2021年版日本沈没を見た | fc2 yokohama リターンズ    ★★★★★

 今年話題になったドラマと言えば、なんといっても”日本沈没 希望のひと”だろう。

 

 おや、そうでもなかったかな?

 

 

 どんなもんかとは思ったのだが、SF&特撮ファンとしては、やっぱり見ておかなくてはならない。

 

 

 しかしなんだこれは。

 

 とにかく日本が沈まない。

 

 

 序盤で島がひとつ沈んだものの、全9話(最終回は2時間)しかないのに、次に関東沿岸が沈没したのがようやく第4話のラスト。

 

 第5話ではトンネル崩落で避難民のバスが被害を受けるなんてエピソードもあって、ようやく日本沈没らしくなってきたと思ったのもつかの間、その後は、最終第9話の後半まで何事もない。

 

 局所的な沈没や、前兆となる大地震、陥没といった異変、災害もまったく発生することなく、物語は、小栗旬、松山ケンイチらが今後の対策に奔走する様を描いていく。

 

 幾多の障害を排してプロジェクト達成のため人々が努力する、極めて日曜劇場的な話になる。

 

 もちろん、このアングルで”日本沈没”を描くという試みは悪くない。

 

 しかし、近い将来に起こる列島の破滅を実感させるシーンが皆無なので、限られた期間内に日本人を国外へ脱出させなければならないという緊迫感や悲壮感が全く感じられない。

 

 

 今は災害に見舞われる人々の映像を流すのが難しい、という事情があるのかも知れないが、例えば日本人に愛されている建造物や名所が崩れ去っていく、沈んでいく、その情景を見て悲しむ人々…といった表現なら可能じゃないのか?

 

 もし、そんな映像も駄目だって言うなら、そもそも”日本沈没”を扱うな。

 

 

 極めて平穏な東京で、会議や会談が繰り返されるが、この先最終回までに、ちゃんと日本を沈没させてくれるのだろうかと疑ってしまう。

 

 

 海外移住に反対する集団のデモや、それを拒否しようとする漁村の人々が登場する。

 

 一向に沈没の気配がないんだから、むしろそれが自然だ。

 

 彼らを説得するというのも、解決すべき課題のひとつになるのだが、いやいやテーマがおかしくなってきてるぞ。

 

 

 国土を失うことを実感し絶望した日本国民、そんな彼らを救うために立ち上がり尽力するメンバー、そんな彼ら彼女らこそが、”希望のひと”と呼ばれるにふさわしいんじゃないの?

 

 

 ようやく最終回に達しても、まだ新たに発生した感染症のために、各国への移民が滞るなんてエピソードが出てくる。

 

 今どきっぽく入れたのかも知れないが、これが別の製剤会社が作った2種類の薬を投与すれば治るってことであっさり終息する。

 

 ますます沈没の時間が遅くなるから、早く終わってよかったが、出口が見つからない感染症で、何年も世界が苦しんでるときに、あまりに安易すぎる解決、こんなの入れない方がよかっただろ。

 

 

 で、お待たせしました。

 

 残り30分を切ったあたりで、ようやく沈没再開、まず関東の残存部が沈み、小栗旬たち最後まで東京に残っていた政府のチームが北海道に移動してしばらくしたところで、急に列島沈没が始まる。

 

 北海道も大きな揺れに見舞われる中、CGの日本列島が沈んでいく。

 

 香川照之演じる田所博士が避難した机の下で実況中継、凄い勢いで列島が水浸しになっていく。

 

 

 この早送り感覚、まるでタイムラプスかtictokの映像、すまん、笑ってしまった。

 

 物語の出来事ながら、日本が世界から消えていくというのに、そこに悲しみが全くない。

 

 1974年のドラマは、変なところも多々あったが、断末魔の日本列島と人々を描く演出には心を打たれた。

 

 

 北海道と九州の一部が沈没しなかったことは別にいい。

 

 

 でも、視聴率は相当よかったらしい。

 

 おれも見たし。

 

 香川照之も、小栗旬も、杏も、松山ケンイチも悪くなかった。

 

 

 じゃあ、いい作品だったってことで。

 

 おれは、悪口は嫌いだ。