“伝承してしまうと自分の存在価値がなくなる”
そう不安を表明する中堅層に向けて
「覚悟を決めて前へ進め」と言っている、と前に書きました。
自らの経験を踏み台にして、自身のキャリアを高めていく。
これからは自らのチカラでユニークなキャリアを
築いていかなければならない。
その覚悟を固めてもらう。
重要なことですが、スキルが自ら存在の拠り所になっている
様な場合だと、“伝承”を強いるのは、かなり無理があります。
ベテランになってくれば、
定年ギリギリあたりまで教えないでいたほうがよさそうだ、
という選択は、十分理解できるものでしょう。
“伝承”は元来、暖簾(のれん)を守る手段でした。
イエの社会的信用を守ることが、その目的です。
つまり組織利益に沿ったしくみです。
終身雇用の時代なら、
イエを守る = 自分を守る、の図式があったので、
ベテランも伝承を進める合理性がありました。
しかし、いまは違います。
イエを守っても、自分が守ってもらえるかどうかは分かりません。
だから“伝承”を進めたいと思うなら、
組織利益の一方で、伝承を担う側にも利益が流れるしくみ、
個人と組織がWin-inになるしくみにしなければ、
継続はできないでしょう。
つまり、個人が利益を享受できるようにしないといけない。
その一つの方法は、“伝承“の方法論を確立し、それを習得してもらう。
伝承の理論を学び、
求められるコミュニケーションスキルに習熟し、
自ら築いた経験の知を客観的に語れる力を、
身につけてもらうのです。
自らの知を伝承する気のある人に、
これらのトレーニングを受けてもらうようにすれば、
スキル向上がインセンティブになります。
履歴書の自己ピーアールとして、
「私は〇〇〇ができる人材の育成ノウハウを持っています」
と、書く事が可能になります。
二つ目は、“伝承リーダー”の認定です。
方法論を身につけ、実際に社内の伝承を実践して一定の実績が
出ている人には、“伝承リーダー”の資格を与える。
“伝承リーダー”は、社内における知の伝承を支援できる資格で
“伝承”プロジェクトの流れを設計したり、必要なスキルを
教えたりできる資格とします。
その伝承リーダーには、一定の“手当”を付けるべきです。
いくつもの伝承を成功させた“ベテラン”伝承リーダーには、
“上級”(手当も上がる)があってもよいと思います。
いずれにせよ、伝承が個人に還元される仕組みは、考えていくべきです。
日本人が仕事の文化を発展させた真の力は、
過去の知恵とワザの積み上げを、伝承できてきたことです。
だとするならば、今日の伝承のしくみが時代に適った
合理性を備えていることが、
この文化を継続させるための、前提条件になるでしょう。
それができなければ、
組織内の伝承は滞り、または人材が外部に流出する、
最悪の状況がこれからも継続することになっていきます。
私たちはその事にもう、気づかなければいけないのだと思います。
【仕事知セミナーのお知らせ】
上にあげた”仕事知の伝承力”が、今回セミナーのテーマです。
日時: 7月26日(火) 19:15 -
場所: 東京ハートカフェー(メトロ西早稲田駅より徒歩5分)
参加費: 1,000円(当日会場で集めます)
お申し込み、詳細は こくちーず http://kokucheese.com/event/index/405555/
をご覧ください。
