。

このクラヴィコードは、膝でペダル(右・ダンパー、左・ウナコルダ)

を操作します。

小倉貴久子さんの美しいフォルテピアノの演奏を聴きなれては

いますが、自分にも演奏できる機会が訪れようとは~♪

でも、モダンピアノとは全然違うであろうことは予測していました。

そして弾いてみるとやっぱり、鍵盤(音色)のコントロールも

膝ペダルも難しい!

演奏したのはモーツアルトの「トルコマーチ」です。

小倉さんはどうしてあんなに生き生きと美しい演奏が

できるのかしら?


失礼します。私の右足です。ひざペダル、体にかなり命令しないと
ペダルの効果がかかりません。


そうして、カワイと言えば「クリストフォリのピアノの復元」。

浜松市楽器博物館にある、レプリカと同じものがこちらにも。

でも、棚板(鍵盤が乗っている板)のゆがみがあり、

昨日は弾けませんでした。この一台が弾けなかったんです。

モダンピアノでもその材料のほとんどは木材ですからね、

クリストフォリのピアノは(クラヴィコードもチェンバロもですが)

フレーム(鋳鉄製)を使っていないため、弦の張力で楽器にかなり

負担がかかっているのです。

今のピアノ以上に繊細な楽器なのですね。

調律してもすぐに音が狂ってしまうそうです。





さてさて、ここからはモダンピアノ。






SHIGERU KAWAIも試弾させていただきました。

素晴らしいピアノです。憧れであり、手に入れたいピアノです。

この弾き心地、反応の仕方、私は大好きです。



毎日このピアノで弾けたらなあ~。



工場内の見学は、前日に行ったYAMAHA掛川工場とは雰囲気が

違いました。これも言葉で説明するより、実際感じてみるのが

一番かと思います。

昔選定に訪れたときに抱いた印象と、今回も同じでした。

ここは工房であり、働く人たちはみな職人さんだと。

機械化による作業効率アップも必要だけれど、この場所は

基本は手作業や手の感覚、人の目や耳を頼りに作り上げる

工房なのだと。

職人さんみんなの力で熟練した技を注ぎ込み、

創業者・川合小市の精神とともに、

一台のピアノに魂を込めている。






小市氏の書いた、設計図)




「ピアノは本来一台一台に向かって念入りにつくり込んでゆくもの」

Shigeru Kawaiピアノ研究所に受け継がれる

伝統のクラフトマンシップは、今も連綿と受け継がれている。

その手技を心意気を、受け継ぐ人材もたくさん育っていって欲しいと

願わずにはいられません。

河合小市氏が願うのはきっとそういうことなのかも知れないですね。




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