今回のテーマは『仕事の基本』でした。
どんな領域でもよく、“基本をしっかり固めよ”とか、
“基本が出来ていないと伸びない”などと言われます。
スポーツの世界などでは割合その内容が分かりやすいのですが、
ホワイトカラーの仕事で「基本」というのは、実はあまり明確ではないように思います。
入社してすぐ“基本、基本”と詰め込まれるものが
本当に“伸びるために必要な”事柄なのかは、よく分からない気がするのです。
私は商社の輸出部門に入り、入社したころから盛んに“船積み”をやらされました。
上司や先輩からもまずは“船積み”が基本、と習いました。
入社して数年間は、殆ど毎日これに関わっていたと言ってよいと思います。
手間ヒマは結構かかるけれど、変化に乏しい上にちゃんと出来て当然の世界で、
正直面白い仕事ではありませんでした。
同じ作業の繰り返しなので成長感も味わえず、その割に一旦トラブルが
起きると、休みも返上して走り回ったりもさせられる、そんな仕事でした。
やりながら仕事の“意味”があまり感じられない経験でした。
ところが入社6-7年目を過ぎ、海外に出かけて契約履行業務に携わったり、
客先と契約条項を巡って交渉するようになると、
“船積み”で蓄積された知識は現場で大いに役立つことに気づき始めました。
“船積み”そのものの体験というより、“船積み”をする中で色々出くわした
“想定外”への対処だとか、実際にトラブルで走り周り必死に収拾させた実体験が、
様々な“応用的”業務の基盤になっていると実感するようになりました。
確かに、上司や先輩が言うとおり“船積み”は基本ではあるのだけれど、
自分にとってはむしろ“船積み”の経験の中で起きる“想定外”で、
実際の仕事力の“核”になるものの学習ができた感覚です。
そして、それが自分にとっての『仕事の基本』だったのかなあ、と思われるのです。
とはいえ、以上は私の個人的な仮説に過ぎません。
”船積み”という、かなり特殊な世界での業務をやる中で得た仮説なので、
普遍的に成り立つ可能性はあまり高くないと思われます。
では他の人たちは、どうなんだろう。
今回はそんな感覚で、参加された皆さんに演習の問いを投げかけてみました。
実施したワークの詳細は書ききれませんが、
参加者が各々やっている(やってきた)業務の中身を棚卸しし、
その上で改めて実践の際の内的活動をスキャンしてみた結果からは、
色々な気づきがあった様です。
エンジニアとしてキャリアをスタートし、30年近くを経て開発の仕事までを
手がけてきたK氏は、今回のワークを通じて導かれた『仕事の基本』について、
「自らが生み出した製品への愛」そして、「それを作ってくれる人たちとの関係」
と語っていました。
やはりものづくりの企画を担当しているAさんは、「基本を積み上げて徐々に
レベルアップしていく感覚、自分なりの達成感を持つ感覚」、そして「自分の仕事に
間接的に関わってくれている人達と“一緒の”気持ちになること」と、そんな
気づきを語られていました。
参加者に共通して感じられた“基本”への気づきは、
テクニカルな話よりむしろ、“取り組みの姿勢“であるように思われました。
テクニカルは当然あるのでしょうが、それらはどちらかと言えば二次的なことで、
“これが無いと伸びない”類の基本とは、むしろ姿勢や態度とでも言うべき
心の状態にある、ということが今回現れてきたと感じられました。
そう考えてみると、私自身船積みの“想定外”への対処も、
テクニカルというより“心の構え”の変化に現れていた様にも思えてきます。
新人時代は何かが発生する度に「面倒だ、面倒だ」と思っていたことが、
いつの間にか、
「どうせ何か起きるだろう、今度は一体何が来るんだ」
の様な、腹の座った構えになっていたことは、間違いないと思われます。
こんな形でワークを通じて得た他者のコメントから、
自分も色々と了解が刷新され新たに気づけることがあります。
とても密度の高い時間を、お陰さまで持つことができました。
ご参加の皆さま、本当にありがとうございました。
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